千葉大学
千葉大学の関屋・グエン研究室で研究に取り組む駒中さん。一度は民間企業で働いたのち、再び大学に戻って博士後期課程へ進学しました。現在は、スマートフォンや医療機器、ドローンなどのワイヤレス充電に使われる電源回路の研究に取り組んでいます。情報系の知識を活かしながら電気工学の研究を進める駒中さんに、これまでの歩みや研究への思い、そして将来の夢について伺いました。

理系を選んだのは、
進路の幅を広く持ちたかったから
駒中さんが理系の道を進んだのは、高校で文理選択を迎えたときです。五教科全体に対して大きな苦手意識はなく、特に嫌いな科目もなかった駒中さんですが、将来の進路をできるだけ広く持っておきたいと思い、理系を選びました。
「理系の方が、文系よりも進路の幅が広いように感じました。あと、文系は暗記が多い一方で、理系は推論的な学びができると思っていました。」と振り返ります。
大学受験の際に、理系の中でも工学分野に進んだのは、就職に強いと感じたからでした。当時はスマートフォンが一気に普及し、情報化社会が進んでいたこともあり、こうした技術を支える情報系の学科を志望しました。大学では情報分野を学びながらも、ものづくりにも関わりたいという思いを持ち続けていたといいます。

研究室では、
回路をつくる面白さにひかれた
そして千葉大学工学部・情報画像学科(当時)へ進学した駒中さん。学部4年生では、関屋・グエン研究室を選択しました。この時すでに大学院進学を見据えていたとのことです。この研究室を選んだ理由は、学部時代に受講した関屋先生による回路理論の講義が印象的だったからでした。
「関屋先生の講義がすごく分かりやすくて、高校の授業の延長のように感じました。理論をきちんと積み上げて教えてくださるので難しい内容でも面白く感じ、興味を惹かれました。このことがきっかけで関屋先生のご指導の下で研究をしたいと思いました。」
また、多くの情報系の研究がパソコンで完結するのに対し、関屋・グエン研究室では実際に回路を組み立て、実装する研究に取り組める点にも魅力を感じたそうです。情報系の学科の中では珍しく、電気の実験設備が整っている点も大きな決め手になりました。
「電気だけでなく、AIや通信も扱っているので、分野をまたいで学べるのが面白いと思いました。電気工学と情報工学という異なる分野の知識を組み合わせて課題を解決する研究スタイルに魅力を感じました。」と駒中さんは語ります。

一度就職したからこそ、
研究の楽しさに気づいた
修士課程では、現在も取り組んでいるワイヤレス充電に関する研究を行っていました。その後は、インフラ関係の民間企業に就職し、電気・インフラを支える仕事に携わりました。
「学生時代に住んでいた場所に大型の台風が襲来しましたが、停電はしませんでした。この経験からインフラ関係の仕事に対してリスペクトを持つようになり、生活の基盤を支えるインフラ関係の仕事がしたいと思っていました。」と話します。
仕事自体はやりがいがあった一方で、社会人として働く中で、研究そのものが好きだったこと、そして大学で学ぶ環境が自分に合っていたことを改めて実感したそうです。さらに、修士課程時はコロナ禍で学会発表や国際交流の機会が限られていたこともあり、「もう一度、研究にしっかり向き合いたい」という思いが強くなりました。関屋先生に相談し、再び母校である千葉大学の博士後期課程への進学を決めました。
学生に戻るにあたり一番のネックは経済面だったようです。しかし調べてみると研究に専念できる支援制度がいろいろあることが分かり、このことが博士後期課程への進学を後押ししたそうです。その中で、日本学術振興会の特別研究員として、返済不要の研究奨励金と研究費の支給を受けることができました。また、修士課程時に成果(論文)をだしていたこともあり、学費免除の審査にも通ることができました。これらの支援により、学費や生活費などの金銭面の不安なく研究に専念でき、念願だった国際学会への参加も実現しました。さらに、パワーアカデミーの活動のひとつである研究助成にも採択されたことで研究の環境をさらに充実させることができたと振り返ります。

世界中でワイヤレス充電を
普及させるための研究
修士から一貫して駒中さんが取り組んでいるのは、ワイヤレス充電器や電気自動車(EV)の充電器などに使われる電源回路の研究です。私たちの身の回りではさまざまな電気機器の無線化が進んでいますが、多くの機器には充電や給電のためのケーブルが欠かせません。『電力を送るための配線』は、いわば最後まで残った有線の一つとも言われ、駒中さんはその困難な課題に挑んでいます。
「回路を数式で表して、条件を整理しながら設計しています。理論だけでなく、実機で確かめるところまでやるのが面白いです。」
研究では、情報系で培った考え方を活かしながら、回路の設計や最適化にも取り組んでいます。スマートフォンや医療機器、ドローンなど応用先は幅広く、将来的には世界中でワイヤレス充電がより普及するための基礎研究につながるといいます。
何度も計算を見直しながら解析を進め、最終的に回路の新しい動作条件を数式として導き出せたときは、大きな達成感があったそうです。また、それまで複雑に見えていた現象が一つの式で説明できたときには、「物理や数学は美しい」と感じたと振り返ります。
一方で、回路の実装や論文執筆の難しさもありますが、実験条件を一つずつ確かめながら進めることで、研究の精度を高めているといいます。

女性が少なくても、
自分らしく進めばいい
高校の文理選択で理系に進んだ駒中さん。理系コースの女性は約3分の1でしたが、大学の工学部へ進学すると、女性はさらに少なくなったそうです。
「学部時代の情報画像学科は学生が100人おり、女性はそのうち約1割でした。それでも工学部内では比較的多い方でした。関屋・グエン研究室では、修士から入学する留学生を除くと、女性が入るのは3~5年に1人程度というのが実情です。」
駒中さん自身は、女性が少ないこと自体は気にならなかったといいます。ただ、社会全体の男女比を考えると、もっと女性が増えてほしいとも感じているそうです。そのためには、高校での文理選択の段階から、電気工学を進路の一つとして知ってもらうことが大切だと話します。
「電気工学は『難しそう』『危なそう』と思われがちですが、実は社会を支え、AI・医療・環境など幅広い分野とつながる重要な学問です。こうしたことを伝えることで、より興味を持ってもらえるのではないかと考えています。」
大学や研究現場では女性が少数ですが、「目立つので、覚えてもらいやすい」と前向きに受け止めているそうです。また、女性限定の公募など、少しずつ追い風もある今だからこそ、チャンスを活かしたいと語ります。

異分野を知ることで、
電気工学の面白さが広がった
情報系出身の駒中さんにとって、電気工学を学んでよかったことは、異なる分野の考え方に触れられたことだといいます。
「同じ現象を見ていても、情報と電気では見方が違うことがあります。グラフのつくり方ひとつでも違います。その違いが新しい発見につながるのが面白いです。例えばAIを使って電気回路を設計するといった新たな挑戦も考えられます。」
また、実験で1kW級の電力を扱う中で、日常の家電製品がいかに安全に、そして緻密に設計されているかを実感するようになったそうです。
「普段使っているドライヤーや家電の裏側に、たくさんの工夫があると分かったことにより、家電製品を見る目が変わりました。一方で、実験にて電気回路をショートさせたこともあり、電気の怖さもいろいろ知りました。」と苦笑交じりで語りました。
もともとは情報工学を学んでいましたが、現在は電気工学寄りの研究に取り組んでいるからこそ、その奥深さや面白さをより強く感じているといいます。

将来は、電気工学の
面白さを伝える教員に
将来は、大学の教員として電気工学分野の発展に貢献したいと考えている駒中さん。ワイヤレスで高効率な回路技術をさらに発展させるとともに、教育にも力を入れたいと話します。
「研究室への配属をきっかけに電気工学の面白さを知ったので、同じように興味を持つ学生を増やしたいです。」という駒中さん。情報工学から電気工学へと研究の幅を広げた経験を生かし、異分野の知識をつなぎながら、電気工学の魅力を伝えていきたいという思いがあります。
「先生の与える影響はとても大きいと感じています。関屋先生の講義を受けたことが、この研究室を選ぶきっかけにもなりました。学部の講義を通して回路理論の面白さを伝え、高校で学ぶ三角関数なども含めて、数式の魅力をわかりやすく伝えられる先生になりたいです。」と、語ってくれました。
わたしの研究室 ~関屋・グエン研究室~
関屋・グエン研究室は、大学院情報・データサイエンス学府( 情報・データサイエンス専攻)に所属し、エネルギーや環境に配慮した次世代情報通信社会の実現を目指す研究室です。無線電力伝送やEV向け電源回路、無線通信システム、知的IoTネットワークなどを、理論と実装の両面から研究しています。約30名の大所帯ですが、飲み会、合宿やボウリング大会など交流の機会も多く、オンとオフを切り替えながら親睦を深めており、相談しやすく居心地の良い雰囲気がある研究室です。また、他大学と合同で行う研究合宿があり、そこではミニ学会のような雰囲気で、全国の研究室と交流できるのも魅力です。
学生生活の思い出
学生生活で特に印象に残っているのは、研究室のメンバーと挑戦した富士登山です。関屋・グエン研究室恒例の夏行事で、昨年はじめて参加しました。お盆の時期に他大学との研究室合同で約10人で挑戦し、前日に麓の駐車場で車中泊した後、早朝から登り始めてその日のうちに下山する弾丸スケジュールでした。1か月ほど前からジョギングで体力づくりをして臨み、無事に登頂できたときの達成感は今でも忘れられません。
また、学会や共同研究を通じて国内外に多くの研究仲間ができたことも大きな思い出で、今もSNSなどで交流が続いています。
わたしの趣味
趣味は旅行です。時間ができると国内外へ出かけており、この一年の間に学会ではロンドンやハワイ、プライベートでは香港や中国へ行きました。博士課程では研究スケジュールを自分で管理できるため、研究論文の締切を乗り越えた後には平日にふらっと国内旅行をすることも。中国地方が好きで、最近は1泊2日で鳥取砂丘を訪れたり、カニを食べに行ったりと、プライベートも研究同様に楽しんでいます。
学会で訪れたハワイ
プライベートで訪れた香港ディズニーランド
駒中さんのある一日
| 8:00 | 起床。千葉大学のすぐ近くに住んでいるので、通学はラクです。 |
|---|---|
| 9:00 | 研究室の進捗報告ミーティング。 先生や学生と研究内容について議論します。 |
| 12:00 | 昼食。大学近くのいつもの定食屋へ。 |
| 13:00 | 午前のミーティングで話し切れなかった内容について 個別にディスカッション。 その後、回路解析やシミュレーションにて研究。 |
| 16:30 |
休憩。気分転換に研究室から徒歩1分のコンビニで 大好きなカフェラテやお菓子を買い、後輩と雑談。 |
| 17:00 | CADソフトを用いた基板設計や実験を実施。 |
| 21:00 | 帰宅後夕食。自宅でテレビやYouTubeを見てリラックス。 |
| 24:00 | 就寝。 |

バックナンバー
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- 電気工学を活かして技術の発展に女性の視点を反映したい
- 変電技術者として変電所の運営に携わり、電気のある明るい生活を支えていきたい。
- 誰からも認められる女性技術者となり、 発展途上国の人々の暮らしに貢献したい。
- 電気工学の知識をもっと身につけ、 信頼される技術者になりたい。
- 世界中のヒトに信頼される、建設機械を設計したい。
- 新しい制御技術で、 環境にいいクルマを実現したい。
- 世界の産業を支える 技術者として活躍したい。
- 宇宙を駆ける、世界初のものづくりをしたい。
- ひとがより良く暮らす未来を電気工学でつくりたい。
- 結婚しても、大好きな研究をつづけたい
- ものづくりの現場に、 電気の専門家として貢献したい。
- 電気工学で、地球環境を守りたい。








