電気工学を応用して、世界一のハイブリッドーカーを開発したい!

2009年1月13日掲載

本田技術研究所の三谷さんは、東北大学・一ノ倉研究室で電気自動車のモータ制御の研究を行い、現在はハイブリッドカーの開発に携わっています。社会人2年目でまさに今、プロのエンジニアとして一歩を踏み出した三谷さん。学生時代の思い出やこれからの夢、そして電気工学に対する思いを語っていただきました。

プロフィール

2007年
東北大学工学部情報知能システム総合学科エネルギーインテリジェンスコース 卒業
2007年
東北大学大学院 工学研究科 電気・通信工学専攻 修了
2007年4月
本田技研工業(株)に入社。入社後半年の研修期間を終了後、2007年10月より、(株)本田技術研究所にてハイブリッド車のバッテリー開発に従事している。

※2009年1月現在。インタビュー中の敬称は略させて頂きました

プラズマ、IT、電気自動車・・・最先端の研究をしたい!

大学受験のとき、なぜ電気系の学部を志望されたのですか?

三谷学(以下、三谷):当時、核融合に大変興味を持っていました。その核融合を実現するためには、プラズマの制御を行う必要があります。また、その頃ちょうどIT革命が盛んに言われていた時でもありました。電気工学なら、プラズマやITといった最先端の分野に関われる!そう思って電気系の学部を志望しました。あとは、子供の頃から"雷"がなぜか好きだったというのも理由です(笑)。

学生時代は、どんなことを研究されていましたか。

三谷:学部では、主にモータの制御に関する研究をやっていました。特に電気自動車関係のものが多かったですね。私の場合、プログラミングがメインでした。院(一ノ倉研究室)でも学部と同じ研究を行っています。また、センサレス制御や、トルク(回転力)制御といった、最先端のモータ制御に関する研究もやっていました。

電気自動車をメインに研究されていたのですね。

三谷:はい。一ノ倉研究室へ進んだ理由としては、何より電気自動車そのものを研究できるということが一番の動機でした。あと、電気系の研究室といっても、機械系も含めて、大変幅広い分野を手掛けていることも魅力でした。先生自体は、電力会社さんと共同で電力制御用の可変インダクタの研究をされています。そこから派生して、インバータの制御やモータの設計・構造、電気自動車そのものの制御をやる人までいました。いわゆる電気と機械の複合的な開発まで行っていました。

それは幅広い!色々な開発や研究ができそうですね。

三谷:そうですね。だからよく解析を行っているときに、隣の設計の人に「シミュレーションをやってくれない」なんて頼んでいました。私の知る限り、電気系の研究室では、1.2を争うぐらい様々な研究をやっているのではないでしょうか。電気工学とひとくちに言っても、その分野は大変幅広いということを体現している研究室だと思います。

モノづくりの楽しさを学んだ、学生時代

学生時代で思い出に残っているエピソードがあれば、教えてください。

三谷:一ノ倉研究室というのは、実験が非常に多い研究室です。最近の電気系の研究室はシミュレーションが多いのですが、一ノ倉研究室は実際にモノづくりが出来ることが面白かったですね。私の場合ですと、自分がつくった理論で、プログラミングを組んで、ハードウェアを制御できたことが一番驚いたし、感動もしました。あと、後輩が実験を失敗して、基板を燃やしたことがありました。いや、電気って燃えるということに改めて気づかされましたね(笑)。実験に関する失敗のエピソードは、自分自身を含めていくらでも喋れます(笑)。

モノづくりに関わっている方らしいですね(笑)。電気自動車をつくられたこともありますか?

三谷:はい。みんなで電気自動車をつくり、試乗会を行ったこともありました。モータなどを自分達で買いに行って、先生達の指導を仰いでつくり上げました。でも最終的には、試乗会途中で壊れてしまったのですが(苦笑)。また、学生時代は、ある鉄鋼会社の工場も見学させて頂きました。そのほか、原子力発電所やモーターショーなども、みんなで見に行きましたね。

仲が良い研究室のようですね。

三谷:そうですね。学生主体で色々なことをやらせてくれる研究室なので、みんなと協力して様々な研究やイベントを行いました。モノづくりは共同作業なので、自然と一体感が生まれますね。

未来のクルマに、電気の知識は不可欠

ホンダへの入社を希望されたのは、学生時代からの流れですか。

三谷:はい。学生の頃からクルマが好きだったので、やはり自動車会社へ行きたいと思っていました。その中でも、ホンダは自由な社風を持っている会社ですから、そこに惹かれて入社しました。ただ、クルマを本当に好きになったのは大学3年の時です。その当時、実は機械系の学部へ移ろうと考えたことがありました。

なぜですか?

三谷:たぶん、多くの皆さんが同じ考えだと思うのですが、クルマをやるなら機械工学という固定概念があったのです。ところが、当時ハイブリッド車がはじめて登場して「あ、電気でも自動車には関われるぞ」と思ってやめました。それで一ノ倉研究室へ進んだわけです。

なるほど。実際にホンダへ入社されていかがでしたか。

三谷:電気系出身者の人が多かったですね。もちろん、機械系や化学系の人もいますが、これほど電気系が多いとは思いませんでした。今、自動車は、ハイブリッドカーや燃料電池車、そして電気自動車という流れになっていますが、そこでは電気の知識は不可欠だなぁと実感しました。ほんの数年前ですと、やはり機械が中心だったはずですから。

モータ制御は、ハイブリッドカーの基礎技術

現在、どのような仕事をされていますか。

三谷:ハイブリッドカー用のバッテリーの開発に携わっています。具体的には、主にリチウムイオン電池などを他社さんと共同開発しています。

バッテリーの開発で、電気工学の知識は活かされていますか。

三谷:正直に言えば、まだ仕事をはじめたばかりなので、活かしきれていないのが現状です。ただ、ハイブリッドカーをつくる上では、電気工学(特にモータ制御)は、基礎技術の塊だとは感じています。基本的に、ハイブリッドカーというのは、電気モータで走りますから。

では今、仕事をする上で、電気工学を学んで役に立ったことを教えてください。

三谷:回路やシステムブロック図をきちんと勉強できたことが大きいですね。機械系の人でも授業で少しはやっていると思うのですが、私の場合、電気工学だったので、理論からしっかり学ぶことができました。これは大きいことだと思います。

システムブロック図とは、何ですか?

三谷:システムブロック図とは、例えば、エンジンがどんな出力でどういう形ならば、車体や路面に伝わるか、全て記述できる相関図のことを言います。まさしく、設計や開発に欠かせない知識で、これをしっかり学べたことは大きな財産ですね。モノをつくる上での共通言語を身につけられました。そして、その理論まで知っているのは強みだと思います。あと、今非常に役に立っているのは、パワーエレクトロニクスの知識です。パワーエレクトロニクスというのは、電力変換と制御を中心とした電気工学の重要な技術ですが、その考え方の流れは大変役に立っています。

電気工学は、日常生活を豊かにする

電気工学を学んだ先輩として、後輩へメッセージをお願いします。

三谷:私が電気工学を学んで良かったなぁと思うことは、電気に関するものはおおよそ理解できるようになったことです。例えば、家電量販店へ行って仕様書を見ると製品のことがおおよそ分かります。このメーカー、ここを頑張っているんだなぁとか(笑)。
電気で動いているものは何でもいじれるようになりますね。もちろん、クルマも自分で修理できます。日々生きて行く上で、楽しい世界が広がっていくと思います。

電気は幅広く使用されていますから、身の回りの色々なモノを理解できますよね。

三谷:そうですね。それは電化製品だけにとどまりません。雷や静電気などの自然現象も含みます。ですから、理論だけを覚えるのではなく、身の回りの様々なモノに興味を持って電気工学を学んでいくことが大切だと思います。例えば、携帯電話なら「このチップって一体何だろう」「どうしてこんなふうに薄くなるの」とか。そういうふうに、何でもいいので、日常のことに疑問を持って学んでいけば面白くなるはずです。ネタは、いくらでも転がっていますから。

では最後に、これからの三谷さんの夢や目標を教えてください。

三谷:やはり、世界一のハイブリッドカーをつくりたいですね。エコであることはもちろんですが、スポーティーに走れるクルマにしたいです。「走り」を大事にするのが、ホンダの伝統ですから。

ありがとうございました。新しいホンダのハイブリッドカーに期待しています。

一ノ倉 理  教授(いちのくら おさむ)

国立/宮城県
東北大学大学院 工学研究科 電気・通信工学専攻

一ノ倉 理 教授(いちのくら おさむ)
当研究室は1996年に開設されました。回転機や変圧器などの電磁機器の流れをくんでいるため、磁気からエレクトロニクスまで広く電気エネルギーの変換と制御に関わる研究を行っています。これまでの研究室の卒業生は約130名に及びます。2009年度は、スタッフ3名、博士課程5名、修士課程13名、学部生4名の、総勢25名が活動しています。現在の主要なテーマはモータドライブ、電力用磁気デバイス、自然エネルギー利用です。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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