世界中の社会インフラを支えていきたい。

2011年9月30日掲載

株式会社 明電舎は、電力機器、エネルギーシステムなどを手掛ける大手重電メーカーです。今回、取材させて頂いたのは、受配電設備 キュービクルを手掛ける現役エンジニア・新村さん。取材は、静岡県沼津市の沼津事業所に伺って行いました。沼津事業所は「世界品質を沼津から」というスローガンを掲げる、昭和36年に開業した明電舎の主要生産拠点です。

プロフィール

2007年3月
東京電機大学 工学部 電気工学科卒業(加藤研究室
2009年3月
東京電機大学大学院 工学研究科 電気工学専攻修了(加藤研究室)
2009年4月
株式会社 明電舎入社
2009年6月
株式会社 明電舎 沼津事業所 システム装置工場 品質保証部配属
現在
株式会社 明電舎 沼津事業所 システム装置工場 変電・制御品質保証部変電試験課に勤務(受配電盤、制御盤の品質保証業務)

※2011年8月現在。文章中の敬称は略させて頂きました。

エネルギー環境システム研究室の一期生でした

まずは、東京電機大学の工学部に入られた理由をお教えください。

新村:工学部へ進んだのは、父親が機械系の仕事をしていたのがきっかけだと思います。具体的に言いますと、下水道を浄化させるための装置に携わっていました。そんな父親の背中を見ていたのが、大きいですね。父親の勤務する工場へ連れて行 ってもらったこともあります。もちろん、勉強では理系が好きだったこともありますが。

お父様のように、新村さんも機械いじりが好きでしたか。

新村:いえ。私は、まったくダメでした(笑)。

では、電気工学科へ進まれたのはなぜですか。

新村:色々な選択肢がいっぱいあったことですね。特に「これ」といったものはなかったので、他の学科に比べて、職業の選択肢が多い電気工学を選びました。

学科から院(加藤研究室)へ進まれた理由は何ですか。

新村:加藤研究室は、2006年に開設された新設の研究室だったことが大きいですね。私はちょうど一期生でした。学部4年のときに加藤先生が東京電機大学へいらしてからはじまった研究だったので、非常にやりがいがありました。

加藤研究室は、エネルギー環境システム研究室という異名を持ちますが、エコや地球環境問題などに興味があったのですか。

新村:いや逆で、正直に言えば、「エコ」や「地球にやさしく」などといった言葉は好きではありませんでした。なぜなら、現代社会は、エネルギーとしての電気は使わなければ結局、生活は成り立ちません。この現実を直視した上で、どのようにCO2排出を防ぐのか考えないといけないのに、流行のように言葉だけが先行している感じを受けていました。加藤研究室は、現実を見据えた上で地球環境問題に取り組む研究だったので、魅力を感じました。

コージェネレーションシステム研究に明け暮れた学生時代

加藤研究室ではどのような研究をしていましたか。

新村:パワーアカデミーHPに掲載されている「東京電機大学 学生インタビュー」の児島君と同じ研究です。彼は私の研究を引き継いでくれました。オフィスや学校、病院、ホテルなどの施設は冷房、暖房、お湯などで膨大な電気やガスを使用します。こういう施設に対して、コージェネレーションシステムなどを利用して、エネルギーを有効活用する研究です。私は、コージェネレーションシステムのなかでも、熱電可変型コージェネレーションシステムと呼ばれるものを、"マトラボ(MATLAB)"という解析ソフトと、"非線形計画法"という公式を使って研究していました。

熱電可変型コージェネレーションシステムとは何ですか。

新村:まずコージェネレーションシステムとは、簡単に言いますと、1種類のエネルギー源から複数のエネルギーを取り出して利用するシステムのことです。一般的にはガスなどを用いて、発電(電気)と排熱(熱)利用を行うシステムです。熱電可変型コージェネレーションシステムとは、この電気と熱の発生比率を変えることができるシステムです。

電気と熱の発生比率を変えることによって何が良いのでしょうか。

新村:例えば、季節や時間帯によって需要家の熱エネルギー需要に合わせて、電気と熱の供給比率を変えます。特にホテルのように熱需要が多い需要家にとっては、有効的な方法です。余った熱をガスタービンに戻して発電することができます。

最先端のエネルギー研究ですが、思い出に残っているエピソードはありますか。

新村:自分たちがスタートだったので、面白い反面、他の研究室のような成果になかなかたどりつけなくて悔しい思いをしたことですね。他の研究室だと先輩が教えてくれますが、私たちはゼロからのスタートで大変でした。

なるほど。ゼロからやるということは大変なことですね。

新村:はい。また、シミュレーションが膨大だったので、よく研究室に泊まったりしていました。それで気晴らしに、大学がある神田から、大手町の皇居まで歩きましたね。それが学生時代の一番の思い出です(苦笑)。

社会を支える電気設備「高電圧受配電設備」を手掛ける

キュービクルの前で、試験業務を行う新村さん。

明電舎様へ入社された理由を教えていただければと思います。

新村:正直言って、明電舎のことはあまり知りませんでした。きっかけは先生からの推薦です。ただ、社会インフラに関わるメーカーへ入りたいという希望はありました。

仕事内容をお教えください。

新村:入社して約3年、沼津事業所システム装置工場で、受配電設備の品質保証をやっています。

受配電設備とは何でしょうか。

新村:発電所や変電所から、22kボルト以上の特別高圧や6.6kボルトの高圧の電気が送られてきます。その高電圧を用途に見合った電圧に変換する等の機器を「キュービクル」という金属の箱(盤)に収めています。そのキュービクルを含めたその設備を受配電設備と呼びます。

仕事の流れを教えてください。

新村:お客様は電力会社や鉄道、ビル関係など幅広い業界の方々です。まずこれらのお客様から営業部門が仕事を受注してきます。次に、技術担当がお客様と打ち合わせをして「こういったシステムにしよう」と決めます。その後、設計担当がさらに詳細に仕様を詰めていきます。そして、製造部門が設計のつくった図面をもとに、キュービクルを製造していくという流れです。

そこから品質保証の出番ですね。

新村:そうです。そこから、私の業務である品質保証の試験を、工場で行います。「明電舎の製品として世に出せるのか」、「お客様の要求通りになっているのか」などを実機によって確認します。確認後、最後にお客様立ち会いの下で最終テストを行います。ここまでが社内検査です。

左の写真は、新村さんが現在手掛けているキュービクル。
このキュービクルは、山梨県・東京電力共同事業:米倉山太陽光発電所(右の写真)における連系変電所に収められる。

社内検査が終わったあとはどうなるのですか。

新村:今度は、実際に設置される現場に持っていきます。お客様の設備内で、社内と同じような試験業務を再度行います。これをクリアすれば、問題がないキュービクルとなります。

今まで、新村さんご自身は、どのようなお客様を担当されましたか。

新村:つい最近のことですが、母校の東京電機大学の新キャンパス(北千住)の設備を担当しました。プロジェクトのスタートから関わったのは初めてで、しかも母校だったので、とても感慨深いものはありました。

仕事をはじめられてから、この3年間で一番印象に残っていることを教えていただけますか。

新村:今年の2月ぐらいに、今建設中の第二東名高速道路に明電舎の設備を収める契約をいただきました。その時に、この沼津事業所の工場で、お客様立会いのもとで検査を行ったのですが、「滞りなくきちんと完成した」ことを直接、褒められました。それが嬉しかったですね。

それは嬉しいですね。自分が関わった製品は社会を支えているという実感はありますか。

新村:はい。ただ、やりがいもありますが、その分責任の重さも痛感します。わずかなミスが事故につながり、会社だけでなく、その設備をもつお客様やその設備を利用している大勢の人達に大変なご迷惑をおかけします。キュービクルに不具合が起こると、停電や短絡事故になって火災が発生する可能性までありますから。

電気工学はジョブマッチングを解決できる!

学生時代の電気工学の研究は、現在の仕事にどのように活かされていますか。

新村:一番大きいことは、システム全体を理解できることですね。今の仕事は、お客様の求める設備を開発することですが、設備だけでなくそれを含めた大きなシステムが理解できること、これは財産だと思います。それから、研究室で膨大なシミュレーションを根気よく行い結果を出してきたことで、忍耐力が養われ、現在に結構活かされている気がします(笑)。

具体的にどのような仕事で、その忍耐力が活かされていると感じますか。

新村:試験は、出荷日が決まっていますので、製品に不具合が見つかったときに、手直しするのはどうしても急な仕事になります。少ない時間で、しっかりと品質を保ちながら納期に合わせるには、大変な忍耐力が必要とされますね。

今振り返って電気工学を学んでよかったと思うことを教えてください。

新村:学生の時に学ぶ電気工学の授業には、高電圧工学、電気機器工学、交流理論、物理工学といったものがあります。それらに対して、正直なところ、私はただテスト勉強のために学んでいました。でも、今の仕事をやることによって、これらの知識を身を持って理解できてきたことが面白いですね。

これから電気工学を学ぼうとする方へメッセージをお願いいたします。

新村:最近、ジョブマッチングという言葉が流行っています。せっかく会社へ入ってみても「実は自分がやりたい仕事ではなかった」「向いていなかった」、そんなマッチングがうまくいかない方がたくさんいると聞いています。

そうですね。ジョブマッチングは若年層で大きな問題になっています。

新村:それに対して、電気工学は、あらゆる分野の基礎なので、具体的に何をやりたいのか決まってない人でも、きっと未来への道が拓けると思います。可能性がとても広い学問なので、身につけて損はないと言いたいですね。

最後に今後の目標をお聞かせください。

新村:そうですね。お客様に「新村さんにお願いしたい」とか「この人は違うな」と思われる存在になっていきたいです。具体的には、不安もありますが、自分のキャパシティを広げていくという上で海外での仕事もチャレンジしようと考えています。

ぜひ夢は大きく「明電舎といったら新村さん」と言われるまでの存在になってください。どうもありがとうございました。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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