夢は、海外で暮らしたい。世の中に新しい 仕組みを創りたい。電気工学が役に立つ!

2008年12月25日掲載

大阪大学大学院 工学研究科の舟木研究室は、電力システムを、省エネルギーや環境負荷低減、費用削減などの観点から広く研究しています。最先端のソフトウェアを駆使し、膨大なデータを日々分析することで、日本の電力系統を陰で支える研究室です。

※2008年12月現在。インタビュー中の敬称は略させて頂きました

ふたりとも、文系の勉強が苦手でした(苦笑)

おふたりは、電気工学をなぜ専攻されたのですか?

椙山 裕介(以下、椙山):私は、ハイテクなモノがすごく好きだったからです。家電、鉄道、飛行機・・・。これらの先端を行く製品には、必ず電気が使用されていますよね。それで電気に関係する分野を勉強したい、と思ったことがきっかけでした。あと、正直に言えば、国語が苦手で、理科系に進んだということもあります(笑)。

大曲 祐子(以下、大曲):私も、理科系の勉強が、文化系より得意でした(笑)。それと、電気というのは、世の中になくてはならないインフラです。ですから、手に職がつく学問だと思ったのも志望の動機です。

理系は、女性が少ないというのは気にしませんでしたか?

大曲:私は女子高だったので、クラスには理系を学んでいる人が半分以上いました。全然気にならなかったですね。単純に自分が得意な科目を活かせればという思いでした。実際に研究室へ入ってみたら、女性が少ないので驚きましたが(笑)。でも、女性の先輩もいましたし、一年ぐらい経ったら自然と慣れました。

エコ・省エネルギーに貢献できる研究

舟木研究室では、日々どのような研究をされていますか。

椙山:私は「実測データに基づく住宅用エネルギー需要構造の分析」という研究をしています。難しそうなテーマだと思われるかもしれませんが、簡単に言えば、一般家庭におけるエネルギー需要を分析する研究です。1日に使用する電力がどういうふうに推移するのか、それは、家庭によって違うわけです。私はその推移の違いを分析しています。

家庭によって、違いって出てくるモノなのですか。

椙山:違いますね。それぞれの家の面積や人数、季節によってももちろん違いますし、生活スタイルの違いによる各電化製品の使い方の違いによっても需要の違いがでてきます。細かいデータほど詳細な分析が可能になり、1分単位で電気需要量のデータが送られてくることもあります。

電気の省エネルギーに役立ちそうな研究ですね。

椙山:そうですね。ひとくちに電気の省エネルギーといっても、それを実現するには、日々の地道な研究があってはじめて可能になります。私が今やっている研究も、ほんの小さなことかもしれませんが、それでも電気の省エネルギーに貢献している研究だと実感できます。自分自身、エコへの意識が高まりました。

大曲さんは、どのような研究をされていますか。

大曲:私は「電力市場価格を考慮した蓄熱式空調システムの需要反応効果に関する研究」です。椙山さんの研究に近いのですが、簡単に言えば、電力の需要と供給にあわせて、電力価格をどう決めるのかを分析しています。例えば、一般家庭では普通、昼間は電気を使用しないですよね。逆に夜間は多く使用します。その需要の変化にあわせて、電力供給を変化させていくことで、電力価格をどう決めればいいのかを分析しています。

電気工学というより、経済学という感じですね。

大曲:はい、経済学の要素も高い学問だと思います。ちなみに私が分析しているデータは、カリフォルニアの電力市場です。海外のデータを扱っていることは、ちょっとだけ、自慢です(笑)。

自分達が組んだプログラムで、企業へプレゼンする

これまでの研究で印象深かったことを教えて下さい。

椙山:これまでで何度か、共同研究をしている企業に研究の分析結果を報告しています。企業の方へ報告する資料をつくるときは、帰りが遅くなって大変なこともありますが、終わったあとの充実感は大きいですね。自分の研究が社会に反映されるということは、やっぱり嬉しいです。企業の方たちの前でプレゼンテーションをするときは、緊張の連続ですが。

それは社会へ出てからも通用する、大変有意義な経験ですよ。大曲さんはいかがですか?

大曲:私は、ソフトウェアを使用して、実際にプログラムを組んで動いた時がとても嬉しかったです。自分が想定していたシミュレーションの結果が出たときは、感動もしたし驚きましたね。

椙山:それは、私も同じです。自分で作ったプログラムが初めて思い通りに動いたときはとても嬉しかったです。

自分達がつくったプログラムで、データを分析し結果を導き出すということは、まさに研究の醍醐味ですよね。

1日の大半を過ごす研究室だから、仲間になれる

でも、そんな毎日でしたら、煮詰まることも多いのでは?

大曲:しょっちゅうです(笑)。一番困るのは、次に何をやったらいいのか分からない、迷路状態に陥ることです。

そんな時はどうやって、克服するのですか。

大曲:先生方の助けですね。私の場合、直接の研究指導は杉原先生(准教授)なのですが、先生方は一人ひとり私達の研究を見てくれて、色々な角度からアドバイスをしてくれます。他にも毎週定例会を行って、みんなと研究の進捗を確認しています。だから、自分ひとりでやっているのではなく、研究室の仲間と助け合っているという感じです。

椙山:あと、研究室には談話スペースもありますので、研究に煮詰まると、そこで新聞や本を読んでアタマを休めています(笑)。

仲はいいのですか。

大曲:仲はいいですね。夜遅くなるとみんなでラーメン屋へ行ったりします。毎年、忘年会や新年会もやっています。大阪大学は、千里の山の中にあるので、なかなか飲みには行けませんが(笑)。

研究室は男性ばかりとお聞きしましたが。

大曲:はい、でも女性の先輩もいましたし、昼休みや夕食時に、他の研究室の女性と話したりします。だから、気にはなりませんね。あと、研究室は電子ロックがついていて、防犯も安心です(笑)。

椙山:(笑)。実験と違って、私達の研究は、PCの前がほとんどです。しかも、修士2年になると授業がないため、毎日研究室で過ごすようになります。だからこそ、研究室の雰囲気ってすごく大事だと思います。うちの研究室は、先生や先輩達の力添えもあって、伝統的に仲がいいのではないでしょうか。昼食や夕食も一緒に食べに行ったりすることが多いですから。

エネルギーが理解できるということは、大きな財産です

電気工学を学んで良かったと思うことをお教え下さい。

大曲:私が今やっている研究に直結するからだと思うのですが、エネルギー問題に凄く興味がわいてきました。石油の枯渇とか、今、色々ニュースで話題になっていますけど、正直ピンと来ませんでした。でも、自分で電気の需要を分析することによって、様々な問題が肌で感じられるようになりました。それって、なかなか経験できることではないですし、一つ上の視点が身についた気がします。

椙山:私も基本的に同じですが、「電力に関係する様々な技術や産業の裏にはこういう事情や課題があるんだ」と理解できることが面白いですね。太陽光発電や電気自動車などが市場に出てくる背景が分かってきます。エネルギーという現代社会に不可欠なインフラのことが詳しくなれるということは、大きな財産になると思います。

最後に、おふたりの夢や目標を教えてください。

大曲:海外へ行きたいです(笑)。欧米で暮らしていけたらいいなぁと、漠然と思っています。だから、電気工学という世界中どこへ行っても通用する実践的な学問を、大学で学べているのは、決して無駄にはならないと考えています。

椙山:今は、電気に限らず、色々な日本社会の課題を解決していく仕組みを創る仕事に携わりたいと考えています。その第一歩として、現代社会で一番重要な電気エネルギーの知識が身につくことは、大きなアドバンテージだと思っています。エネルギーは、社会の基盤となるインフラですから、どんな課題においても役に立つはずです。

電気の世界に限らず、様々な夢や目標に、電気工学は役に立つ学問だということですね。本日はどうもありがとうございました。

舟木 剛  教授(ふなき つよし)

国立/大阪府
大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻

舟木 剛 教授(ふなき つよし)
本研究室は、電力・エネルギーシステムについて、システム・制御工学の視点からモデルを構築して解析を行うと共に、そのあるべき姿を探求しています。2010年度はスタッフ5名,大学院生13名、学部生6名、研究生1名の総勢25名が活躍しています。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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