三井造船
2013年2月28日掲載
工学に進むことに
まったく抵抗がありませんでした
大曲さんは、現在、大阪大学の特任研究員という立場で、三井造船(船舶・ハイブリッド)推進システム共同研究講座で多忙な日々を送っています。パワーアカデミーの学生インタビューにも4年前の2008年にご登場いただきました。(学生インタビュー vol.2 大阪大学)
「インタビューのお話は急に決まったので、今見ると、とても恥ずかしいです」と笑う大曲さん。改めて、電気工学へ進んだきっかけをうかがいました。
「以前に、インタビューでお答えしたように、私は文系科目より理系科目の方が得意でした。中学・高校が女子校で、特定の授業の時だけクラスが理系と文系に分かれました。クラスの半分が理系だったので、理系の女性は必ずまわりにいました。自然に理系の中で工学部へ進んだ感じです」。
また工学系に女性が少ないことについて「世界の中では日本だけだと聞いています」。
女子校から男性だらけの
世界にビックリ!
でも大丈夫でした
当たり前のように理系の電気工学科へ進んだ大曲さん。しかし女性の少なさにはさすがに驚いたようです。「私の学年で、電気工学科は全部で40人ぐらいでした。そのうち日本人の女性が4人でした。これは他年度に比べるとすごく多い方です(苦笑)。女性はみんな修士に進みましたが、コースが分かれて、電気電子情報工学専攻(電気工学系研究室)に進んだのは私を含め2名でした」。
それでは色々と苦労があったのでは?「いいえ。中学・高校時代とのギャップに慣れるのは大変でしたが、特に苦労はなかったですね。むしろ得したことの方が多いかもしれません。学会などでも目立って、色々な方に覚えてもらえます。とにかく女性は少ないのでよく目立ちます(笑)」
また女性が少ない分、同じ女子学生との結束は強まることも。「私を含めた4人の女の子はすごく仲良くなりました。4人で山口県へフグを食べに行ったり、家で鍋パーティーやたこ焼きパーティーなどをやったりしましたね」。
研究室で女性ひとりということも、「全く違和感なく、みんなと研究生活を送っていました。一緒に学食で昼食や夕食を食べたりしました。定期的な飲み会もありますし、夏には研究室旅行がありました。また当時は、談話室があって、研究で疲れると、談話室に行ってお菓子を食べながらみんなで雑談していました」。
アルバイトも「普通にやっていましたよ。家庭教師もしましたし、大好きな服のショップやカフェでもアルバイトをしました。女の子らしいでしょう(笑)」。
中学・高校時代の女性だけの世界から、ほとんど男性だけの世界へ飛び込んだ大曲さん。「はじめは誰でも戸惑いますよ。でも慣れれば大丈夫です。私が証拠です(笑)」。
電気という強みを持って、
結婚しても研究を続けたい
「就職という選択肢もありましたが、やっぱり研究を続けたくて」という大曲さんは、現在、大学内で、三井造船(船舶・ハイブリッド)推進システム共同研究講座で研究を行っています。
「省エネルギー化やCO2排出削減などは自動車が注目されていますが、船舶の分野でもそれが求められています。ただし、船舶はもともと航空機や自動車に比べてエネルギー効率が高く、既存の技術の範囲内で省エネルギー化の技術は完成の域に到達していると言われています。そこで、異分野技術を導入して船舶推進システムを抜本的に改新する研究をはじめました」。
具体的には、ディーゼルエンジンと電動機、この2つの動力源を活用(ハイブリッド化)することで省エネルギー化、CO2排出量削減を可能にする、環境にやさしい船舶の実現を目指しています。
しかし大曲さんは「この講座の研究員としては2013年3月末までなんです」と少し心配なご様子。そこで今後、やりたいことや夢をうかがいました。「次の仕事は探し中です(苦笑)。夢は、今漠然と考えているのは、結婚して子どもを産んでも研究を続けることです。母親が家庭と仕事を両立しながら、さらに大学院に通って修士号を取ったんです。だから母のように家庭と仕事を両立したいです」やはり電気工学の研究者でしょうか?
「電気専門のお仕事になるかはまだ分かりませんが、電気はいろいろな分野に使われているのでどこでも通用すると思います。私の強みですね」。
電気工学の女性は
珍しいけれど、
それが個性になり強みになる
最後に女性の後輩にメッセージをいただきました。
「今の社会は電気を使うことが前提でつくられているので電気工学を扱う分野はかなり広いです。いろいろと見て面白そうと思う分野にぜひ挑戦してほしいです」。
また理系の勉強が苦手な方へ、こんなアドバイスもいただきました。
「勉強ができることと研究ができることは全然違います。ですから、受験科目で理系科目ができないから無理だと思って道を絶たないでほしいです。もちろん研究するためには知識が必要ですが、逆に受験勉強で理系科目が苦手な女の子でも研究にはすごく向いていたり、楽しいと思ったりする人もいますよ」。
そして「女性で“電気”をやっているというとすごく珍しがられます。逆にそれが、個性になり強みになるかもしれませんね」と苦笑いしながら付け加えていただきました。
わたしの研究
博士課程
電力供給を安定的に行うには、系統の安定性を考えなければいけません。電力系統には火力発電機、水力発電機といった同期発電機がたくさんつながっています。しかし、擾乱(じょうらん)に対してすべての同期発電機が同期を保たないと、最終的には停電してしまいます。
博士課程では、まず基本に立ち返って、簡単な力学モデルを用いた系統安定性の解釈と説明に関する研究を行いました。簡単に言えば、系統の安定性を分かりやすく目に見える形で表現する研究です。一方、近年では、分散型電源の導入も進んでいます。太陽光発電をはじめとする分散型電源の多くは、電力系統につなぐために電力変換器を使っています。従来の同期発電機と電力変換器とでは、電力系統との同期の保ち方が違います。そこで次に、まだ十分に検討されていない電力変換器の安定性に関する研究を行いました。この研究は、パワーアカデミー研究助成に「位相同期回路を適用した系統連系用電力変換器の安定性に関する研究」で応募して、採択いただきました。
修士課程
修士時代には「電力市場価格を考慮した蓄熱式空調システムの需要反応効果に関する研究」を行っていました。電力市場では、需給が逼迫するときに価格が高騰することがあります。そういった場合に、需要家が電力負荷を調整できる機器(蓄熱式空調システムやヒートポンプ給湯器など)を用いて負荷削減を行うことで、市場価格の高騰を抑えられるかを評価する研究です。
パワーアカデミー研究助成に採択されて
舟木先生に勧められたのが、応募のきっかけです。こうした研究助成は博士課程の学生が応募できるものは少なく、非常にありがたかったです。採択されて、まず単純に研究費を自分の力で得ることができてうれしかったです。もちろん、うれしいと同時に重い責任も感じましたが。いただいた助成費用は、国際学会への旅費や参加費。また、資料やソフトウェア購入などに使わせていただきました。
大曲さんのある一日(学生時代)
8:30 | 研究室到着。まずはメールチェックから。そして、今日「1日やることリスト」をつくって、研究を始めます。研究はパソコンでシミュレーションです。 |
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12:00 | 売店のお弁当でランチ。ときどき、学食にも行きますよ。すべて大阪大学の味です(笑) |
13:00 | 1日中研究という日も多いのですが、今日は15:00から打合せがあるので、資料の作成です。 |
15:00 | 舟木先生と研究の打ち合わせ。今日は1時間ぐらい。短く終わる日も、長くなる日もありますね(苦笑)。 |
16:00 | 舟木先生のアドバイスを反映させて、再度、研究に没頭。 |
17:30 | 家に帰る前には必ず最後のメールチェックです。 |
18:00 | 帰宅。今日は友達とごはんを食べに行く日。週末は、ヨガへ行く予定です♪ |
渡邊 裕美子さんのこれまでの歩み
2003年4月 | 大阪大学 工学部 電気電子情報工学科 入学 |
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2007年3月 | 同卒業 |
2007年4月 | 大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻修士課程 入学 |
2009年3月 | 同修了 |
2009年4月 | 大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻博士後期課程 進学 |
2012年3月 | 同修了 |
関連リンク
- 研究室データベース 大阪大学舟木研究室
http://www.power-academy.jp/learn/laboratory/detail.php?pcode=29 - 学生インタビューvol.2 大阪大学 舟木研究室※修士時代の大曲さんへインタビュー!
http://www.power-academy.jp/human/university/vol02/ - 大阪大学イベントHP
http://www.eng.osaka-u.ac.jp/ja/cgi/event.cgi#BK
バックナンバー
- 工学系女性が普通になる社会へ変えていきたい
- 人を驚かせるようなものづくりに挑戦したい。
- 電気工学を活かして技術の発展に女性の視点を反映したい
- 変電技術者として変電所の運営に携わり、電気のある明るい生活を支えていきたい。
- 誰からも認められる女性技術者となり、 発展途上国の人々の暮らしに貢献したい。
- 電気工学の知識をもっと身につけ、 信頼される技術者になりたい。
- 世界中のヒトに信頼される、建設機械を設計したい。
- 新しい制御技術で、 環境にいいクルマを実現したい。
- 世界の産業を支える 技術者として活躍したい。
- 宇宙を駆ける、世界初のものづくりをしたい。
- ひとがより良く暮らす未来を電気工学でつくりたい。
- 結婚しても、大好きな研究をつづけたい
- ものづくりの現場に、 電気の専門家として貢献したい。
- 電気工学で、地球環境を守りたい。