四国の電力を支える使命を持って、火力発電の未来を拓きたい。

2016年6月30日掲載

生まれ育った四国で活躍したいという思いを叶えられ、四国電力の火力部・工事グループに所属する福田さん。入社以来、火力発電の重要な業務に携わり、現場の第一線を経験されてこられました。発電所の運転監視、設備巡視・保修からリプレース計画、予算管理まで、普段、私たちがあまり知ることの少ない電力会社の仕事内容や使命、やりがいなどを熱く語っていただきました。

プロフィール

2001年4月
徳島大学 工学部 電気電子工学科 入学
2005年3月
同上 卒
2005年4月
徳島大学大学院 工学研究科 電気電子工学専攻 博士前期課程入学
2007年3月
同上 修了
2007年4月
四国電力(株)入社
2007年6月
西条発電所発電課
2010年3月
西条発電所保修課
2013年3月
火力部計画グループ
2016年3月
火力部工事グループ、現在に至る。

※2016年5月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

センシング技術で、電力機器を守るための基礎研究

福田さんが、電気工学を学ぶことになったきっかけを教えてください。

福田:小学校のときから、国語よりも算数のほうが得意でしたね。それから物理や化学が好きになり、自然と理系の道を進んだ感じです。電気工学を志望した理由は、中学・高校時代から、現代社会においては、何をするにも「電気」が必要であると考えていたためです。ですから、工学部の電気工学科を受験しようとすんなり決心がつきました。

学生の頃から電気の重要性を認識されていたわけですね。就職のことは大学受験のときに念頭にありましたか。

福田:そうですね。私は高松出身で、四国の中で当時、知っている企業と言えば、四国電力を含めて数社しかありませんでした。ですから、徳島大学の電気工学科へ進学するにあたり四国電力のことは少しだけ意識していました。

徳島大学ではどのような研究をされていましたか。

福田:電磁波センシング技術を用いて、電力機器設備などの絶縁劣化を早期に発見する方法を研究していました。絶縁とは電気が流れない状態にすることで、電力機器等において絶縁劣化が進展すると、劣化個所から部分放電が発生するなどの不具合が生じる恐れがあります。そこで、センサーを用いて発生個所を検出できないか、といった研究を放電試験装置を用いて検討していました。

福田さんが研究されるまで、電力機器の絶縁劣化を発見するためにセンサーを用いていなかったのですか。

福田:論文などでは前例がありましたが、当時では先端に属する研究だったと思います。私がやっていたのはまだ基礎段階の研究で、試験装置を用いて部分放電の発生状況を確認していました。たとえば、「部分放電が発生したときと発生していないときは何か違うのか」、「外乱(所定の信号系以外から加わり妨害となる信号)の影響を受けないためにどうするのか」といったことを実験で確認していました。

研究の基礎段階でしたら、実験器具なども苦労されたのでは?

福田:手づくりの製作の苦労はほとんどありませんでしたが、購入した設備・器具をどのようにしたら、しっかりとした成果が出るか様々な工夫を行いました。たとえば先ほどの外乱の話だと、部分放電に起因しない信号を遮断するためにネットで覆ったり、実験する場所をいろいろ変えたりしました。

現在は、そのセンシング技術の研究はどのような状況でしょうか。

福田:私が所属していた川田昌武研究室で、現在も研究は続行中です。当時は、GIS(ガス絶縁開閉装置)の内部で絶縁劣化が発生した時に感知するセンサーにしたいというのが、最終目標でした。現在では、脳内電磁現象の可視化といった医療機器応用にも取り組んでいるようで、少しでも私の研究が役立っていたらうれしいですね。

研究で一番印象に残っていることは何ですか。

福田:電気学会の四国支部連合大会で、電気学会優秀論文発表賞を受賞したことが印象に残っています。受賞したことはもちろんうれしかったのですが、それよりも英語で発表を行ったのですごく大変だったからです。元々、私は英語が得意ではなく(笑)。留学生の方に発音を習ったりして、とても苦労したことが印象に残っています。

学生生活で、研究以外で思い出に残っていることを教えてください。

福田:学会発表後や年末などに、教授や研究室メンバーたちと研究室で宴会をしたことです。特に研究室メンバーの身内に兵庫県の漁協関係者がいたため、カニを安価に入手し、カニパーティーをしたことが印象に残っています。カニが100杯もありましたが、なんとかお腹は壊さずに済みました(笑)。その他にも、当時、川田先生とともに担当教官だった伊坂勝生先生の奥様から差し入れをいただいたりして、楽しかったですね。

インターンシップで、四国の電気に携わりたいという思いを持つ

先ほど、大学受験当時から四国電力を少し意識されたということですが、四国電力へ入社された理由を教えてください。

福田:元々、地元での就職を希望していたことが大きいですね。また私が所属した研究室は、電力会社へ進学する人が多かったため、それも背景にあるかもしれません。四国電力を特別に意識したのは、大学院一年の時にインターンシップに参加してからです。これにより、それまで以上に興味が高まりました。

インターンシップでは、どんなことをされたのですか。

福田:当時のインターンシップでは、水力・変電・給電、火力、原子力などの部門ごとに分かれて募集しており、私は「水力・変電・給電」を行う部門に、参加させていただきました。四国最大の揚水発電所・本川発電所や、50万ボルトの高電圧を扱う讃岐変電所、中央給電指令所などを見学させていただき、四国の電気に携わってみたいという思いが高まりました。

発電所の監視・巡視からリプレース計画、予算管理まで、火力発電の最前線を経験する

入社されてすぐに(2007年)、愛媛県の西条発電所の発電課に勤務されました。

福田:はい。24時間3交代勤務で、発電所の運転監視や設備巡視などの業務を行っていました。具体的には、運転している機器の状態を監視したり、発電所の中を日常点検や設備巡視といった形で昼夜問わずパトロールをしていました。西条発電所は、敷地面積が30万平方メートルで甲子園球場の約7.5倍もある発電所です。

そんなに広い場所を巡回されていたのですね。一番印象に残っていることは何ですか。

福田:配属してすぐ、当時の当直長から「仕事は機器を見ることだ。夜中でもしっかりと見ていないといけない」と言われたことがすごく印象に残っています。安定供給が求められる電力会社の厳しさとやりがいを感じました。

2010年からは、西条発電所の保修課に配属されていますね。保修課ではどのようなお仕事をされていたのですか。

福田:西条発電所は、高度成長期の1960年代に建てられた発電所のため、様々な設備更新を行っています。私が関わった中で一番印象深いのは、電源盤の更新です。その電源盤には無数のケーブルが配線されており、一本一本、ケーブルの布設先などを確認したのですが、普段立ち入らない狭いスペースに入ったため、最後は全身、真っ黒になって戻ってきたこともありました(笑)。

まさしく現場の保修のお仕事ですね。西条発電所勤務時代は、地域住民の方たちとの交流もございましたか。

福田:そうですね。西条発電所では定期的に、地元の方たちにお越しいただいて地域交流会を開いています。また、地元の公民館へ伺って、子どもたちに科学に興味を持ってもらうように実験イベントも開催しました。ドライアイスを使った実験や、蒸気の力で電気を作る実験などを行い、地元の子どもたちに喜んでもらいましたよ。

そして2013年に、今度は本店の火力部計画グループへ配属になったわけですね。

福田:はい。当時は火力部計画グループの中でも、研究関係の業務を実施している部署「技術調査分担」に所属しておりました。当社のグループ会社である四国総合研究所と共に火力部門に関係する研究の企画や予算管理などを行っていました。

計画グループでは、「技術調査分担」以外の部署でもお仕事をされたのですか。

福田:ええ。火力部門の将来を考えていく「計画分担」という部署にも所属しました。その時に、西条発電所1号機のリプレース工事に携わることができたのが、これまで仕事をしてきた中で一番印象に残っています。

具体的にリプレース計画のことを教えていただけますか。

福田:西条発電所は石炭火力発電所で、1号機と2号機で構成されています。このうち15万6000kWの発電出力を持つ1号機を、50万kWの石炭火力に建て替えよう(リプレース)とする計画です。現在も進行中です。

発電所を3倍以上の発電出力にするビッグプロジェクトですね。どんなことが印象に残っているのですか。

福田:リプレース後の新1号機の“所内電源系統”を考えたことです。現在の西条発電所の高圧電源は3,300ボルトですが、全国的には6,600ボルトが標準です。高電圧だと電力損失が少なくなるというメリットがあるため、今回のリプレースをきっかけに6,600ボルトに変更しようと計画しました。しかし、既設の設備とどう合わせていくのか。その下の系統をどうつくっていくのか。こうした“所内電源系統”をゼロから考えていったことはとても大変でしたが、すごく勉強になりました。周囲からも「なかなかできんぞ、こんな経験」と言われましたね。

現在は火力部工事グループにお勤めです。配属されて3ケ月弱ですか。

福田:はい。火力部門の設備工事予算の管理や、各発電所で実施している電気関係の工事計画、トラブル対応などの取りまとめを行っています。具体的には、各現場から修繕や改良、更新工事などの要望をもらって、予算計画を立てる仕事です。限られた予算の中で、どの案件が重要なのか、優先順位をつけて年間で計画を立てていく責任ある立場なので、身がひきしまります。

福田さんが関わった、西条発電所の全景写真です。

電気工学は、発電、変電、給電、送電などあらゆる仕事に活かせる

学生時代に身につけた電気工学の知識や経験は現在、お仕事の上でどのように活きていますか。

福田:電気関係の資料を見た際に『どこかで見たかな?』ということがあります。間違いなく、学生時代に身につけた知識が仕事の基礎になっていると思います。電力会社の仕事にとっては基盤となっていると言って良いでしょう。また、発電、変電、給電、送電などあらゆる部門の仕事に活かせるのは、大きなアドバンテージです。

今後はどのようなお仕事に取り組みたいですか。

福田:設備の知見を深めて、火力部門の電気屋として信頼されるよう努力をしていきたいです。西条発電所のリプレースに関しては、他発電所の方を含めて諸先輩方にいろいろとアドバイスをいただきました。私も何年かしたら、後輩から頼りにされる電気屋になっていきたいと考えています。

火力発電の生き字引のような立場を目標にしているわけですね。電気工学を学んでよかったと思うことは何ですか。

福田:電力会社の業務で必須となる知識を身につけられただけでなく、電力会社で必要となるいろいろな資格(電験エネルギー管理士など)を取得するうえでベースとなる知識を学べたことですね。

最後に、電気工学の進学を考えている学生の方へメッセージをいただければと思います。

福田:電気工学はさまざまな業界で活躍ができる学問で、それを学ぶことで大きな可能性が広がるはずです。私の研究室は電力会社へ進む人が多かったのですが、その他の人も研究機関や電機メーカー、重工メーカー、鉄道関係など幅広い分野で活躍されています。たとえば私といっしょに絶縁破壊のセンサーの研究を行っていた方は今、得意なプログラミング技術を活かして、重工メーカーでシステム関係の仕事をされています。このように、広いバリエーションがある学問なので、ぜひ自分の可能性を電気工学で見つけてください。

今後も、四国の火力発電を担う技術者としてさらなるご活躍を祈念しております。
本日はありがとうございました。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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