電気工学の知識を活かし、設備設計のプロとして活躍したい。

2017年11月30日掲載

実習教育に力を入れる大学で電気工学を学んだ内田さん。就職に際して選んだのは、国内有数の総合設備会社である関電工でした。現在は電気設備の設計を担当し、工場をはじめ、様々な建築物件を手がけています。「将来の選択肢の広さこそ、電気工学の魅力」と語る内田さんに、学生時代の思い出や仕事の魅力などについて伺いました。

プロフィール

2011年3月
職業能力開発総合大学校 電気システム工学科 卒業
2011年4月
株式会社 関電工入社
2011年10月
屋内線施工部署 配属
2014年4月
営業統轄本部 エンジニアリング部 設計チーム 配属

※2017年9月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

大学4年間を通じて徹底して実習を学ぶ

内田さんが電気工学を専攻された理由を教えてください。

内田:小さい頃に雑誌の付録で紙のロボットを作って遊んでいたのが、理系を選んだ原点かなと思います。高校の時は美容師を目指していたのですが、担任の先生に勧められて進学を決意し、さらに将来の選択肢が広い理系がいいと考えました。その上で、電気は生活する上でなくてはならないものなので、電気工学を専攻することにしました。機械工学も考えたのですが、結局、機械も電気がなければ動きませんから。

そして進学されたのが、職業能力開発総合大学校。こちらは職業大とも呼ばれる厚生労働省所管の省庁大学校で、日本における職業訓練の中核機関として知られていますね。

内田:ええ。私は地元が愛知県でしたので、関東に行きたいと思いました。そこで、いろいろと調べて見つけたのが職業能力開発総合大学校でした。学費が安かったですし、何よりも生産現場で活躍する人材、日本のものづくりを支える人材を育てるために、座学より実習中心の学びができるという点にひかれました。

実際に入学されて、実習は多いと感じましたか。

内田:ええ、座学でオームの法則のような理論を学ぶことなどはあるのですが、「では、電子回路を組み立ててみようか」という感じですぐに実習でした。シーケンス回路を組み立てて、ラダー図を描いて、という感じでしたね。科目数も多かったですから、もうずっと勉強している感じでした。大学生というのはもっと遊んでいるというイメージでしたが、まるで高校生活の延長のようでした(笑)。クラスには担任の先生がいました。クラスの仲間も4年間ずっと一緒でした。

本当に高校生と変わらないですね。研究室ではどのようなことに取り組みましたか。

内田:電力工学研究室で、電話機を対象として過電圧を印加し、耐えられる雷サージのレベルを明らかにするとともに、過電圧が印加された電話機がどのような挙動を示すかという実験を行いました。

雷が落ちると家庭の電気機器が壊れてしまうということがありますね。

内田:ええ。具体的には、SPDという雷保護装置を用いて雷保護を行っているのですが、保護される機器のサージ耐量を正確に把握できれば、過剰なSPDを付ける必要が無くなり、家電機器のコストダウンや小型化につながります。家電機器の雷サージ耐量に関する基準や規格はほとんどなかったため、データ収集を行いました。

実際の雷を想定して電圧をかけてみるわけですか。

内田:そうです。まさしく雷をつくって落としているような感じでしたね。それで、どの程度のSPDがあれば大丈夫かを調べました。9キロボルトの電圧で落としていたので、今考えると恐ろしいことをしていたなと思います。

さすがに職業能力開発総合大学校だけあって非常に実践的ですね。研究生活で一番印象に残っているのは、どんなことですか。

内田:電気設備学会の全国大会で論文発表を行ったことです。電気のプロに向けて自分の研究を発表するので、大変緊張しました。ただ、学生の発表ということで、それほど厳しい質問はなかったように記憶しています。今、社会人として同じ学会で発表することがあるのですが、その場で後輩も発表している姿を見ると、うれしくなります。

建築の平面図を目にして将来進む道を決めた!

2011年に卒業後、入社されたのが株式会社関電工ですね。関電工は、電気工事、情報通信工事などの企画から設計、施工、メンテナンスを一貫して手がけている国内有数の総合設備会社ですが、電気設備の会社には、以前から興味がありましたか。

内田:学生時代のインターンシップで名古屋の電気設備工事会社に行きました。そのとき、電気設備の図面を見て、とても面白く感じたのです。それまで回路図は見ていましたが、建築の平面図を見るのは初めでで、そこから電気設備の会社に興味を持つようになりました。

なるほど。そこで、関東エリアで広く事業を展開されている関電工へ?

内田:ええ。当時、ちょうど東京スカイツリーの建設中で、関電工がメインで電気設備工事を手がけていました。そんな憧れもありました。

現在のお仕事内容について教えてください。

内田:入社して3年間、施工管理として工事現場で走り回る日々を過ごしました。4年目に現在の部署に異動となり、以来、CADソフトを使用して建物の電気設備設計図を作成しています。半年に1件として、これまで6件ほど手がけてきたと思います。

新築の建物が多いのでしょうか。

内田:そうですね、新築が多いです。というのも、既設の建物の方が難しいので、もう少し新築で経験を積んでから既設を担当するようになると思います。築30~40年くらいの古い建物を改修するとなると、当時はCADがありませんでしたから、手書きの図面しか残っていません。青焼きの図面を手にして、読み込んでいくところから始めなければならないのです。その上で職人さんが作業に必要な設計図や施工図を作成していきます。

苦労するのはどんな点ですか。

内田:事務所や工場などの建物用途ごとに、法律が変わってくることですね。工場はあまり変わりませんが、商業施設や事務所などいろいろなテナントが入るビルの場合は、建築基準法や消防法が厳しくなります。日々勉強しながら業務を行っています。

建物が完成した後だからこそ感じる不安とは

現在のお仕事で特に印象に残っていることを教えてください。

内田:やはり仕事が終わって建物が完成したときの達成感は大きいですね。特にシステムの提案から設計図作成まで一貫して行った物件については、竣工の際に大きな感動がありました。通常、設計は設計会社が行うことが多いのですが、最近では設計も含めて施主と直接やりとりすることも増えてきました。そうした物件は、達成感もひとしおです。一方で、不安もありますが。

竣工時に不安を感じるのですか?

内田:建物は完成して終わりではなく、その後の維持・管理も重要ですし、使っている途中で不具合が発生することもあります。工場ならば24時間・365日稼働することが求められるので、電気の不具合で生産ラインが止まってしまったら、大変なことになります。今までそういう経験をしたことはありませんが、設計図が間違っていなかったか、施工に問題はなかったかと、いろいろ考えてしまうのです。

それだけ重要なお仕事をされているということですね。そのお仕事で、学生時代に身につけられた電気工学の知識や経験は、どのように活きているとお感じになりますか。

内田:先ほども申し上げたように、私の通っていた大学では実習が非常に多かったので、電気回路の組み立てやシーケンスの配線作業など、現在の仕事で行っていることを学ぶことができました。電気に関する体験をひと通り実習で行ったと思いますので、苦手なことがあっても、なんとなくイメージすることができます。新入社員の研修でも、他の人は回路の組み立てができないのに私はぱっとできましたから、学生時代に実習で体験しておくことで、こんなに違うのだと実感しました。

研究が役に立っていると感じることはありますか。

内田:建物によっては避雷針などの雷保護設備を取り付けることが法律で決まっているのですが、そういう案件を担当したときは、当時の研究のことを思い出しますね。

多様な建物を手がけるオールラウンドな設計者に

電気の専門家として建築の分野で活躍されているということに、まさに電気工学ならではの可能性の広がりを感じます。

内田:そうですね。ただ、家電メーカーに行こうかなと考えたこともありました。インターンシップで建築の図面を見ていなかったら、そちらに行っていたかもしれません。

今後はどのような仕事に取り組みたいとお考えですか。

内田:これまでは工場の設計が多かったので、事務所や病院など様々な用途の物件に携わることで、オールラウンドな設計者へと成長していきたいと思います。今、ホテルの設計をやらせてもらっているのですが、例えば照明器具も工場なら見栄えにこだわらなくても良いですが、ホテルとなると意匠的なことを考えなければなりません。24時間、常にお客様が出入りしますし、土日も開いているため、点検時も停電することはできません。電気を止める際、72時間は非常用発電機で対応できるようにするなど、考えなくてはならないことはたくさんあります。病院の場合は、なおのこと停電できないので、回路を2系統にして万全の体制をとる必要があるのです。

電気工学を学んでよかったと思うのは、どんな点ですか。

内田:最初にも話しましたが、機械を動かすにも電気が必要となります。日本では当たり前のように点いている照明器具も電気が無ければ部屋は真っ暗なままです。電気が必要とされている現在では、電気の知識を持っている人は必要とされる人材とも言えます。建築の仕事をしていると電気を知っていると重宝されますね。

なるほど、周囲は建築を学んできた方ばかりだから、電気の専門家は頼りにされるのでしょうね。

内田:それはあるかもしれないですね。

最後に、電気工学を学んでいる学生の皆さんに、アドバイスをお願いします。

内田:電気工学を学んでいると、将来の選択肢は多いですし、幅広い分野で活躍することが可能です。私はインターンシップがきっかけで電気設備会社の道に進みましたが、学生の皆さんもできるだけ様々な経験をして、自分が興味を持てそうなものを見つけてください。間口の広さは、電気工学の大きな魅力です。

今後もすばらしい建築物に関わることを期待しております。本日はありがとうございました。

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