電気工学を活かして技術の発展に女性の視点を反映したい 東京電力パワーグリッド株式会社 配電部 配電業務改革グループ 小峰 清香さん(こみね さやか)さん

2023年7月31日掲載

※本記事は、2023年6月に取材しました。

社会の基盤を支える電気に
魅力を感じて

小学生の頃は算数が苦手だったという小峰清香さん。理数系の道を意識するようになったのは中学生になってからだったそうです。
「小学校で苦しんだ“つるかめ算”や“方陣算”も、中学で方程式を習ったら、こういうことだったのかと腑に落ちて、数学って面白いと思い始めました」
高校では理数系を専攻。大学進学では人々の生活を支える基盤となる電気・電子情報という分野に興味を持ち、工学部を志望されるようになりました。当時(1990年代後半)はパソコンが普及し、小峰さんも電子情報工学か、電気工学かと悩まれたとのこと。しかし社会の基盤を支えるという点では、やはり電気の方にやりがいがあるのではと思い、電気工学科への進学を決心されました。
「広く、まんべんなく学べるというところも電気工学の魅力でした」
当時、電気工学科には50名ほどの学生が在籍し、そのうち女性は5名ほどでした。電子情報工学科においても同じような状態だったとのことで、合計10名ほどの女性と一緒に小峰さんは充実の4年間を過ごされました。

“送電線の不思議”に
 魅せられて入社

小峰さんが電力会社を志望するようになった“原点”は中学時代のアニメ体験にありました。
「アニメ『エヴァンゲリオン』の電柱設備の描写がすごくリアルで、エヴァンゲリオンが送電線を越えていくシーンは心に強く残りました」
それがきっかけで高校生から大学生にかけては、気がつくと送電線を眺めていることも多かったそうで「人が入れないような山間部の鉄塔を見て、どうやって作ったんだろうと不思議な気持ちになっていた」とのことです。
“その送電線の先に街があって人がいる。送電線で電気が送られてくるから生活が守られ、文化や技術も発展する ”そんな思いが、電力の安定供給に貢献したいという志となり、電力会社への就職につながりました。
東京電力(当時)入社後、小峰さんは支社の配電保守グループに配属されました。入社後は男性と一緒に、電柱に昇る訓練も受けられたそうです。その後、電柱の強度計算や電線の電圧降下計算を担当したり、出向先で電柱工事の設計を行ったりと、配電設備に関する仕事に携わってこられました。

「電気設備の技術基準にも興味を持ち、日々実施している計算が何に基づいて“良”と判断しているのか、根拠を勉強する癖がついていたことは、自身の業務品質向上にもつながりました」
さらに配電工事全般を管理するシステムの開発・改修も手がけられたそうで、「入社して20年近く、一貫して配電設備に関わってきました。お客様にもっとも近く電力を届ける配電業務は思い入れもあり、やりがいもありますね」と振り返っています。

DXを推進して
 業務改革に挑む

2023年6月現在、小峰さんは東京電力パワーグリッド株式会社の配電部でデジタル化推進チームリーダーを務めていらっしゃいます。デジタル技術を活用した社内業務の改善やお客様のUX(ユーザーエクスペリエンス)向上などがミッションです。いわゆる社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)化に取り組んでいます。
「最初に携わったのがRPA(※)を活用した業務改善です。これまでとは畑違いの業務で触れたこともない技術でしたので非常に苦労しましたが、想定通りにプログラムが動き、業務の工数削減に結びついたときは大きな達成感がありました」
高度なデジタル技術の活用という点では、チャットボット(自動会話プログラム)、ドローン、MR(Mixed Reality : 複合現実)の活用による業務効率化・高度化の検討も実施中とのことです。
「例えば配電設備の異常について、お客様から通報をいただくケースがあります。以前ならば電話でご説明を伺った後に、現場へ急行して確認するという流れでした。それが今では、お客様に写真をクラウドへ上げていただき、それによって現場出向前に緊急度合いを把握できるようになりました」
社内業務のDX化についてはまだまだできることがたくさんあるので、小峰さんは「最新デジタル技術をより広くよりスピーディに取り入れ、事業構造変革を成し遂げていきたいと思います」と意気込みを語っています。

(※)RPA(Robotic Process Automation)とは、事務系の定型作業を自動化するツールのこと

女性が働きやすい環境は、
男性にとっても働きやすい環境

2023年6月現在所属している部署に女性は多くありませんが、東京電力には、働く女性を応援する制度はしっかり整っているとのことです。小峰さんも産前産後休業・育児休業を経て現在は3歳のお子さんを育てながら働いていらっしゃいます。
「コロナ禍を契機に在宅勤務によるリモートワークが浸透し、私自身も活用しています。通勤時間を家事に充てられているので、非常に助かります。短時間勤務をする社員も多いです」
以前は結婚や出産を機に退職される女性社員も少なくなかったそうですが、そうした状況も変わってきて、子育てしながら働き続ける女性社員がずいぶん増えたと感じているそうです。最近では育休を取得する男性社員も増えてきています。
「女性が働きやすい環境は、男性にとっても働きやすい環境の職場だと思います。私としては一緒に働いてくれる女性がもっと増えると嬉しいですね」

電気工学は
自分の可能性を広げてくれる

小峰さんが今でも思い出すのは、大学への推薦入試の小論文です。
「与えられたのは『空気が導電体だったら世の中どうなっていたか』というものでした。小論文を書きながら電気というエネルギーの重要さや価値について考えたことが、現在の仕事につながっていると感じています」
電気工学は人々の生活を支える基盤となる学問であるため、必ずやりがいや達成感を見いだせる領域であると小峰さんは考えていらっしゃいます。また、培った知識を広い分野で活用・応用できる汎用性があるため、自分自身の可能性を狭めることなく様々な分野で活躍できるとも指摘されています。
「電気工学を学ぶことで、幅広い活躍が期待できます。電力業界なら、人々の生活基盤や技術・文化の発展を支えることができる人財になれるでしょう。電気工学は汎用性、将来性、可能性に満ちた分野であると思います」
そして、電気工学を学んだ人たちの活躍が社会や企業の基盤を支えることになると指摘し、特に女性の皆さんへ熱いエールを送ってくださいました。
「電気工学の世界で活躍する女性が増えれば、社会を支える技術の発展にも女性の視点が反映されると思います。女性だから苦手と決めつけず、ぜひチャレンジしていただきたいですね」

わたしの研究

水晶発振回路における位相雑音の低減に関する技術について研究しました。通常の発振回路(=電気的に繰り返し振動を発生する電子回路)と比較して、フィルタ付き回路においてはキャリア(=キャリア波・運送波)近傍の位相(=波形の時間的なズレ)雑音の改善ができることに着目しました。これにより、高Qフィルタ(=特定の周波数を通過させるフィルタ)を利用することでさらなる雑音低減ができるのではと考え、高Qフィルタを用いた回路の特性を解析。シミュレーションの結果から、さらなる低減が見込めることがわかりました。

わたしの思い出

研究室に配属されてまず行ったのがパソコンの組み立て。各種基板やコード、メモリといった部品を渡され、悪戦苦闘しながら組み立てました。まだスマートフォンで簡単にインターネット検索ができるような時代ではなかったのです。最後にOSをインストールしようとしたところ、画面は真っ黒なままでまったく動きません。なぜだろうと、せっかく組み立てたパソコンを解体したらメモリを挿し忘れていて、「それじゃ動かないだろう」と助教授に大爆笑されました。所属していた研究室に女性は私1人でしたが、研究室の皆さんにはとてもよくしていただきました。お酒の好きな先生が多くて、簡単なおつまみを用意してワインを飲みながら楽しく過ごしたこともいい思い出です。

わたしの趣味

夫の趣味がサーフィンで、休日には家族で海に行き、夫の波乗りを眺めながら娘と一緒に砂浜で過ごします。先日は夫が崇拝している伝説のサーファーが来日したとのことで、サーフショップでのサイン会目当てで都内までドライブしてきました。平日は仕事と育児・家事の両立を目指してタイムパフォーマンス重視になりがちなので、休日にのんびり海を眺めてリフレッシュする時間はとても心地よいです。

小峰さんのある一日

5:30起床。子どもの朝食準備と出勤の身支度
6:00子どもを起こし、朝食をとらせ、保育園登園の身支度
7:00自宅出発
7:15保育園登園
8:30出社
8:40勤務開始。メールチェックと部下の勤怠管理。社内メールを見て、内容と対応期限をチェック。タスク優先度を決めて順番に対応します
9:00メール返信と資料作成。チームメンバーが作成した会議資料をチェック
10:00定例会議出席。タスクの進捗確認と新規トピックのディスカッション
12:00同僚と外でランチ。周囲にはおいしいランチのお店がいっぱいあります
13:00午後の勤務開始。定時までにこなさなければいけないタスクを再整理して、午後の勤務に備えます
15:00社外の関係者とWeb会議。アジェンダを事前に整理して時間を効率的に使います
17:00本日期限の報告をメールで実施。定時までラストスパート!
17:20勤務終了
18:30保育園にお迎え
19:00帰宅。夕食準備
21:00子どもの寝かしつけ。寝落ちする日もあります

小峰清香さんのこれまでの歩み

2000年4月東京都立大学 工学部電気工学科 入学
2004年3月同上 卒
2004年4月東京電力株式会社 入社
2004年4月神奈川支店 相模原支社 相模原地域配電保守グループ 配属
2005年4月神奈川支店 相模原支社 相模原地域設備サービスグループ 配属
2006年7月神奈川支店 相模原支社 設備技術グループ 配属
2007年7月株式会社 東電ホームサービス(現:東電タウンプランニング株式会社) 出向
2010年7月神奈川支店 藤沢支社 藤沢・戸塚地域配電建設グループ 配属
2013年7月神奈川支店 設備部 設備企画グループ 配属
2014年7月配電部 配電機材技術センター 品質管理グループ 配属
2016年7月東京電力パワーグリッド株式会社 技術・業務革新推進室 次世代販工開発グループ 配属
2020年10月配電部 業務システムグループ 配属
2021年10月配電部 配電業務改革グループ 配属 現在に至る

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