技術力で地球にやさしい社会づくりに貢献できるエンジニアを目指したい。

2020年2月28日掲載

亜熱帯の自然と個性豊かな沖縄の文化に囲まれた、日本最南端の国立大学である琉球大学。今回は、こちらの大学院理工学研究科の「浦崎研究室」に学ぶ皆さんにお話を伺いました。いつも話し声が絶えない明るい雰囲気で、イベントも盛りだくさんという、活気あふれる研究室です。

※2019年12月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

機械工作がきっかけで電気に興味

最初に電気工学を学ぼうと思われた動機について教えてください。長内さん、いかがでしょう。

長内:子供の頃は機械いじりが好きで、中学生になってからは父と一緒にラジコンを組み立てて遊んでいました。それがきっかけでモーターに興味を持つようになり、高専に進学しました。

最初は機械が好きだったんですね。

長内:ええ。高専で勉強するうちに、生活のあらゆる場面で使われている電気の重要性に気づくようになり、興味の対象が機械から電気へと移っていったんです。そして、電気についてより深く学ぼうと思い、琉球大学の3年生に編入しました。

続いて青山さん、お願いします。

青山:長内君に似ているのですが、私も幼い頃に工作で遊んでいたことがきっかけです。僕は3人兄弟の末っ子で、兄2人に加え、父も電気工学を専攻していました。その影響で電子工作キットをつくって遊ぶようになり、そこから電気工学に興味が広がっていきました。

お父さんは電気関連の仕事をされているのですか。

青山:ええ、自営業としてレーダーの設計などを請け負っています。

ありがとうございます。では瀬名波さん、いかがでしょう。

瀬名波:私は小さい頃に夜空を見上げて、星はなぜ光るのだろうと不思議に思ったことが、記憶に残っています。小学校の理科の実験では、豆電球はどうして光るのかなと思ったものでした。そうした疑問が原点にあったせいか、高校で進路を決めるときに、電気電子工学を学ぼうと考えたわけです。長内君や青山君のようにしっかりした動機があったわけではなくて、何となく電気の道に進んだという感じですね。ただ、電気の勉強そのものは楽しんで続けています。

この中で沖縄出身なのは瀬名波さんだけで、あとの2人は県外からですね。

長内:私は千葉県の出身なんですが、高専から大学に編入しようと考えたとき、浦崎先生の研究室が面白そうだと思ったので琉球大学を選びました。

青山さんはどちらのご出身ですか。

青山:岐阜県の出身です。沖縄は気候が温暖なので住みやすく、とても気に入っています。

瀬名波:沖縄って、気候もそうですが、人も温かいんです。

長内:それは同感です。ちょうどいい感じにゆるいところが、沖縄の人たちの魅力だと思います。

アットホームな雰囲気が自慢という研究室で、左から長内さん、青山さん、瀬名波さん。

地球に優しい技術の研究

青山さんが2ヵ月がかりで自作したという実験装置。研究室のシンボルのような存在です。

では、皆さんの研究内容について教えてください。青山さん、お願いします。

青山:私は、マグナス効果を用いた風力発電機の、円柱の回転数の最適化に関する研究を行っています。沖縄は台風が多いのですが、マグナス効果を用いた風力発電機を実用化することで、台風でも壊れる心配なく風力発電を続けられるようにすることが私の夢です。

マグナス効果とはどういうものですか。

青山:空気の流れの中に回転する円筒や球を置いたときに、流れの方向に対して対直方向の揚力が発生する現象のことです。野球やサッカーなどで、ボールに回転を加えると曲がったり浮き上がったりしますが、これがマグナス効果によるものです。通常の風力発電機はブレードを用いて発電機を回転させますが、マグナス効果を用いた発電機では、回転する円柱がブレードの代わりとなります。円柱を回転させるためには電気を用いるのですが、そのエネルギーよりも発電機で発電するエネルギーを大きくする必要があります。そこで私は円柱を回転させる際のモーターの最適な回転数を求めることに取り組んでいます。

長内さんは、充電ステーションシステムの運用について、パソコンを使ったシミュレーションに取り組んでいます。

ありがとうございます。長内さんはどのような研究に取り組んでいらっしゃいますか。

長内:再生可能エネルギー由来のEV (電気自動車)充電ステーションの導入によるCO2削減効果について研究しています。具体的には、FIT(固定価格買取制度)の契約が終わる家庭で発電された電気をもとに、電気自動車用の充電ステーションシステムを構築し、CO2の排出量が最も少なくなるような運用方法をシミュレーションによって求めるというものです。

「自分のペースで研究に取り組むことができる研究室です」と瀬名波さん。

では続けて、瀬名波さん、研究内容を教えてください。

瀬名波:電気自動車に使われるようなモータでは回転数を変える際の情報を得る為に、速度や位置などを把握する各種センサが必要となります。しかし、センサを導入するとコスト高になり、センサの故障による信頼性低下といった問題も発生します。そこで行われているのがモータのセンサレス化です。私はモータのセンサレス制御下において、低負荷・低速度運転時に正確な検出が難しい電流の符号の情報を用いずに、インバータに含まれているデッドタイム誤差を補償する新しい技術を研究しています。センサレス技術が利用可能な範囲を拡大することで、モータのコストダウンと精度の向上に大きく貢献できると考えています。

自分で見つけた研究テーマに取り組む

瀬名波さんの研究は、浦崎先生の勧めによるものですか。

瀬名波:ええ。先生が「昔、こんな研究をしたことがあるのだが、やってみないか」とアドバイスしてくださいました。先生の志を受け継いで取り組んでいます。

長内さんと青山さんはいかがでしょう。

長内:私は先生との雑談の中から、研究テーマのヒントを見つけました。とにかく沖縄県のCO2排出原単位が他県に比べて際立って多いことは、この研究に対する大きなモチベーションとなりました。沖縄県では火力発電所が発電の大部分を占めており、そのため電気自動車を導入してもCO2の排出につながらないという問題があります。太陽光発電とバッテリーを組み合わせた充電ステーションシステムが構築できれば、必ずCO2削減に貢献できると考えています。

青山:私も先生との雑談に近いような話からヒントをもらい、研究テーマを見つけました。

先輩は誰も取り組んでいなかったテーマだったのでしょうか。

青山:ええ、そうです。そのため研究の途中で壁にぶつかっても自分で考えて乗り越えていくしかありません。進む速度は遅いのですが、世界で他に類のない研究を行っているという手応えは、大きなやりがいです。

世界最先端の研究というわけですね。

青山:そう言ってもらえると、嬉しいです。研究では実機を用いて測定を行うのですが、実験装置も研究室内に自作しました。

学会での発表の経験は。

瀬名波:私は学会で自分の研究成果を発表したのですが、聞いてくださった方から、ある技術について「それは既にある技術では」というご指摘をいただきました。調べてみたら確かにその通りで、自分の調査不足に気づかされました。とても勉強になった経験でした。

多すぎず、少なすぎず、ちょうどいい規模感という浦崎研究室。
イベントの多いことが、みんなの気持ちをさらに近づけてくれているようです。

英語での発表を通じて言語スキルを磨く

研究室では、英語の習得にも力を入れていると聞きましたが。

青山:毎週一回、研究報告会があり、一週間の研究成果や、次の週の研究予定などを報告し合っているのですが、同時に英語の論文を読んで発表したり、プレゼンテーションをしたりといったことが行われています。

瀬名波:セネガルからの留学生がいるので、論文を英語で発表することが多いです。

長内:確かに英語で読んだり書いたりする機会は多いですね。

青山:私は学部生の時に交換留学生としてハワイ大学で4ヵ月ほど学び、英語でのコミュニケーション力を磨くことができました。セネガルの留学生とは、よく英語で会話しています。

先生が電気工学の技術者にとって英語は重要なスキルだと感じていらっしゃるのでしょうね。

瀬名波:やはり国際学会での発表や英語の論文の投稿など、研究活動で英語を使う機会は多いですから、これからは当たり前のように英語が使えないといけないと感じています。

お楽しみイベントを毎月開催

普段の研究室はどのような雰囲気ですか。

瀬名波:すごくアットホームです。こぢんまりしていて、みんな仲がいいですよ。

青山:肩肘張らない雰囲気で、とにかくいつでも笑い声が絶えないという感じですね。

長内:みんなおしゃべりなんです。

瀬名波:先生自身がおしゃべりだから、先生の人柄がこのアットホームな雰囲気に反映されているのかもしれません。

イベントも盛んとか。

瀬名波:そうなんです。先日はみんなでペンションに泊まりに行きました。

長内:研究室のメンバーはLINEのグループでつながっていて、毎月1回、LINEのあみだくじで幹事が選ばれます。幹事になった人は、みんなのためにイベントを企画しなくてはならないというルールなんです。

なるほど。皆さん、幹事に当たったことがありますか。

長内:はい。そのときは飲み会を企画しました。

瀬名波:私が幹事になったときは、ドライブを企画しました。

青山:私はまだなんです。私は自転車が趣味なので、幹事になったらぜひサイクリングをやりたいと思っています。

瀬名波:サイクリングは以前やったことがありましたね。みんな楽しんでくれるか、ちょっと心配だったのですが、思った以上に盛り上がりました。沖縄の南部を走って、一緒にご飯を食べました。そもそもは私の代から始まった企画で、みんなで仲よくなろうということが目的でした。狙いは十分果たせていると思います。

長内:先生も参加して、あみだくじを引いてもらっています。先生だからって特別扱いはナシです。

瀬名波:先生が幹事に当たったときは、みんなで先生の息子さんの野球大会の応援に駆けつけたこともありました。あれも楽しかったですね。

青山さんは、自転車が趣味とおっしゃいましたが。

青山:ええ。大阪から名古屋まで夜通し走ったこともあるくらい、自転車が好きなんです。もっとも走るよりもいじる方が好きですね。小さなベアリングを一つ取り替えてみただけで走りがまったく違ってくるのが自転車で、本当に奥が深いと思います。

他のお2人の趣味は。

コミュニケーション上手な仲間が集まった研究室。笑い声が絶えないとか。

長内:青山さんに似ているのですが、私は自動車系のサークルに所属して、車やバイクの整備を楽しんでいます。ドラッグレースに参加したり、毎月一回、サーキットで走ったり。アルバイト先も工具屋さんで、同じ趣味のお客さんと会話を楽しんでいます。外国人のお客様も多いので、英語の勉強にもなります。

瀬名波:私は2人とは違って、インドア派ですね。趣味はドラマ鑑賞で、テレビドラマはほぼ全部、毎日のように観ています。短時間で自分の知らない世界に触れられるのがドラマの魅力で、観ていると人生が豊かになるような感じがします。通学は車なのですが、車内では好きなドラマの主題歌を聴いています。

趣味と仕事の両面で電気工学の力を実感

電気工学を学んでいてよかったと思うのはどのような点ですか。

瀬名波:やはり身の回りのあらゆるところで電気が使われていることから、電気工学を学んでおくと幅広い分野で活躍できることが一番の魅力ですね。

千葉県出身の長内さんは、アパートで一人暮らし。食事も自炊して、規則正しい生活を心がけているとか。

長内:同感です。就職先を考えるときも、様々な企業が選択肢の中に入ってきますよね。

瀬名波:私の就職活動の体験でも、会社説明会やインターンシップを通じて、エネルギー業界、インフラ業界、自動車業界、IT業界さらには鉄道や医療など、本当にあらゆる業界で電気工学の専門家が必要とされていると感じました。

青山:私の就職活動はまだ先ですが、先輩2人の言うことはよくわかります。先ほど、ハワイ大学に留学していたと言いましたが、留学中、専攻が電気工学であることを伝えると「それなら仕事探しは簡単だね」と言われたことが特に印象に残っています。アメリカ人にとっても電気工学は就職に強いというイメージがあるようですね。経済を専攻していたのに将来を考えて電気工学専攻に変えた、という人にも出会いました。

長内:あとは先ほども言ったように自動車やバイクが好きなので、ウィンカーのトラブルを直すなど、ちょっとした修理なら自分で行えることも、電気工学を学んでいてよかったことだと感じています。

では最後に、皆さんの夢を聞かせてください。

岐阜県出身の青山さんは、大学の学食でアルバイト中。「賄い付きなので助かっています」。

青山:私は自動車の部品をつくるメーカーのインターンシップに参加したのですが、その会社では高速で走れる電動自転車「eバイク」の開発に取り組んでいました。実は「eバイク」は海外では広く浸透しており、日本でも法整備などが進んで普及するようになれば、という夢を持っています。私自身の進路はまだ決めていませんが、いつかは海外とやりとりのできるグローバルなエンジニアになりたいと思っています。

長内:私は自動車に関連する仕事に就きたいと考えています。今後、EVはもっと普及していくと思うので、モータードライブの知識を身につけ、EVの発展に貢献したいと思います。

地元出身で実家から車で通っている瀬名波さん。大学院修了後は東京の会社で活躍する予定です。

瀬名波:私はエネルギー業界に就職が決まっており、エンジニアとして社会人生活をスタートさせる予定です。今まで世の中の様々な人のお世話になって育ってきたので、これからは恩返しとして、人々の生活を支えることのできる技術者になりたいと考えています。

今日はどうもありがとうございました。

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