日々の確実な作業の積み重ねで、地下鉄というインフラを支えたい。

2024年1月31日掲載

電気の専門知識を活かして社会に貢献したいと考えて選んだのが、鉄道の仕事。「人々の目が届かないところで日々の安全・安心を支えていることに誇りを感じています」と薩美さんは胸を張ります。東京地下鉄(東京メトロ)で信号通信設備の保守点検等に携わる薩美さんに、お話を伺いました。

プロフィール

2016年4月
日本工業大学 工学部 電気電子工学科 入学
2020年3月
同上 卒
2020年4月
東京地下鉄株式会社 入社
2020年6月
電気部 日比谷線信通区 配属 現在に至る

※2023年12月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

父親の影響で電気工学の道へ

電気に興味を持たれたきっかけは何でしたか。

薩美:エンジニアだった父親の影響です。父は私にロボットコンテストなどを教えてくれました。どんな機械を動かすにも電気が必要だということから、私は電気に興味を持つようになりました。

大学は電気電子工学科ですね。

薩美:当時は電気だけでなく、情報系にも興味がありました。どちらも学べるということで電気電子工学科に進み、大学で学ぶ中で電気を専攻するようになりました。

強指向性スピーカーの研究に打ち込む

学生時代の研究について教えてください。

薩美:超音波を利用した強指向性のスピーカーである、パラメトリックスピーカーについての研究をしました。例えば美術館などで、展示品の前に立った人にだけその作品の解説が聞こえるような使われ方をするスピーカーです。このパラメトリックスピーカーを用いて、特定の音だけが聞こえない室内環境をつくれないかというのが私の研究テーマでした。例えば外を走る車や工事の騒音などを消して、人の声だけがしっかり響く会議室をつくるわけです。

手応えはいかがでしたか。

薩美:室内の環境がちょっと変わるだけでプログラミングをやり直さなくてはならず、大変でした。私の実験は基礎的なもので、実用化に向けた研究は卒業と同時に後輩に託しました。いつか世の中で活用されるようになったら、自分が学生時代に取り組んだことが形になったという感慨がわくと思います。

学生時代の思い出を教えてください。

薩美:大学の敷地が広かったので、他の研究室と合同でバーベキューを楽しみました。みんなで肉やお酒を持ち寄ったのですが、シイタケの栽培について研究していた研究室が、自分たちで育てたシイタケを「みんなで消費しよう」と持ってきてくれたことが印象に残っています。私の研究室そのものも非常に仲がよくて、定期ミーティングや発表会の後などはよく飲み会をしたものでした。

東京都内での仕事が決め手に

就職活動のことを教えてください。

薩美:私が考えていたのは、電気工学を学んだ専門性を活かしながら、世の中のためになる仕事がしたいということでした。そこで志望したのがインフラ系の仕事です。一つの会社で長く勤めたいという思いも、インフラ系の企業ならかなえられると思いました。そしてインフラの中でも、人々の日常生活に密着していて、社会を支えていることが目に見えてわかるということで、鉄道会社に興味を持ちました。

数ある鉄道会社の中で、東京メトロを選んだのはどうしてですか。

薩美:一番の決め手は、東京メトロは路線のほとんどが東京都内にあるため、転居の伴う異動がないという点でした。私は埼玉県に両親と暮らしており、実家から通えることに魅力を感じたのです。東京メトロは私の希望にぴったりでした。

電気の専門家が鉄道会社で活躍する姿はイメージできましたか。

薩美:確かにその点は不安でした。車両や線路は人の目に触れますが、電気は見えませんし、どんな仕事をするのか、想像できなかったのは確かです。もちろん会社説明会や先輩社員との面談では仕事について詳しく説明していただいたので、最終的には思い切ってチャレンジしようと決めました。今では、電車が動くのも自分たち電気の専門家がいるからだ、と自負しています。

始発列車の姿に感じる誇り

現在のお仕事について教えてください。

薩美:主に信号通信設備の保守点検や修理を担当しています。所属しているのは日比谷線信通区で、地下鉄日比谷線20.3kmに設置されている信号設備や通信設備を見守っているわけです。これらの設備はお客様をお乗せした列車が安全に走行するために必要不可欠なもので、定められたスケジュールに則って定期点検を行っています。作業は基本的に、作業の安全を確認する人と実際に点検作業を行う人の2人1組で進めます。チームワークが大切な仕事です。

点検作業はいつ行うのですか。

薩美:日中は営業列車が運行しているので、そのすき間の限られた時間内に作業をします。少し大きな作業の際は列車の運行終了を待って、翌朝の列車運行開始までの深夜帯に行います。

お仕事のやりがいはいかがでしょう。

薩美:深夜作業が終わったら始発列車が動くのを確認して終了となりますが、お客様をお乗せした列車が何ごともなく通過したときは、大きな安堵感と達成感に包まれます。もちろん私たちが作業している様子は、お客様の目には届きません。列車が時刻通り安全に走るという当たり前の日常を、お客様から見えないところで支えていることに、誇りを持っています。

印象的だったエピソードを教えてください。

薩美:入社2年目、定期点検でレール絶縁という設備のボルトが折れていることを発見しました。レール絶縁とは2本のレールを接続しつつ、導体であるレールに絶縁材を利用して、電気の流れを遮断する装置です。そのボルトが折れていたため、すぐに常備してある非常用ボルトに交換し、深夜に改めて作業して修理を完成させました。定期検査がいかに重要かを実感するとともに、確実に検査を行っているからこそ、事故につながりかねない事態を未然に防ぐことができたと思いました。

電気の技術者にとって、鉄道とはどういう存在でしょう。

薩美:鉄道というシステム自体は完成されたものであり、列車の安心・安全な運行の一翼を電気が担っています。決められたルールに基づいて、当たり前の作業を当たり前のように毎日繰り返していくことが大切であり、そうした積み重ねに電気の技術者としての使命を感じます。

幅広い領域の知識を身に付けたい

学生時代に身に付けた知識はどのように活きていますか。

薩美:業務上、電圧計や電流計、ATC測定機、無線の測定器など様々な計測機器を利用するのですが、学生時代に計測器の原理を学んでいたため、初めて触れる機器でも戸惑うことなく操作できています。当時はこのような形で役に立つとは想像もしていなかったので、真面目に勉強したことは必ずどこかの場面で活きるものだと感じています。

将来はどんな人材を目指しますか。

薩美:仕事をする中で強く感じたのが、鉄道は本当に様々な職種の仲間とのチームプレーで支えられているということでした。異なる領域の専門家が手を取り合い、寄り添い、互いに理解しながら支え合っているのが、鉄道の仕事なんです。当面は現業部門で経験を積みながら、他の領域の知識・技術も学び、将来的には部門の違いを超えて業務ができるような人材を目指します。また、後輩に指導する機会も増えてきたので、技術の継承にも貢献したいと思います。東京メトロの職場は非常に風通しがよく、経験を受け継いでいくにはとてもいい環境だと思います。

選択肢の多さこそ電気工学の魅力

電気工学を学んでいてよかったことは何でしょうか。

薩美:電気工学は、社会に不可欠のインフラや電子機器を動かすための基礎となる学問です。その知識を身に付けておけば幅広いところで役に立ちますし、自分の将来を考える上でも有効でしょう。

電気工学を学ぶ皆さんにメッセージをお願いします。

薩美:今もお話ししたように電気工学は基礎となる学問ですので、活躍の場が多いことが魅力です。将来の選択肢の幅を広げていくためにも、視野を広げて多くの知識を吸収していただきたいと思います。

ありがとうございました。

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