電気で土壌汚染を解決したい。 CVケーブルを守りたい。

2011年5月31日掲載

秋田大学 工学資源学部 鈴木研究室は、現在秋田大学長である吉村昇先生の後を継いで2008年に開設されました。環境、エンジニアリングデザイン、生体福祉工学と幅広い研究テーマを持ち、テレビや雑誌などにも頻繁に取り上げられています。

※2010年1月現在。文中の敬称は略させて頂きました。

11の研究室の中から鈴木研究室を選んだ理由とは?

電気工学科を志望された理由を教えてください。

青沼:高校のときに、特に「これ!」というものはなかったのですが、得意科目などを考えて、漠然と工学部系を選びました。その中で機械と電気で迷っていたのですが、電気の方が幅が広く、色々な分野へ進めるという情報を聞いたので、電気を志望しました。

浅野:私は、兄が工学系だったので、元々、工学部に親近感を感じていました。その中でも、電気は身の回りに色々な電化製品があって、大きなニーズがあると考えて、電気工学科へ進むことにしました。

鈴木研究室へ進まれた理由を教えてください。

青沼:秋田大学工学資源部は、11の研究室があるのですが、1年生と3年生のときに11研究室を見学できる授業があります。そこで、大学1年生のときに鈴木研究室を知りました。鈴木研究室は、医療や環境貢献など、あまり電気工学ぽくない研究をやっており、面白そうだなぁと1年生のときから思っていました。

浅野:私も、青沼さんが言った研究室見学がきっかけです。鈴木研究室で、電子部品の積層チップコンデンサの実物を見せてもらいました。すごく小さかったのですが、その中に、いろいろな情報がつめ込まれているということを聞いて、興味を持ちました。電子の分野ですが、鈴木研究室でこの研究をやっていると聞いて志望しました。

重金属などで汚染された土壌から、電気で汚染物質を除去する

青沼さんの研究内容を教えてください。

青沼:重金属によって「土壌汚染」が引き起こすことが報告されています。産業排水や産業廃棄物などから発生する重金属が土壌を汚染し、地下水や農畜産物などに被害を与えます。最悪の場合、動物や人間にも被害を及ぼします。

日本だと、明治時代の足尾銅山事件などが有名ですね。

青沼:そうです。そのように汚染された土壌を動電現象(電気分解、電気泳動など)によって浄化しようとするのが私の研究です。

具体的にどのように行うのですか。

青沼:簡単に言うと、土壌に電極を挿入し電極間に直流電圧を印加します。そうすることで生じる動電現象を利用し、電極に金属イオンを引き寄せて土壌中から回収するという方法です。

動電現象による汚染浄化は、現在のやり方と比べてどのようなメリットがあるのですか。

青沼:現在の土壌回収処理は、バイオテクノロジーや薬品を使用することがメインです。ただ、これらは、コストも手間もかかります。また、薬品だと新たな問題が生じることも考えられます。動電現象による汚染浄化は、土に電極を挿入して電圧を加えるだけなので、低コストで大量に土壌を浄化できると期待されています。

この研究は実用化されているのですか。

青沼:いや、まだ研究段階で実用化はほとんどされていません。海外では一部の地域で実用化されたそうですが、日本では私の知る限り、されていないと思います。この研究は、鈴木研究室独自の研究で、私は先輩から受け継ぎました。

実用化へ向けての課題は何でしょうか。

青沼:どのような条件下において、この実験が最適に行われるか、もっとシミュレーションする必要があります。印加する電圧の高さや大きさ、土壌の電極範囲などで結果は色々と変わってしまうからです。

電気で土をキレイにできるとは知りませんでした!どのように研究されているのですか。

青沼:基本的には、ほとんどが実験です。普通に、市販の土や液体を買ってきて、行っています。そして、レポートを作成してデータ化します。初めて「土の中でイオンが動く」データがとれた時は感動しましたね(笑)。

CVケーブル/電力ケーブルを守るための研究

浅野さんの研究内容を教えてください。

浅野:地中送電用のCVケーブル(※)という電力ケーブルがあります。このCVケーブルですが、最近、"水トリー"という被害が報告されています。簡単に言いますと、水トリーとは、ケーブルの絶縁層内部に侵入した水分が原因となって、樹枝状に劣化して絶縁破壊が生じる現象のことを言います。私は、この水トリーによるCVケーブルの劣化を最適に診断する方法を研究しています。

CVケーブルが劣化したら、電力系統は大変なことになりますね。

浅野:はい。そこで、水トリー劣化度合いの大きいCVケーブルから、順次、新しいケーブルへ交換しようとしています。では、水トリーをどうすれば検出できるのか、その最適な診断方法として、損失電流法(※)というものが注目されています。私は、3次元構造の水トリーの等価回路モデル(※)を作成して、損失電流法をシミュレーションしています。

なぜ、損失電流法は、水トリー劣化診断に最適なのですか。

浅野:損失電流法は、特別高圧(110-66kV)のCVケーブルに適用できます。また、ケーブル内の水トリーが未貫通であっても検出の可能性があるからです。

この研究は、具体的にどのように行われるのですか。

浅野:PCによるシミュレーションです。先輩から受けついだデータに改良を加えてさらに良いものにしていくのが、私の研究です。自分が組んだプログラミングが、思い通りに作動したときは痛快ですね。

※CVケーブル 詳細は電気工学用語集

※損失電流法 損失電流中に含まれる高調波成分を用いて、非破壊で絶縁性能を評価する方法。

※等価回路 複雑な回路を、それとほぼ同等に簡易的に置き換えた電気回路。

医療、環境、エンジニアリングデザイン、電気工学の可能性を追求

鈴木先生から直接、研究について教えてもらいます。

研究室はどんな特徴がありますか。

青沼:現在、学生26名、教職員6名、あわせて32名で、秋田大学の中でも特に大きな研究室だと思います。いつもにぎやかでうるさいですよ(笑)。

浅野:留学生も毎年、必ず入ってきます。今年も学部4年生に3名ほど加わりました。マレーシア、バングラデッシュ・・・、東南アジアの方々が多いですね。留学生は皆さん、日本語も英語も、とてもうまいです。自分の英語力が悲しいですね(苦笑)。

青沼:先生にも外国の方がいらっしゃいます。カビール ムハムドゥル先生というバングラデッシュ出身の方です。

主に実験で研究を行う、メンバー。

研究分野も多彩だと聞いています。

青沼:鈴木研究室は、大きく分けて3つの研究テーマがあります。一つは、私がやっている環境に関連したテーマ。二つめは、浅野君がやっている、エンジニアリングデザイン分野。三つめが、生体福祉工学です。まわりの研究も気になりますし、刺激を受ける環境ですね。

主にPCによるシミュレーションで研究を行う、メンバー。

生体福祉工学分野の方たちは、どのような研究をやっているのですか。

青沼:代表的なものだと、「歩行環境シミュレータに関する研究」です。"歩行環境シミュレータ"とは、高齢歩行者が安全に車道横断を体験できるように、バーチャルリアリティ技術とモーションキャプチャ技術を利用した、歩行者用の車道横断体験装置です。インキュベーションセンターという最新設備がある棟で研究をやっていますが、テレビなどマスコミにも取り上げられています。

歩行者用の車道横断体験装置

設備も充実していますね。

青沼:そうですね。実験からパソコン設備まで、基本的に何でも揃っています。最近では、最新の3Dプリンターを導入しました。これは、三次元のオブジェクトを造型できるプリンターで、強度に優れたABS樹脂の3Dモデルを作製することができます。はじめて見たときは驚きましたよ。

「今、私が手にもっているオブジェクトは、3Dプリンター(奥)で製造しました」鈴木先生

研究室のコミュニケーションについても教えてください。

浅野:全員で集まるのが年に3回か4回ぐらいです。春の新入生の歓迎会と、2月の中間発表のお疲れ様会、冬の忘年会、これらの行事は必ずやりますね。

青沼:OBの方が、時々いらっしゃいますので、就職活動の参考になる話しをよくしてくれます。先週も1人、卒業生がいらっしゃっていました。気軽に先輩たちが立ち寄れる環境ではないでしょうか。

学会はいかがですか。

青沼:学会は最低でも1人1回は行くように義務づけられています。私は、昨年9月、沖縄で開催された電気学会のA部門大会へ行きました。

浅野:私は、一度、秋田で開催された「第41回 電気電子絶縁材料システムシンポジウム」へ参加しました。次は、3月に大阪で開催される電気学会全国大会へ参加する予定です。

平均的な1日のスケジュールをお教えください。

浅野:10時~17時までが一応、鈴木研究室におけるコアタイムです。この時間帯はしっかりと研究室で研究をやれば、あとは個々人の自由です。

青沼:時間の使い方は人それぞれですね。夜遅い人もいれば、コアタイムだけですべてを完結させる人もいます。

戦後最悪の就職氷河期を乗り超えた!

電気工学を学んでよかったと思うことを教えてください。

青沼:私の場合ですと、就職につながったことですね。電力会社へ就職しました。

就職状況は、現在、戦後最悪とまで言われていますが、実際はどうでしたか。

青沼:就職活動がはじまる、昨年の3月は、私も含めて全員不安でいっぱいでした。みんな必死になって就職活動をやった結果、鈴木研究室の院生(2年生)7名が、全員就職できたので良かったです。大変だったことは大変でしたが。

浅野さんはいかがですか。

浅野:私は、理論的に物事を考えられるようになったことですね。常に、出てきた結果に対して原因を考えるように鈴木先生から言われていて、理論的に物事を考えるようになったと思います。

最後に、将来の夢や目標を教えてください。

青沼:電力会社へ就職することは決まっていますが、まだ、どんな仕事をやるのか決まっていません。しかし、どんな仕事でも、電力会社は地域の人達の生活を支えていくことには変わりはありません。みなさんの生活を支える人になりたいです。ただし、その前に、私個人としては、ひとり暮らしをはじめて、自立した社会人になりたいと考えています。

電力会社を意識されたのはいつからですか。

青沼:就職を意識した、大学3年のときからです。電気工学は、製造系、ソフトウェア系、インフラ系など、幅広い業界へ関われる分野ですが、自分はもっとも多くの人に役に立つことができるインフラ系の仕事を選びました。

浅野さんはいかがですか。

浅野:青沼さんと同じように、電力系の会社を志望しています、環境やエネルギー問題に対して、取り組めたらいいなと思っています。鈴木研究室へ来て、その思いはすごく深まりましたね。

おふたりとも大変ユニークな研究で、とても興味深いお話でした。本日はありがとうございました。

鈴木 雅史  教授  (すずき まさふみ)

国公立/秋田県
秋田大学 工学資源学部 電気電子工学科

鈴木 雅史 教授 (すずき まさふみ)
当研究室は、現在秋田大学長となられた吉村昇先生の後を継いで2008年開設。トラッキング劣化やトリーイング劣化の研究では古くから実績があり、最近では歩行環境シミュレータの開発や、手指用モーションキャプチャ装置の開発などにも精力的に取り組んでいます。2008年度は、スタッフ4名、大学院生19名、学部生10名の、総勢33名が活動しています。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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