放送事故は絶対に起こさない。強い覚悟でテレビ局を支えたい。

2024年7月31日掲載

子どもの頃から好きだったテレビに関連した仕事がしたいと考えて田口真大さんが入社したのは、テレビ局で使われる装置に大きな実績を持つ日本電気(NEC)。現在は念願どおり、安定したテレビ放送を支える装置の開発に携わっていらっしゃいます。電気工学を学んだ思い出やお仕事のやりがいなどについて、お話を伺いました。

プロフィール

2013年4月
青山学院大学 理工学部 電気電子工学科 入学
2017年3月
同上 卒
2017年4月
青山学院大学大学院 理工学研究科 電気電子工学コース入学
2019年3月
同上 修了
2019年4月
日本電気株式会社入社
2019年5月
社会基盤BU 放送・メディア事業部 第三技術部 配属
2023年4月
クロスインダストリーBU クロスインダストリー共通製品統括部
第一共通開発グループ 第二メディア開発チームに異動し、現在に至る

※2024年6月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

電気を学べば活躍の場は広がる

電気工学を学ぼうと思った理由は何でしたか。

田口:高校時代に進路を決める際、もともと理系が得意だったこともあって、電気や情報、化学、機械などの中からどれを専攻しようかと考えました。その中で電気は我々の生活に身近で、誰でも使うものであり、それだけ将来の活躍の場も広いのではないかと思って、電気工学の道を選びました。両親も私の思いに賛成してくれました。

学生時代に取り組んだ研究について教えてください。

田口:学部の4年生から「低損失基板」の研究に取り組み、大学院に進学してからは「ホーンアンテナの通信精度向上」の研究も行いました。一時期は同時に2つの研究に携わっており、とても忙しかったです。「低損失基板」の研究は途中で後輩に引き継ぎましたが、同時並行で2つの研究に取り組むのは、研究室でも珍しいケースだったようです。

研究活動の経験が仕事にも活きる

それぞれの研究内容を教えてください。

田口:まず「低損失基板」の研究ですが、これは電子機器に使われるプリント基板の信号伝達を安定させることを目的としたものでした。研究は企業の方と共同で行い、結果的に既存の基板と比較して損失が30%少ない低損失基板の開発に成功しました。1000枚以上ものサンプル基板の測定を、一日中、何度も繰り返したことが印象に残っています。

「ホーンアンテナの通信精度向上」についてはいかがでしたか。

田口:ホーンアンテナとは、簡単な構造で高い効率で電波を飛ばすことができるアンテナです。しかしアンテナの向きによって通信精度が著しく劣化する恐れがあります。そこで開口部にスリットを装荷する構造を提案し、向きに依存しないホーンアンテナを実現しました。

研究で印象深かったのはどんなことでしたか。

田口:教授、助教授、先輩と多くの方のアドバイスをいただくことで研究を進められました。周囲の人を巻き込むことの大切さは、社会人としての仕事にも通じることです。また、学会発表の機会をいただいたこともいい思い出です。準備の段階でPowerPointを作成したり、プレゼンテーション内容を工夫したりといった経験も、今の仕事に活きています。

どのような研究室でしたか。

田口:毎日終電ギリギリまで仲間とともに研究に打ち込みました。もちろん研究だけでなく、ゲームやサッカー、キャッチボールなども楽しみました。特に仲のよかったメンバーとは今も時々集まって、一緒にお酒を飲んで盛り上がっています。

大好きなテレビのために

就職活動を振り返ってください。

田口:電気を学ぶと将来の選択肢が広がると考えたとお話ししましたが、実際に就職活動では電力会社やメーカー、通信キャリアなど幅広い業界を検討しました。その中で改めて自分自身を見つめ直して、特にテレビが好きだということに思い至りました。一人っ子だったこともあって私は子どもの頃からテレビを見るのが大好きで、今もテレビでスポーツ観戦を楽しんでいます。そうしたことからテレビに関連した仕事をしたいと思うようになりました。

日本電気に入社された理由を教えてください。

田口:日本電気は放送業界で使われている装置を数多く手がけており、特に信号伝送装置ではトップの実績を誇っています。ものづくりを通じて、社会インフラとしてのテレビ放送を支えたいと考え、当社に入社しました。

インフラであるテレビを技術力で支える

現在のお仕事を教えてください。

田口:「多重化装置」「擬似同期化装置」「多重化信号同期装置」など、テレビ局が安定した放送を行う上で不可欠の装置の開発を行っています。これらの装置はどのテレビ局にも必ず設置されています。例えば「多重化装置」は、映像・音声・データ放送などの信号を一つにまとめる装置で、万が一、運用中に何らかの不具合が発生すると、重大な放送事故につながりかねません。

非常に責任の重いお仕事ですね。

田口:もし装置に不具合があって、例えば放送が乱れでもしたら、大問題になります。そうしたことが絶対に起きないよう、開発には万全を期しています。当社の製品は日本中のテレビ局で使用されており、間もなく相応の寿命を迎えるものも多いので、私はその後継機を開発しています。現在開発を担当している装置は、3、4年後には実際にテレビ局で使用されることになると思います。

当たり前のようにテレビ番組が放送される、その当たり前を支えていらっしゃるんですね。

田口:そういうことです。インフラであるテレビ放送が途切れないように支えているという実感は、一番の誇りです。

印象的だったエピソードを教えてください。

田口:現在私は入社6年目ですが、昨年から装置開発のリーダーを任されています。上司からは開発の進め方について具体的な指示はなく、私の裁量に一任されています。仕様検討やデジタル回路設計、ソフトウェア設計など、自分の業務に携わりながら全体の進捗管理、タスク管理なども行うことに、とてもやりがいを感じています。

こちらも責任の重いお仕事ですね。

田口:ええ。実はチームの中で私は下から2番目の若手なんです。大先輩に指示を出すことはプレッシャーではありますが、それだけ会社に期待されていると思っています。入社したときは大学ではまったく学んでこなかった分野の仕事であるため、知識がゼロの状態でのスタートとなりました。上司や先輩方の手厚いフォローのおかげで着実に成長し、今はリーダーとして任されていることを思うと、恩返しのためにもぜひ期待に応えなければという思いがわいてきます。

田口様が開発に関わった疑似同期化装置。

放送業界をサポートする

お仕事の中で、電気工学を学んできてよかったと感じることは何ですか。

田口:学生時代に学んだ電気製品の知識やアナログ回路、デジタル回路についての基礎知識は、ハードウェアの設計や評価に非常に役立っています。また、基礎的なプログラミングについて学んでいたことは、不具合発生時のソースコードの理解につながっています。

今後の目標を聞かせてください。

田口:まずはプロジェクトのリーダーとして、現在の仕事をさらに深く理解し、専門知識を身に着けていきたいと考えています。まだまだ知識は不十分だという実感があるので、勉強を続けていかなくてはなりません。そして専門家としての自分を磨き、放送業界をサポートできる人材になっていくことが目標です。

広くて深いところが電気工学の魅力

振り返ってみて、改めて電気工学の魅力について、どう感じますか。

田口:電気はあらゆる分野で利用され、この先も絶対に必要な存在です。電気工学を専攻しておくと、社会の様々な場面で必要とされ、活躍できることは間違いありません。電気工学を学んでおくことは、自分の将来にとって必ずプラスになると思います。

電気工学を学ぶ皆さんに、メッセージをお願いします。

田口:私は大学、大学院と通算6年間、電気工学を学びました。しかし、まだほんの少ししか理解できていないというのが正直な感想です。学べば学ぶほど、さらに知りたいことが増えていく、そんな広さと深さを持っているのが電気工学です。本当に面白い学問だと思います。

ありがとうございました。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

この記事に関連する電気工学のキーワード

  • 電力機器
  • 電気利用

バックナンバー

すべて表示する

5件だけ表示

サイトの更新情報をお届けします。

「インタビュー」「身近な電気工学」など、サイトの更新情報や電気工学にかかわる情報をお届けします。

メールマガジン登録


電気工学のヒトたち

無題ドキュメント