逆風の中でも志を高く持ち、研究活動に打ち込みたい。

2020年7月31日掲載

産業や研究の第一線で活躍中の人材を多数輩出してきた香川高等専門学校。充実した研究環境が自慢の高等専門学校です。今回はこちらの電気情報工学科「漆原・吉岡研究室」の皆さんにお話を伺いました。新型コロナウイルスの感染予防対策で遠隔授業対応を余儀なくされた時期でしたが、皆さん前向きな姿勢で学びを続けていらっしゃいました。

※2020年6月現在。文章中の敬称は省略させていただきました。なお、取材はオンラインで行いました。

父の影響で電気工学の道に進む

まず、電気工学を志望された理由についてお聞かせください。脇さんからお願いします。

:父がシステムエンジニアなんですが、幼い頃、その職場をのぞいたことがありました。そのとき、パソコンなどを初めて目にして、驚いたことが記憶に残っています。これが電気の分野に興味を持った原点だと思います。

お父様の会社を見学されたのですか?

:ええ。仕事中ではなくて、休日でした。確か父が会社に忘れ物をしたので取りに行くついでに一緒について行ったのだと思います。

二川さんはいかがでしょう。

二川:私は子供の頃から大人になったら人の役に立つ仕事がしたいと思っていました。社会の発展には電気工学の技術が大きく貢献しており、人々の生活に電気は不可欠です。だから私も電気工学を学ぶことで、社会で活躍するエンジニアになりたいと思いました。

電気の魅力に触れたような思い出はありますか。

二川:電気で動くレーシングホビーのキットを組み立てたことがあります。自分で作ったものが、目の前で動いたのにはとても感動しました。

では、川柳さん、お願いします。

川柳:はい。私も脇さんと同じように父がきっかけです。というのも父は電気に関する仕事をしていて、電気工作などをする姿を見ているうちに自分も電気工学に興味を持つようになったんです。数学や化学など理系科目が得意だったことも理由の一つです。

お父様の影響が大きいのですね。

川柳:実は父も香川高等専門学校の卒業生なんです。

親子二代で同じ学校で勉強されたわけですか。お父さんもさぞ喜んでいらっしゃるでしょうね。

川柳:ええ、ここを教えてくれたのは父ですし、早い時期から専門知識を学ぶには高等専門学校がいい、とも勧めてくれました。

他のお二人は、なぜ高等専門学校に進学されたのですか。

:私の中学から高等専門学校に進むのは1クラスに1人か2人と少数なんですが、私は就職に強いということに惹かれて高等専門学校に進学しました。

二川:当初私は普通高校に進んで大学の工学部を目指そうと考えていました。しかし、中学3年の時に進路指導の先生に相談したら、それなら高等専門学校に進んだ方が大学受験の準備で時間を取られることなく電気を学べるとアドバイスされ、高等専門学校に進学することに決めました。

少子高齢化や環境問題などの社会課題を見すえて

では皆さんの研究内容について教えてください。脇さんからお願いします。

:私は「熟練技能の再現」を目的とした研究を行っています。近年では少子高齢化に伴って熟練技能者の技術を受け継ぐ人が減ってきています。そこでロボット等にその技術を活かすため、熟練技能を再現することに取り組んでいます。

脇さんが研究で使用する機器(ACサーボモータ駆動ボールねじシステム)

社会的に非常に重要なテーマに取り組んでいらっしゃいますね。

:はい、それが一番のやりがいです。現在は、熟練技能を再現する際に生じる摩擦の影響を低減するため、ディザ手法についてシミュレーションを用いて研究しているところです。例えば、板金加工の“へら絞り”という技術を再現しようとするとモーターの摩擦が邪魔になるので、その影響を低減するわけです。今はパソコンを使ったシミュレーションの段階なので、今後は実機を用いた研究に進みたいと考えています。

ありがとうございます。二川さんはどのような研究に取り組んでいらっしゃいますか。

二川:私はプラズマアクチュエーターの研究を行っています。近年、宇宙・航空の分野では燃料の使用削減などを通じたCO2削減が大きな課題となっており、そのためには空気抵抗を軽減することがポイントとなります。そこで空気抵抗を減少させる流体制御デバイスとして注目されているのが、プラズマアクチュエーターです。プラズマアクチュエーターとは絶縁体に高電圧を印加した際に生じるプラズマの発生量を制御することで、空気抵抗の発生原因である“流れの剥離”を抑制するものです。私はそのモデルの構築を目指しています。

とても先進的な研究というイメージですね。

二川さんが研究に使用する機器(プラズマアクチュエータ)

二川:今は文献を読み込んでいる段階ですので、まずは理論をしっかりと頭にたたき込みたいと考えています。

社会的貢献度の高いテーマに挑む

ありがとうございます。では川柳さん、研究について教えてください。

川柳さんの研究に使用する機器(ロボットアーム)

川柳:私はロボットアームの力覚制御の研究に取り組んでいます。近年は食品・化粧品・医薬品のいわゆる三品業界で、人手不足を背景として、協働ロボットの導入が注目されています。協働ロボットとは人と同じ空間で安全柵なしで動くロボットですが、安全のためにもより安定した制御系が必要です。一方でロボット自体の小型化や軽量化に伴ってロボットアームの弾性振動の影響が大きくなっています。私はこの問題を解決するため、センサを用いた力覚制御系を開発したいと考えています。

他のお二人と同様、川柳さんも社会的貢献度の高いテーマに取り組んでいらっしゃいますね。

川柳:先輩の研究を見て興味を持ち、引き継ぎました。先輩がロボットアームの実機を動かしている様子を見て「すごい!」と感動したので、早く自分も実機を動かしてみたいです。

二川:私も先輩がプラズマアクチュエーターの研究に取り組んでいるのを見たことがきっかけでした。構造体はシンプルなのに奥の深い研究であることに、大きな魅力を感じました。

オンラインミーティングで研究の進捗を報告

川柳さんが実機を動かしたいとおっしゃいましたが、こちらの研究室には実機が豊富に置いてありますね。

川柳:ええ、ロボットアームやモーター、発電機など、様々な実機が置いてあります。パソコンでシミュレーションしながら実際にロボットアームを動かせるんです。

二川:他の研究室より実機は多いですね。そのため、実機を使いながら密度の濃い研究ができる点が大きな魅力です。実機の置いてある部屋とパソコンを使ってデスクワークする部屋が分かれていて、広々としているのも、嬉しいですね。

:パソコンも一人ひとりに貸し出しされており、とても恵まれていると感じます。

今は新型コロナウイルスの影響で研究も思うように進められないかと思いますが、どのように過ごしていらっしゃいますか。

:基本的には自宅で文献を読んで勉強し、週に一度、オンラインで研究の進捗報告を行っています。緊急事態宣言が解除されてからは、週に一度、研究室に立ち寄るようになりましたが、分散登校ですので全員が一堂に集まるのは、依然としてオンラインだけですね。

二川:プラズマアクチュエーターを研究しているのは私一人なので、登校も一人です。先生には一対一で指導していただいています。

今回のインタビューはオンラインで実施させていただきました。

オンラインのミーティングも、パソコンが貸し出されているおかげで、スムーズでしょうね。

吉岡先生のオンライン授業風景

川柳:アップロードしていただいた授業の動画を何度も見返して復習できるのが、オンラインのいいところですね。

二川:登下校の時間が節約できるのもメリットです。

:自分でスケジュールを組み立てて勉強できるのがいいですね。ただ、生活のリズムが乱れないように、授業の予定がない日でも朝はちゃんと起きるようにしています。

川柳:私も毎朝6時半には起床しています。

二川:私は時々二度寝してしまい、10時頃起きることもあります。ちょっと意志が弱いのかと反省しています。

川柳:オンラインにはオンラインならではのメリットがありますが、やはり実機を触りながらの研究もしたいので、早く普通に研究室へ足を運べるようになって欲しいと思います。

好きな部活動にも打ち込む

研究以外で打ち込んでいるのはどんなことですか。

:バスケットボールが大好きで、本科の時はバスケットボール部に所属していました。専攻科には部活がないので、今は社会人のバスケットボールチームに所属し、週に2回ほど、練習しています。あとは居酒屋と結婚式場でアルバイトをしているんですが、今は感染症対策の影響で一時お休みしています。

勉強以外でも新型コロナウイルスの影響は大きいのですね。他のお二人はいかがですか。

川柳:私は3年生までテニス部に所属して、大会に向けて練習に打ち込んできました。

二川:私は宇宙開発研究部という部活に所属しています。ここでは気象衛星関連の機器の製作も行っており、昨年は周囲の環境から熱中症の危険度を計算して通知してくれる装置を開発しました。コンテストもあって、先輩が優勝したこともあるので、ぜひ自分たちも挑戦したいと考えています。

高い専門性で社会に貢献する人材に

電気工学を学んでいてよかったと思うのはどんな点ですか。

:身近にある事象がどのような仕組みで起きているのかを理解できるようになりました。例えば電子レンジの原理なども、電気工学を学んでいるおかげで理解できます。

二川:私も同じです。電気に関する現象を理論的に理解できるようになったのは、電気工学を学んでいたからだと感じています。変電所の仕組みなど、相互誘導の現象を習ったことで、なぜ変圧器によって電圧を変化させられるのかということが理解できました。また、隣接分野の電子工学などにも触れるきっかけになり、自分の関心がずいぶん広がったと感じています。

川柳:私も自分の視野が広がったと感じています。電化製品の動きや家庭に電気が届く原理など、しっかりとしたイメージが持てるようになりました。あとは、就職に強いということですね。私は進学志望なので就職活動は行っていませんが、防犯カメラ関係の企業でインターンシップを体験したときは、高い専門性を期待されていると実感しました。

二川:同感ですね。同期の就職志望の仲間の話を聞いていると、電気工学を学んでいる学生は多くの企業から求められているように感じますし、実際、早めに内定をもらったという仲間がたくさんいます。

:私の周りの仲間も、ほとんどが推薦で内定を獲得しています。電力会社に決まったという仲間も何人もいます。電気工学出身者は就職に強いと実感しました。また、今私たちは学校に行けないのでオンラインでの学びが中心ですが、今回のことを契機に、これからはオンラインでの学習や仕事が当たり前のことになっていくと感じています。今まで以上に効率よくオンラインで作業が進められるよう、技術者の活躍が求められるのではないでしょうか。今後、社会から私たち電気工学の専門家に期待されることは、ますます大きくなっていくような気がしています。

では最後に皆さんの夢を聴かせてください。

:私は専攻科を卒業したら、就職したいと考えています。さっきも言ったようにバスケットボールが大好きなので、バスケットボールの試合のビデオ判定で使われる機器の開発などに携われたら、というのが将来の夢です。

二川:私は本科を終えたら大学に編入し、その後大学院に進学する予定です。そこで研究を続け、企業の開発職に進むか、研究者として活躍するか、考えたいと思います。どんな道に進むにせよ、社会に貢献できる人材を目指したいですね。

川柳:私は本科を卒業後は専攻科に進み、その後はさらに大学院に編入したいと考えています。将来的には電気関連の企業に就職し、高い専門性を発揮できる技術者になりたいと思います。

今日はどうもありがとうございました。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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