これからの新技術を支え、電気の未来をつくりたい

2026年8月31日掲載

齊藤さんは大学で電気工学を学んだ後、電気のすべてに関わりたいという想いで、日本電気協会に入社しました。現在は技術調査室に所属し、消防用設備等の非常電源となるリチウムイオン蓄電池設備の認定業務や、電気設備技術基準の見直し、無電柱化の推進に関する調査検討などに携わっています。電気の「安全」を守る立場から社会に貢献し、業界の魅力発信にも力を入れる齊藤さんに、お話を伺いました。

プロフィール

2004年4月
東京電機大学 工学部 第一部 電気工学科 入学
2008年3月
同上 卒
2008年4月
(一社)日本電気協会入社
2008年10月
技術部配属
2017年3月
技術調査室
2021年11月
総務部
2024年7月
事業推進部
2025年7月
技術調査室 現在に至る。

※2026年6月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

物理の面白さを原点に、電気工学へ進む

大学進学時、電気工学を志したきっかけは何だったのでしょうか。

齊藤:高校は普通科でしたが、理系の中でも物理、特に電磁気学が得意でした。電磁気の部分はテストの平均点が低い中で、100点を取ったこともあります。そこから、理科の中でも「物理は面白い」と強く感じました。

物理が進路を考えるうえで大きな手応えになったのですね。

齊藤:はい。もともと機械を触るのも好きで、家にあった古いラジオを分解したり、ドライバーで何かをいじったりするのが好きでした。ものづくりや、仕組みを知ることに興味があったんです。

勉強として理解するだけでなく、実際に触って確かめるのが好きだったのですね。

齊藤:そうです。数学はものすごく得意というほどではありませんでしたが、理科になると成績が伸びました。目の前の物理現象が数式で表せるところに面白さを感じていました。発電の仕組みも魅力的でしたし、当時は、石油が30年後には枯渇する可能性があると言われていたため、石油だけに頼らない新しいエネルギーが必要になると思っていました。

電気工学の中に、エネルギーの未来も見ていたのですね。

齊藤:はい。電気工学は、電力インフラから電機メーカー、当時普及し始めていたEVまで幅広く関われる分野です。将来の確かな武器になると考え、東京電機大学への進学を決めました。

大学で電気工学を学んでみて、印象はいかがでしたか。

齊藤:やはり数学のレベルは高く、微分・積分にはかなり苦労しました(苦笑)。ただ、実験はとても楽しかったです。電気回路は正直で、線がつながっていないと動かない。その点も含めて、奥深さを感じていました。

夜通しの実験で、太陽電池の測定データを取得

大学では、どのような研究に取り組まれていたのですか。

齊藤:パワーエレクトロニクス研究室で、「太陽光・風力ハイブリッド発電システム」の研究をしていました。太陽光も風力も再生可能で事実上、無尽蔵なエネルギーですが、天候によって出力が変動します。そこで、互いに補い合いながら、より広い範囲で電力供給できる仕組みをめざしていました。

研究はどのように進めていたのですか。

齊藤:当時ご指導いただいた飯田祥二先生と枡川重男先生(お二人とも現・東京電機大学名誉教授)のもとで進めていました。太陽電池と風力発電で発電した電力をDC-DCコンバータなどの電力変換器で整えて安定化させる研究です。

研究の中で、特に印象に残っている出来事はありますか。

齊藤:太陽電池の実測ですね。風力はシミュレーションデータを使いましたが、太陽電池は研究室でパネルを購入し、夜間に実験を行いました。

夜に太陽電池の実験ですか!

齊藤:はい(笑)。太陽光の代わりに、イカ釣り漁船で使うような強力な照明を当てて、研究室の仲間と夜通しデータを測定したことが、今では良い思い出です。

研究以外で、研究室での思い出はありますか。

齊藤:研究室に泊まることもあり、同じメンバーで飲んだり、研究室内で焼肉パーティーをしたりしたのが楽しかったですね。研究以外の時間も含めて、学生時代の大切な思い出です。

当時の先生との関わりも印象深いのでしょうか。

齊藤:そうですね。枡川先生とは、社会人になった今も仕事でお世話になっています。当時は助教授で、近い距離でいろいろ教えていただきましたし、一緒に飲みに行くこともありました。学生時代の学びとご縁が、今の自分を支えています。

学生時代のつながりは、今でも生きているのですね。

齊藤:はい。テニスサークルにも入っていて、他大学の学生とも活動していました。そこでできた人脈も大きな財産です。研究室もサークルも、自分にとって大切な経験でした。

幅広い電気の「安全」を守る立場に魅力を感じて

就職活動されたときの状況をお聞かせください。

齊藤:大学院には進まず、学部卒で就職活動をしました。ちょうど就職氷河期が終わって売り手市場になっていた頃で、大学3年のころから活動を始め、大手メーカーを中心に応募しました。

その中で日本電気協会へ進まれた理由は?

齊藤:就職活動では、「大学で学んだ知識を活かし、人の役に立つ仕事」を軸にしていました。大学の求人票をきっかけに日本電気協会の会社説明会に参加したのですが、原子力発電所のような大規模設備から家庭用電化製品まで、「電気」に関わる幅広い分野に携われることを知り、惹かれました。

電気に関わる仕事を幅広く見られるのは、確かに魅力ですね。

齊藤:そうです。特定の製品をつくるメーカーではなく、「電気の安全を守る」という中立的な立場から社会に貢献できる点が、自分の理想に合っていると感じました。技術部では、内線規程(※1)をはじめとする民間規格から、原子力や電気用品、サイバーテロ対策に関する内容まで幅広く扱います。変電所や給電指令所のシステム制御がうまくいくよう、基準を整える仕事でもあります。

かなり幅広いですね。なかなか一言では説明しづらい仕事かもしれません。

齊藤:ええ(笑)。家族に「何をしているの?」と聞かれても、すぐには答えにくい仕事です。でも、メーカーや電力会社、大学の先生まで、いろいろな立場の方と接点を持てるのは、この仕事ならではの面白さでした。

(※1)内線規程とは電気の安全に関する民間自主規格のこと。

消防用設備の認定から技術基準の見直しまで、電気の安全を支える

齊藤さんが担当したパンフレット「キュービクル式非常電源専用受電設備認定制度のご紹介」。

現在の仕事内容について、お聞かせください。

齊藤:現在は、昨年から始まった消防用設備等の非常電源となる、常用・非常用兼用のリチウムイオン蓄電池設備の認定業務に携わっています。加えて、経済産業省からの受託事業として、「電気設備技術基準の解釈(電技解釈)」の見直しや、無電柱化の推進に関する調査検討業務も担当しています。

認定業務は、具体的にどのように進めるのでしょうか。

齊藤:消防設備等の非常電源は、火災のときにも電源が切れないようにするための大切な仕組みです。人命に関わるため、一定時間しっかり電力を保てることが求められます。そのため、総務省消防庁の登録認定機関である私たちが認定基準をつくり、製造者から申請された設備がその基準に合っているかを審査しています。

非常電源専用受電設備の現場審査の様子。手前のスーツ姿が齊藤さんです。

制度そのものを支える役割なのですね。

齊藤:そうです。常用・非常用兼用のリチウムイオン蓄電池設備の認定制度は新しい取り組みです。これまでのリチウムイオン蓄電池設備の認定制度は非常用のみで、常用と非常用を兼ねるものはありませんでした。そこで、大学の先生、関係団体やメーカーの方にご協力をいただき認定委員会を立ち上げ、認定基準等をまとめた認定の手引を作成しました。この基準を基に、申請された図面等の書類を審査したうえで、製造工場にて実際の設備に対して現場審査を行います。

製造工場で蓄電池設備の防水性能を確認する様子。

図面だけでなく、現場も確認されるのですね。

齊藤:はい。私は事務局という立場ですが、事務局の仕事は、デスクワークだけではありません。新しい認定基準を作り上げる一方で、自ら製造工場に出向いて安全性を確かめる現場審査も行います。入社後最初に担当したのもキュービクル(※2)の認定で、先輩に同行しながら経験を積んできました。

(※2)キュービクルとは、電力会社から高圧で電気を受電するための機器一式を金属製の箱に収めたもの。

条文一つひとつが巨大なインフラを守っている

現在の仕事に携わっている中で、一番印象に残っているエピソードをお聞かせください。

齊藤:もっとも印象に残っているのは、経済産業省の受託事業として取り組んだ「電気設備の技術基準の性能規定化」に関する調査業務です。日本の電気安全の根幹を支える電技解釈の全条文を総点検するような、大きな仕事でした。

全条文の見直しですか!それはかなりの作業量ですね。

齊藤:はい。朝から晩まで分厚い条文と向き合いながら、一つひとつ丁寧に見直していく作業でした。大変でしたが、最新技術を安全に法令へ反映させるための、とても重要な仕事でした。

技術の進歩と安全の両立を考える仕事ですね。

齊藤:そうです。国の基準として数値などで詳細に定めすぎると、かえって新技術の導入を妨げてしまいます。そこで、国が定める最低限の基準と、民間の自主規格との役割にメリハリをつけ、柔軟に対応できるようにする。それによって、最新技術をスピーディーに現場へ導入できる仕組みを整える。それが性能規定化の考え方です。

なるほど。机上だけでは分からない部分も多そうです。

齊藤:はい。実際に発電所や変電所へ足を運んだとき、そのスケールの大きさに圧倒されました。条文の一つひとつが巨大なインフラを守っているのだと実感し、責任の重さを肌で感じました。

電気理論の基礎が、認定業務でも情報発信でも支えに

学生時代に身につけた電気工学の知識や経験は、仕事の上でどのように活きていますか?

現在の認定業務や規格基準の検討では、電気設備を安全に運用するために、適切な電線の太さを算出する場面があります。そうしたとき、大学で学んだ電気理論が基礎になっています。基礎があるからこそ、制度や基準の意味を理解できるのだと思います。

やはり大学での学びが、そのまま仕事につながっているのですね。

齊藤:はい。総務部にいたときには、電気業界の魅力を発信するWebメディア「Watt Magazine」の運営にも携わっていました。電気工事士や電気主任技術者に取材する際、専門的な内容を一般の方にも分かるよう伝える必要があります。

専門性を保ちながら、分かりやすく伝えるのは難しそうです。

齊藤:そうですね。でも、電気の基礎知識があったからこそ、本質を外さずに噛み砕いて説明できました。閲覧数が伸びないことや、インタビュー先が見つからないことなど苦労もありましたが、技術屋としての視点を持ちながら発信に関われたのは貴重な経験でした。4年ぶりに技術部門へ戻った今も、その経験や出会った人とのつながりは生きています。

今後はどのような仕事に携わりたいですか。

齊藤:私は根っからの「新しいもの好き」なので、今後も新技術の認定や調査などの実務に携わっていきたいです。新しい制度や仕組みをつくる仕事は大変ですが、社会の変化をいち早く感じられる面白さがあります。

これまでのご経験ともつながっていきそうですね。

齊藤:はい。加えて、電気業界の魅力を発信し、次世代の担い手を増やすことにも力を入れたいです。日本電気協会は業界唯一の電気系総合団体として中立的な立場にあるので、その強みを生かしながら、業界全体の活性化に貢献していきたいですね。

圧倒的な将来の選択肢と社会からの信頼が、電気工学を学ぶ魅力

今振り返って、電気工学を学んで良かったと思うことをお聞かせください。

齊藤:電気工学の魅力は、「将来の選択肢の多さ」と「社会からの信頼」だと思います。どの産業でも電気の専門家は必要とされ、就職の面でも心強い学問です。

たしかに、電気はどこでも必要とされますね。

齊藤:はい。電気がないと社会は成り立ちませんし、学ぶことで感電や火災の仕組みも理論的に理解できます。安全意識が高まるだけでなく、周囲にも電気の正しい扱い方を説明できるようになります。

知識がそのまま安全につながるわけですね。

齊藤:はい。電気の仕事は責任が大きい分、信頼も厚いです。「自分がそこまでやっていいのか」と自問する場面もありますが、それだけ期待されているということ。そこに電気工学出身者ならではのやりがいがあると思います。

電気工学系学科の学生、また進学や就職を控えた学生へ一言お願いします。

齊藤:在学中に、できるだけ電験(電気主任技術者試験)の勉強を進めておくのがおすすめです。就職後はまとまった勉強時間を取りにくくなりますし、理論や機械も学生のうちのほうが身近に感じやすいと思います。学生時代の学びは、そのまま仕事につながります。

学生時代の学びは、やはり大きいですね。

齊藤:はい。学生のときにしか取れない時間を大切にしてください。また、インターンシップなどがあれば積極的に参加し、現場や人に触れてみることも大切です。私自身、社会人になってから「こんな仕事があるのか」と気づくことが多くありました。電気工学系学科出身の皆さんの今後の活躍を期待しています。

本日は貴重なお話をありがとうございました。電気の安全を守りつつ、業界の未来を見据えた齊藤さんの思いがよく伝わってきました。今後ますますのご活躍をお祈りします。

※インタビューへのご意見・ご感想につきましては、こちらへお寄せください。

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