情報科学の知見を活かして電力業界のDX化に貢献したい。

2022年7月29日掲載

今回ご登場いただく葛西さんは電気工学ではなく、情報科学を学ばれた方です。「なぜITの専門家が電力会社で」というのは自然な疑問ですが、その理由を葛西さんは丁寧に教えてくださいました。同時に電気工学の魅力とともに、さまざまな分野の専門家の活躍が広がっている現状についてもご紹介いただきました。

プロフィール

平成18年3月
釧路工業高等専門学校情報工学科卒業
平成18年4月
釧路工業高等専門学校専攻科電子情報システム工学科入学
平成20年4月
東北大学大学院情報科学研究科システム情報科学専攻入学
平成22年4月
北海道電力株式会社入社 お客さま本部旭川支店配電工事グループ配属
平成24年4月
お客さま本部旭川支店浜頓別営業所配電課
平成27年4月
お客さま本部北見支店配電グループ
平成30年4月
北海道電力ネットワーク株式会社北見支店配電部配電グループ(組織変更)
平成31年4月
本店配電部技術高度化グループ

※2022年6月現在。文章中の敬称は省略させていただきました。

ものづくりへの関心が出発点

どんな子供時代を過ごされましたか。

葛西:もともと機械いじりが好きで、中学の技術の授業でラジオづくりを楽しんだ記憶があります。その関心がやがてロボットやITにまで広がっていきました。当時はインターネットもなく、パソコンも一家に一台とはほど遠い時代でしたが、父の「これからの時代はITが重要だ」という言葉にも影響を受けたと思います。

その後、高専で情報工学を専攻され、大学院にも進みましたね。

葛西:ロボットを動かすためにプログラムを学びたいと思い、プログラマを目指そうと考えて高専に進みました。高専で学ぶうちにプログラムを記述するための基礎となるアルゴリズムや計算量といった情報科学の世界に興味を抱くようになり、大学院に進んで情報科学を専攻しました。

最先端のAIの研究に取り組む

大学院ではどんな研究に取り組まれましたか。

葛西:人工知能における自律分散型システムの機械学習に関する研究をしました。

少しわかりやすく教えてください。

葛西:例えばサッカーでボールやプレイヤーがどのように動いて試合が進んでいくか、あまりに複雑すぎて人間ではとても予測できませんよね。こうした難問を処理するために、複数のシステムが自律的に行動規則やルールを学習するための方法を研究していました。人工知能、つまりAIの分野における当時の重要なテーマの一つでした。

最先端の研究だったのでは。

葛西:ええ、そのように考えていました。今AIの領域では、ディープラーニングなどの革新的なアルゴリズムが考案され、AIの急速な発展を支える重要な技術となっています。当時の私の研究がその一つの種まきになったという思いがありますし、昔一緒に頑張った仲間が世に出て有名になったような、そんな誇らしさも感じます。

研究活動で思い出深いことは何でしたか。

葛西:研究活動そのものは大変に面白かったのですが、唯一、英語には苦労しました。私の英語力が圧倒的に不足していたため、論文執筆の際はいつも遅くまで先輩に付き合っていただきました。ブダペストで開催された国際会議でも、発表そのものは事前の準備のおかげで何とか乗り切れたものの、質疑応答やポスターセッションでは苦労したことを覚えています。

国際会議での発表の様子

故郷の人々のために尽くしたい

情報科学を専攻された葛西さんが電力会社に入社された理由を教えてください。

葛西:一番は自分の専門性を発揮したかったからです。発電プラントや系統制御・管理で機械学習が適用されていることを知り、興味を持ったことがきっかけでした。加えて電力会社ならではの圧倒的な公益性にも強く惹かれました。日々の生活の中で、何をするにしても電気が必要です。電気はすべての基盤であると感じ、そのために自分の専門性を活かしたいと考えました。

北海道電力に決めたのは。

葛西:私が生まれたのは東北地方ですが、学生生活を過ごしたのは北海道ですし、両親の暮らす家も北海道にあります。私にとって故郷といえば北海道ですので、やはり故郷の人々のために尽くしたいという強い思いがありました。

電力会社は葛西さんにとって、いわばアウエーですね。

葛西:その通りです。しかしアウエーだからこそ自分の専門性で期待に応えられると思いました。本格的にAIの技術を取り込んでいく中で、何もないところに水をまくように力を発揮できると考えたのです。

DX化の推進を最前線で担う

入社後どんなお仕事を担当されてきましたか。

葛西:配電部門に配属となり、設備保守、工事設計、お客さま対応など、一通りの配電業務を経験しました。私が研究してきたAIとはまったく違う領域の仕事でしたが、楽しかったです。やりがいがありました。

印象が深かったのはどんなことでしょう。

葛西:やはり停電の復旧ですね。例えば落雷で停電が発生すると、現地へ駆けつけて復旧に当たります。スイッチを入れた瞬間、真っ暗な街の中で家々にパッパッとあかりが灯っていく光景は今でも忘れられません。まさに電力会社の公益性そのものを実感した出来事でした。

現在のお仕事について教えてください。

葛西:現在は配電部門が使用する業務システムの開発・保守を担当しています。いわば社内SE(システムエンジニア)のような存在です。社内外で発生するさまざまな業務要求を理解し、システム開発計画を立てることから始まり、開発着手後は要件定義・基本設計などの上流工程に携わります。開発には相応の期間がかかりますが、想像力を膨らませて柔軟で汎用的な機能を実現することは醍醐味の一つです。

何か例を教えてください。

葛西:例えば新しく家を建てるとき、どれくらい電気を使用するか、どこにコンセントがついて、どういう電気工事が必要になるかという申込を行っていただきます。それに応じて確認や契約と進むわけですが、これまでは一連の業務が紙ベースで行われていました。それを業務効率化のためにWebを使ったシステムに置き換えていきます。

まさに電力会社の最前線におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)ですね。

葛西:そのように認識しています。広大な北海道にはおよそ160万本もの電柱が立っています。老朽化が進んでいないか、不具合が発生していないか、これまでは1本1本、人間の目視によって確認するしかありませんでした。そこにテクノロジーを持ち込むことで業務は大幅に効率化できるでしょう。例えばカメラの搭載されたクルマを走らせて電柱の様子を撮影し、膨大な画像データをAIに解析させることで、早く正確に不具合を抽出できるわけです。AIを駆使したDXは、今後本格的に進んでいくでしょう。

学生時代の研究成果を活かせるときがきましたね。

葛西:はい。私の学生時代にはAI技術の応用や実用化はまだ先だと言われていました。その後ディープラーニングなど革新的な学習アルゴリズムが生まれたことで、飛躍的な成長を遂げています。今ご紹介した電柱の点検のように、設備のAI診断といったスマートメンテナンスなどに私の専門性を発揮できたら嬉しく思います。まさに故郷の公益性のために尽くすのはこれからか本番と感じており、非常に楽しみです。

すべての基盤を支えるのが電力

情報科学の専門家として、電気工学の魅力についてはどう感じていらっしゃいますか。

葛西:プログラムも機械も人々の生活を豊かにしてくれます。その基盤を支えているのは、間違いなく電力です。インフラ系・機械系・製造系・研究開発など、あらゆる仕事や場面で電気工学は軸となる知識であり、それだけ電気工学を学んだ人の活躍の場は広いと感じます。こうした応用分野の広さが魅力であり、電気工学の知識を持っていることは大きな財産になることは間違いありません。

電気工学を学んでいる人に対しては、どんな印象をお持ちですか。

葛西:非常に頭がいいなあと感じることが多いです。電気というのは目に見えない現象です。見えないものをコントロールする学問が電気工学ですから、わからない現象に対してもロジックをつけていくことに長けていると感じます。

IT専門家の活躍はさらに広がる

今後、どのようなことを目指したいとお考えですか。

葛西:DXを推進するための業務システムの開発は多くの人が携われる仕事ではないため、当面は現在の業務を継続しつつスキルを磨き、配電部門だけでなく他部門も含めた全社最適を実現するシステム開発を目指したいと考えています。

葛西さんのように情報科学を学んでいる皆さんにメッセージをお願いします。

葛西:私のように情報科学を学んだ人材についても活躍の場が広がっているのが電力業界です。本格的なDX化の中で、活躍の機会はさらに広がっていくでしょう。電力業界が扱うデータは極めて膨大です。設備だけをとってみても工事の時期や設置の場所、塩分濃度など自然環境から受ける影響など、桁違いのパラメータでデータを管理し、その中から不都合な情報を抜き出していくことが求められています。データサイエンティストなど、一見して電気工学とは無縁と思われていた領域の専門家が期待されるようになっており、より多様な専門分野を学んだ皆さんが電力会社の門を叩いてくれたら嬉しく思います。

ありがとうございました。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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