モータの研究を通じて、電気の新しい可能性を拓きたい。

2021年7月30日掲載

次世代の革新的モータの研究開発で知られる、東京工業大学の千葉・清田教室。今回はこちらでモータの研究に挑戦している皆さんにお話をうかがいました。メンバーの約半数が6ヵ国からやってきた留学生というグローバルな研究室で、日々の生活も国際色豊かです。

※2021年5月現在。文章中の敬称は省略させていただきました。

電気も機械も学べる環境に惹かれて

皆さんが電気工学を学ぼうと思われた動機を教えてください。熊代さんからお願いします。

熊代:私は昔から理系科目が好きだったものの、唯一、なぜか電気だけが苦手でした。高専の入試でも電気には苦しんだものです。だからこそ苦手科目を克服しなければと奮い立ち、きちんと学ぼうと思ったことがこの道に進むきっかけになりました。

電気が苦手だったとは意外ですね。

熊代:そうなんです。もっとも中学生の頃から電子工作は大好きで科学雑誌を見たり、ホームセンターで電子部品を買ってきて工作したりといったことを楽しんでいました。興味はあったわけです。

ありがとうございます。ではエクトルさん、お願いします。

エクトル:当初は機械に興味があったのですが、次第にパワーエレクトロニクスに関心をもつようになりました。というのも電気自動車の開発に携わってみたいと思うようになったからです。自動車の核となるのはやはりモータやパワーエレクトロニクスですから。そうした研究を通じて、社会の電動化に携わりたいと思いました。

ありがとうございます。キュウさん、いかがでしょう。

キュウ:私は中学の頃から物理が大好きでした。特に電気回路や電磁場には関心がありました。また子供の頃はリモコンカーが好きで、いつか自分でつくってみたいという思いもありました。今は電気工学の研究を通じて大好きな電気回路や電磁場について集中的に学べるので、とても幸せだと感じています。リモコンカーも、モータを選び、基板をはんだ付けし、プログラムを書くことで、好きなようにつくれます。

こちらの千葉・清田研究室を選ばれた理由はいかがですか。

熊代:私は高専で電気科に入りましたが、同時にロボット研究部で機械設計もしていました。ですから機械も好きなんです。その点この研究室は電気はもちろん機械設計もできるし情報分野も学べるということで、幅広く複合的な研究ができることに惹かれました。

エクトル:今もお話ししたように私は電気自動車に興味があったので、電気と機械の両方が研究できると思ってこの研究室に入りました。留学生が多く、国際的な雰囲気だったこともよかったです。

キュウ:私も皆さんと同じく、電気も学べるし機械も学べるという点に魅力を感じました。この点は他の研究室にない大きな特徴だと思います。さらにモータの実物にも触れられるという点も魅力でした。

世界のどこにもないモータを目指して

皆さんの研究内容について教えてください。

熊代:新しいモータの開発に取り組んでいます。普通のモータは歯車の物理的な接触による噛み合わせで動きます。これに対して、磁気的な噛み合わせに置き換えた磁気減速機を組み込んだものが磁気ギアードモータです。特徴としてはモータとギアを一体化することで小型化できる点です。一方、モータと磁気受軸を一体化したベアリングレスモータというものがあります。私はこの磁気ギアードモータとベアリングレスモータを組み合わせた、まったく新しいモータを開発しようとしています。

まだ世の中にないモータということですか?

熊代:ええ、まだ世界のどこにもないモータです。ですから私の研究内容を説明しようとしても、学会でも「よくわからない」と言われるんです。親に「世界初のモータを開発しているんだよ」と教えても「ああ、いいねえ」で終わりです。

手応えはいかがですか。

熊代:最近だいぶ手応えが出てきたという感じです。いい結果が出るまで、あと少しというところですね。このモータはかなり小型化できるので、飛行機に搭載できるのではないかと個人的には期待しています。この先が楽しみです。

ありがとうございます。続いてキュウさん、研究内容を教えてください。

キュウ:私はスイッチトリラクタンスモータの新たな制御方式について研究しています。スイッチトリラクタンスモータは永久磁石をまったく使用していないモータです。そのため、現在の電気自動車に使用されている永久磁石モータと比べて、低コストで高い安定性が期待できるというメリットがあります。一方でトルク脈動と騒音が大きいという問題もあります。この点を解決するため、制御方式について研究しています。

どんな点が面白みですか。

キュウ:磁石を使わずにモータを動かす点が面白みであり、他のモータに使われている技術をそのまま応用できない点は難しいですね。

エクトルさんもモータの研究ですね。

エクトル:はい。私の研究テーマは電気自動車に使われている誘導モータの高効率化を図り、多相化を評価することです。キュウくんも言っているように現在の電気自動車のモータは永久磁石が主流ですが、レアアース(希土類)を使っているので環境への負荷の大きいことが課題となっています。その解決策として挙げられるのがスイッチトリラクタンスモータと誘導モータで、前者をキュウくんが研究し、後者については私が取り組んでいるわけです。さらに誘導モータの汎用性を活かした相極数切替誘導モータの開発も行っています。

やりがいはいかがですか。

エクトル:とても楽しいです。まだ誘導モータについて詳しくなかった学部生の頃、模擬モータをつくったことがあります。その時、回転子にジャムの瓶詰めのフタを使ったところ、うまく回ったんです。あの興奮が今の研究の原動力につながっていると感じます。

東工大ならではの最先端の研究環境

研究活動のエピソードを教えてください。

熊代:私はなんと言っても国際学会での発表が印象に残っています。オンラインでしたが、立て続けに2回出席する機会がありました。1回目は緊張してしまい、英語もうまく聞き取れずに失敗しました。その反省をもとに2回目はしっかり準備をし、発表は成功。かなり緊張していたので終わった後はどっと疲れが来たものの、充実感は大きかったです。これまで参考文献として読んできた論文を書かれた研究者の方から直接質問をいただき、ディスカッションできたのはとても嬉しく、興奮しました。自分はこの分野では世界の最先端を走っているんだと実感できたことは快かったです。

キュウ:私はシミュレーションソフトでモータのモデルをつくり、モータの動作をソフトで確認できたことが印象に残っています。モータが動いている様子が見られますし、モータ内部の電磁場についてもソフト上で確認できます。これはモータ研究ならではの面白さだと思います。

エクトル:評価に際しては非常に長い時間がかかるため、解析手法の改善を行いました。並列計算のために大学のスーパーコンピュータも利用し、224コアを解析のために使用したことで、従来7日間かかっていた解析時間を1日に短縮できました。これはとても嬉しかったです。ソフトウェアのライセンス数の多さも含め、東工大ならではの恵まれた研究環境には感動しました。

日本語と英語が飛び交う毎日

皆さんの研究室について教えてください。今もお話にありましたが、設備面では非常に充実しているようですね。

エクトル:ええ。大学のスーパーコンピュータが使えるのは大変に助かっています。ここまでの充実した設備環境は、企業でもなかなかないのではないでしょうか。

熊代:エクトルくんは今やスーパーコンピュータのスペシャリストとしても活躍しています。彼の言うように設備面では非常に恵まれていると感じており、高専時代ではパソコンのスペックの問題から思うように研究できなかったことも、ここなら何も問題もなく取り組めます。

さすがに日本最高レベルの理工系総合大学にふさわしい環境ですね。

キュウ:ソフトウェアについてもベンダー数社から最新のバージョンを提供いただいています。開発中のものも含めて常に最先端のソフトを試すことができ、その結果をベンダーにフィードバックすることでさらなる改善に貢献しています。

熊代:メンバーが研究しているモータも、キュウくんのスイッチトリラクタンスモータやエクトルくんの誘導機など様々で、内容についても磁気浮上や効率向上、材料解析、騒音解析など非常に幅広くなっています。そのため自分のテーマについても多角的な観点からディスカッションでき、視野が広がりました。

留学生が多いのも特徴ですね。

エクトル:私はメキシコから来ました。日本文化に憧れ、日本企業に興味があったことが留学のきっかけです。

キュウ:研究室の約半数は海外からの留学生で、私は中国からです。ゼミでの発表は英語で行い、日常生活は英語と日本語の両方が使われています。

熊代:みんな日本語が驚くほど上手で、普段は日本語7、英語3という割合でコミュニケーションしています。おかげで私も英語が鍛えられ、TOEICの点数も上がりました。

キュウ:世界各国の仲間と交流ができるのも楽しいですね。

熊代:研究室の留学生は6ヵ国から来ており、各国のおいしい料理を紹介し合うのも楽しみです。エクトルくんには本物のメキシコ料理のお店を案内してもらいましたし、キュウくんには本場の中華料理を教えてもらいました。

自由な時間の過ごし方が心地いい

現在はコロナ禍ですが、普段、どのような生活を送っていらっしゃいますか。

キュウ:私は修士1年生ですので、時々授業があります。その時は家でオンライン授業を受け、その後、研究室に出てきます。1日の過ごし方が決められているわけではなく、いつ来てもいいし、いつ帰ってもいいので、まったくストレスなく自由に過ごしています。

熊代:もともと流動的な研究室だったのですが、コロナ禍によってさらに流動的になった感じがします。

キュウ:授業は録画されて、学校のサイトで何度でも繰り返して見ることができます。重要なところ、わかりづらいところがリピートできるのはリモートならではのメリットです。

エクトル:先ほども話したように解析には長い時間がかかるので、スタートしたら一度家に帰り、午後また研究室に来て確認するといったこともあります。移動は自転車ですので快適ですよ。最近新しくロードバイクを買ったので、休日にはサイクリングを楽しんでいます。先日は研究室の仲間と一緒に遠出もしました。

キュウ:私は学校の近くの洗足池公園で散歩したりジョギングしたりしています。休日にはコーラを飲みながら中国の動画サイトを楽しむのが、一番のリラックスです。

熊代:私はモータースポーツが大好きで、休日にはよくテレビでレースを観戦しています。高専時代にロボコンに取り組んでいたこともあり、チームで力を合わせ創意工夫して挑んでいくところが大好きなんです。いつかは現場のサーキットで観戦したいと思っています。

母国のために、日本のために

電気工学を学んでよかったと思うのはどんな点ですか。

キュウ:冒頭でもお話ししたように、子供の頃に夢見ていたリモコンカーを今では簡単につくれるようになったのは、とても嬉しいことです。しかしそれだけでなく、電気を学んだことで人々の生活をより幸せにでき、世界を変える製品を世に送り出すことができるのが、最も素晴らしいことだと思います。

熊代:私はもともと電気が苦手でしたから、この分野に進まなければずっと電気のことは遠ざけていたと思います。しかしあえて苦手克服に取り組んだことで例えば発電所は何をしているのか、変電所はなぜ必要か、蛍光灯はなぜ光るのかといったことが深く理解でき、視野がずいぶん広がったと感じています。

エクトル:私は自分の将来の可能性が広がったと感じています。特に興味のあるモビリティの分野について、その改革には電気工学の知識が必要ですから、電気を学んでよかったと思います。熊代さんがおっしゃったように、私もブレーカーを直すなど、生活にちょっと役立つ知恵を得られたことが嬉しいです。

熊代:どんな分野からも期待されているという点も魅力ですね。インターンシップでも感じたことですが、さまざまな業界で電気の専門家は必要とされていると思います。これからの時代の変化の中でも、活躍の場は更に広がっていくのではないでしょうか。

キュウ:中国でも電気工学を専攻した学生の就活力は高いですね。人々の暮らしに不可欠な家庭用品はもちろんのこと、産業用製品も電動化、インテリジェント化が進んでいます。そのため電気工学を学んだ学生は多くの分野で求められています。

エクトル:私の母国でも同様です。そして日本でも先輩の就職活動経験を聞いたら、数社の就職活動だけで早くも内定が得られることを知りました。電気工学の出身者は就職活動で有利なのは間違いないようです。

では最後に、将来の夢について終えてください。

熊代:私は電気の分野で自分の名前を残すことが夢です。現在取り組んでいる研究は世界で誰も行っていないものなので、ぜひ成果を上げたいと思っています。

キュウ:私は博士課程を修了したら中国に帰り、出身大学で教員になりたいと思っています。大きな夢をもった若者たちと一緒に研究生活に打ち込みたいというのが、私の一番の希望です。

エクトル:私は日本に残って自動車業界で活躍したいと考えています。ハードだけでなくソフトの開発にも携わり、新しい小型電気自動車の開発を通じて多くの人に移動の自由を提供し、生活の喜びを届けたいと思っています。

皆さん、今日はどうもありがとうございました。

※インタビューは十分な距離を取り、ソーシャルディスタンスに配慮して行いました。

※インタビューへのご質問、お問い合わせにつきましては、「こちら」にお願いします。

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