雷の研究で社会や産業の発展に貢献したい。

2025年11月28日掲載

中部大学の雷研究室は、山本和男教授、松井拓斗助手のもと、高電圧・大電流発生装置(模擬雷の発生装置)を用いて雷現象の解明や雷害対策の研究を行っています。約30名近い学生が在籍し、実験やシミュレーションを通じて専門知識と技術力を磨いています。最先端の設備と活発な研究活動により、社会の安全や産業発展に貢献できる魅力的な環境となっております。

※2025年10月現在。文章中の敬称は省略させていただきました。

大学院で雷やAI、電気自動車の研究をしたい

皆さん、電気工学を志望された理由を教えてください。

松岡:高校生の文理選択の際は、当初文系に進もうかと考えていましたが、国語の先生から理系の方が良いとアドバイスを受けて理系コースを選びました。電気工学を志望した正直な理由は「なんとなく」です。当時やりたいことがはっきりしていた訳ではありませんでしたが、電気は今後も社会で必要とされる分野だと思ったことと、「電気電子システム工学科」という名称が格好良く感じたことでこの分野を選びました。情報系にも興味はありましたが、最終的には直感で現在の道に進みました。

元田:もともと文系より理系が好きで、中学生のときに再生可能エネルギーについて学んだことがきっかけで電気分野に興味を持ちました。当時、再生可能エネルギーに関わる仕事に就きたいと考えていたので、その思いが進学先として「電気電子システム工学科」を選ぶ決め手になりました。

堀場:幼少期、通っていた幼稚園に開発協力依頼があり、パワーウィンドウの試験を体験しました。そのとき、挟み込み防止機能が当時の小さな自分の手にも作動したことに感動したのが、自動車に興味を持つきっかけです。以来ずっと自動車が好きで、大学では自動車の研究ができる学科に進みたいと思い、電気電子分野を志望しました。

機械系ではなかったのですか?

堀場:はい。エンジンなどの機械系ではなく、電気・電子制御システムの方に興味がありました。今後の電気自動車の普及も見据えて、この分野を選びました。

雷研究室(以下:雷研)に進まれた理由を教えてください。

松岡:雷研を選んだきっかけは、雷そのものを研究したかったというよりも、山本先生との面談で「雷研は電気電子工学だけでなくAIもやっているよ」と勧められたことです。また、大学院への進学を希望していたので、大学院生が多い研究室であることが決め手になりました。研究室配属後、山本先生からの勧めを頂き博士後期課程へ進学しました。

元田:自分を成長させられる環境に身を置きたいと思い、学会発表が盛んで大学院進学率も高い雷研を選びました。

堀場:自動車の研究をしたいと考えていたところ、雷研では自動車の細部まで研究していると先輩から聞き、雷研を選びました。

AIで解析したデータで風車の雷被害対策に取り組む

松岡さんの研究内容を教えてください。

松岡:私の研究は風力発電設備の雷被害対策です。近年、風車の大型化に伴い落雷による損傷が深刻化しています。そこで、風車に設置した監視カメラで撮影した画像をAIで解析し、雷の有無や位置、損傷の程度を自動判定するモデルの構築に取り組んでいます。これにより被害を早期に把握し、保守作業の迅速化やダウンタイムの短縮、設備の安定稼働・事業性向上に貢献する技術を目指しています。

風車のデータはどうやって取得しているのですか。

松岡:この研究は共同研究で、共同研究先からデータを取得しており、陸上・洋上の両方で取り組んでいます。修士課程でも同様のテーマで研究していましたが、監視カメラを活用した研究は博士課程から取り組んでいます。画像データは膨大で、AI技術を用いたプログラミングにより解析を行っています。

雷被害対策もAIの時代ですね。研究をしていて印象的だったことは何ですか。

松岡:共同研究の一環で、東京大学や早稲田大学、産業技術総合研究所の先生方や学生と定期的に進捗報告会を行ったことが印象的でした。3ヶ月に1回の報告を通じて、雷や風車、AIなど各研究機関の強みを活かした議論ができ、自分の研究が通用するか不安もありましたが、意見交換を重ねる中で自信につながりました。

賞も受賞されたそうですね。

松岡:はい。学会や交流会でポスター発表を行った際、ポスター賞を2度受賞しました。成果を認めていただけたことは非常に嬉しく、今後の研究活動の大きな励みになっています。それぞれ、風力関連の学会と企業の交流会でポスター賞をいただきました。

「空飛ぶクルマ」有人ドローンの雷対策の基礎研究

堀場さんの研究内容を教えてください。

堀場:私は、大阪万博でも話題になった「空飛ぶクルマ」、いわゆる有人ドローンの雷対策について研究しています。有人ドローンは電動化によって環境に優しく、自動車よりも迅速な移動手段として次世代のモビリティとして期待されています。ただ現状は、商用利用となるとまだまだ研究の余地が大きいです。私の有人ドローンの雷対策もそのひとつです。

なるほど。有人ドローンの雷対策はどのような現状なのですか。

堀場:有人ドローンは航空機と違って高高度(※1)を飛べず、機体の軽量化が求められるため、従来の航空機のような雷対策が難しいという課題があります。そこで、有人ドローンの安全な運用を実現するために、落雷に対する防護策を検討しています。現在は、先輩から引き継いだテーマで、雷がプロペラに落ちた場合の影響や、どこに落ちやすいかについて、縮尺した金属モデルを使って基礎的な研究を進めています。

基礎研究の段階なのですね。研究をしていて印象的だったことは何ですか。

堀場:今年6月にインドネシアで開催された国際学会に参加したことが印象的でした。アジア各国の研究者の発表を聞き、気象分析や風車、自動車、電車など幅広い分野で雷関連の研究が行われていることに驚きました。自分の研究成果としては、学部時代に研究していた電気自動車の雷対策について発表し、今後の研究に役立つアドバイスもいただけて、とても良い経験になりました。

(※1)「高高度」は通常の高さより一層高いという意味で用いられる表現で、日本の航空交通管制では2万4千フィート(約7300メートル)以上を指すことがある。

実験に使用している、縮尺した金属モデルの有人ドローン

洋上風力発電の雷保護対策を実験で解明する

元田さんの研究内容を教えてください。

元田:風力発電、中でも大型の浮体式垂直軸型風車の雷対策について研究しています。陸上風力発電は山間部や沿岸部など風況の良い場所に設置されるため、落雷の被害を受けやすいです。洋上風力も同様に、海上に設置されるため周囲に高い建物がなく落雷被害を受けやすいので、雷保護対策が重要となります。

洋上風力発電は、陸上に比べて落雷を受けやすいのですね。

元田:はい。そこで私の研究では、雷を模擬した高電圧・大電流を発生させる装置を使い、雷保護対策が施された試験体とそうでない試験体を用いて試験した結果を比較しながら、雷保護の有効性を検証しています。試験体は企業から提供いただき、3ヶ月に1回ほど実験を行い、写真やハイスピードカメラで放電の様子も記録しています。雷の傾向としては、特に冬はエネルギーが多く、日本海側で雷被害が多い傾向があります。

研究をしていて印象的だったことは何ですか。

元田:私も堀場さんと同じで、インドネシアで開催された国際学会に参加したことです。海外に行くこと自体が新鮮で、多くの学びを得る貴重な経験になりました。日本の学会とは雰囲気が異なり、海外の研究者は自信に満ちた発表をされていて、その堂々とした姿勢に刺激を受けました。

高電圧・大電流発生装置を備えた、多数の仲間と成長できる研究室

研究室の特徴を教えてください。

松岡:共同研究先がとても多いのが特徴です。産総研などの研究機関とも連携していて、電気電子工学だけでなく、私のようにAI技術も幅広く学べます。また、メンバー一人ひとりにテーマが与えられていて、基本は自分の研究を進めつつ、必要なときはみんなで協力して研究するスタイルです。

元田:実験設備がとても充実しているところが魅力です。私が使用する高電圧や大電流を扱う装置は、他の研究室ではなかなか見られない迫力があります。実験は必ず学生同士や先生と協力して行います。また、必要な機器や消耗品も比較的自由に購入できるので、研究に集中できる環境だと思います。

松岡:部屋が複数あって、学生それぞれにPCとモニターが割り当てられているので、快適な環境で研究できます。さらにコアタイムがなく、自由な時間に研究できるのも魅力です。研究室は土足禁止で、みんなで整理整頓して清潔に保っています。

堀場:学部生も院生もいて、みんなで助け合いながら研究しています。院生が多く30人近くの学生が在籍しているので、先輩や同級生に相談しやすく、学年を超えて仲が良い雰囲気です。メンバーが多いので、いろいろな人と交流できるのが楽しいです。3週間に1回ミーティングがあって、進捗を報告し合うので刺激になります。

松岡:みんなでスポーツをすることもあり、近くの公園でBBQや飲み会など交流イベントもあり、団結力のある研究室だと思います。

実験で使用している高電圧の放電現象。長時間露光で撮影しました。

取材時に研究室にいらっしゃったメンバーで集合写真をとらせていただきました。後列一番右が助手の松井 拓斗先生です。

平均的な一日のスケジュールを教えてください。

堀場:基本的には研究室で過ごし、実験やデータ整理、報告書の作成が中心です。研究時間は決まっておらず、自分の予定に合わせて進めることができます。深夜まで残ることは年に数回程度です。

元田:午前中は授業やTA(ティーチングアシスタント)として実験のサポートを行い、昼は研究室の仲間と学食に行くことが多いです。午後は研究室で作業に集中しています。ほとんど研究室にいます(笑)。実験準備や報告書作成で夜遅くなることもありますが、普段は落ち着いた日々を過ごしています。

松岡:フレックス制ですが、8:30頃に登校し、午前は連絡対応、午後はデータ整理や実験などに取り組み、18:30頃に帰るのが平均的なスケジュールです。必要があれば夜まで作業することもあります。

趣味やアルバイトなど、研究以外で打ち込んでいることはありますか?

堀場:小学生の頃からバスケット観戦が好きで、県内外の試合や観光を楽しんでいます。週末は自動車ディーラーでアルバイトをしています。

元田:テニスが趣味で、中学の同級生と週1〜2回プレーしています。体を動かすことでリフレッシュしています。

松岡:学生広報スタッフとして、オープンキャンパスなどで主に高校生に大学の魅力を伝える活動をしています。バスツアーを企画し、中部大学のさまざまな場所を案内することもあります。「雷」を研究していると話すと、高校生は驚いてくれます。ちなみに、週1回の筋トレも続けており、体力づくりと気分転換になっています。

身の周りの電気機器の仕組みが分かる!

電気工学を学んで良かったと思うことをお教えください。

元田:身の周りの電気機器の仕組みが分かり、興味が深まりました。例えば、エレベーターや自動販売機のように、ボタンを押すと決まった動きをする装置には「シーケンス制御」という技術が使われていると知ったときは、理解が一層深まりました。また、電気工事士の資格も取得でき、DIYにも役立っています。

堀場:もともとの志望理由だった自動車の電子制御(パワーウィンドウや警告灯など)や、普段使う電気の仕組みが理解できて嬉しかったです。アルバイトをしている自動車ディーラーでも、パワーウィンドウの仕組みなどをお客様と話すことができました。

松岡:家の配線など実務的な知識が身につき、電気が基盤となっている多くのものごとを新たな視点で見るようになりました。家の電気工事の基礎も理解できるようになり、母に頼まれて自分で家の配線工事をしたこともあります。第二種電気工事士の資格も取得しました。

松岡さんと堀場さんは過去、就職活動をされて、元田さんはインターンを経験されたそうですが、電気工学出身者は求められていると感じましたか。

元田:インターンでは、学科にこだわる企業は少ない印象を受けました。ただ、現代社会では電気で動かないものを探す方が難しいほど、身の回りには電気を使った製品があふれています。そのため、電気工学の需要は高いと感じています。

堀場:私は求められていると感じました。インターンに参加した企業では自動車の電子制御開発の仕事に携わりましたが、電気回路やシステムの知識が前提とされ、専門性が求められていると思いました。

松岡:博士課程に進む前に就職活動を経験しましたが、電気工学出身者は幅広い業界で求められていると感じました。また、自動車やIT関連など、多様な分野で電気系の知識を持つ人材が必要とされているという話もよく耳にします。

将来の夢や目標を教えてください。

元田:将来はインフラ系の職業に就きたいと考えており、再生可能エネルギーにこだわらず電力業界で働きたいと思っています。これまで学んできた知識を生かし、社会に貢献できる技術者を目指します。

堀場:自動車に興味を持つきっかけとなった自動車の電子制御に携わる仕事をしたいと考えています。コックピットのシステム開発やADAS(先進運転支援システム)などに関わり、学んできた電気電子の知識を活かし、多くの人々に安心安全な移動を提供したいです。

松岡:まだ明確な将来の夢は決まっていませんが、やりたいことが見つかったときにすぐに行動できる自分でありたいと思っています。最初は「なんとなく」で選んだ学科でしたが、専攻するうちに電気の面白さに気づきました。現時点での目標は博士後期課程を修了することです。その後は電力関係にこだわらず、自分の興味のある分野に進みたいと考えています。

今日は雷研究の最前線を知ることができて貴重な機会になりました。皆さんの今後のご活躍をお祈りしています。ありがとうございました。

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