自分たちが開発した技術を、世の中へ出したい。

2013年8月30日掲載

長岡技術科学大学は、日本に二校しかない国立の技術科学大学(※1)です。入学する学生の8割が高専生で、大学3年次に編入します。今回、インタビューを受けていただいた3人の学生も高専出身者です。また伊東研究室は、パワーエレクトロニクス専門の研究室として、学術界や産業界、マスコミにも大いに注目されています。
(※1)技術科学大学については、研究室コラムvol.4「豊橋技術科学大学 滝川 浩史 教授」もご覧ください。

※2013年6月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

高専から電気工学を学んでいます

みなさんは高専出身ということですが、学科はどこですか。

全員:電気工学の学科です。

高専から電気工学ですね。高専へ進んだきっかけと電気工学を志望した理由を教えてください。

日下:高専に入ったのは、子供の頃からミニ四駆などのモノづくりが好きで、工学系の仕事をしたいと考えていたからです。電気工学科を選んだのは求人倍率が一番高かったからで、深く考えてはいませんでした(笑)。

荒木:ものづくりが好きだったので、高専は面白そうだと感じて選びました。電気工学へ進んだ理由は、電気は日常生活に欠かすことのできないエネルギーで、これからますます重要になる学問と感じたからです。

高岡:まず、数学と物理が得意だったので理系へ進みました。高専へ進んだ理由は、早い段階で工学を学びたかったからです。もともと、ものづくりは好きという程ではありませんでしたが、昔、姉のデジカメを解体したことがありました。後で親にしかられました(笑)。電気工学を選んだ理由は、就職が良かったからです(笑)。

高専は女性が少ないですが、それは気になりませんでしたか。

高岡:中学は運動部に所属していて、男女関係なく仲良くしていたので、女性が少ないことは気になりませんでした。

高専卒業後に大学へ進学して、伊東研究室を選んだ理由を教えてください。

日下:高専の5年間で電気を学んだのですが、まだまだ自分の知識不足を感じて、もっと専門的な技術を身につけたいと思い、大学へ編入しました。伊東先生は、若い先生でアクティブな活動をされていて面白そうだと思いましたね。

荒木:私の場合は、高専時代にパワーエレクトロニクス(以下パワエレ)に近い研究をしていて、当時の担当教授に、技科大へ行ってもっと勉強してみればと勧められたのがきっかけです。伊東先生は、研究だけでなく、執筆活動やスポーツなどにもすごくアクティブな方だったのでひかれました。

高岡:高専5年生のときに配属された研究室が、パワエレ関連の研究室でした。就職も考えましたが、もっと追究していきたいと思い、担当教員に相談して長岡技術科学大学へ進みました。研究室もパワエレで探していたのですが、その中で伊東研究室を選んだ大きな理由は、見学へ来たときに、日下さんがとても親切に案内してくださったことですね(笑)。

置くだけで電気自動車を充電、夢のワイヤレス電力伝送の研究

日下さんの研究内容を教えてください。

日下:ワイヤレス(無線)電力伝送に関する研究を行っています。現在、家電や自動車のバッテリーの充電にはケーブルが必要ですが、このケーブルをなくして、ユーザーの利便性を高めることが最終目標です。

具体的にはどのような製品を想定して研究されているのですか。

日下:電気自動車(以下EV)です。ワイヤレス電力伝送は、高い周波数で電力を送る必要があることから、受電側(EV側)ではバッテリーを充電するために高周波の交流から直流へ電力を変換する回路が必要です。私の研究は、この高周波の交流から直流への変換を高効率に行うことができる回路を開発することです。

EVにワイヤレスで電気を送ることは、現在、可能なのですか。

日下:可能です。しかし、電力をスムーズに送るためには、今申し上げたように、高周波の交流から直流への変換が必要になりますが、現在は変換効率が悪く電力ロスが発生するのです。おおざっぱな数字ですが、今の有線の電力伝送を100とすると、無線では80ぐらいになるでしょうか。この数字の差がそのまま電力の無駄なのです。

どのように研究をされていますか。また現在までの成果はいかがですか。

日下:本研究は、企業との合同研究です。まず先生と相談して方向性を決めてから、PCでシミュレーションを行います。シミュレーションで確認後、実験を行うという流れです。現在のところ、高周波でも理論通りの動作が出来ていることが確認されています。今後は、もっと効率を上げることが課題です。

研究をされていて印象に残ったことを教えてください。

日下:研究をはじめた2010年3月頃に、アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)で発表された論文を参考に、ワイヤレス電力伝送システムの再現を自分で実際に行ったのです。電球でしたが、ワイヤレスで光らすことができて感動しましたね。

ワイヤレスにすることによって、電気自動車を駐車場に置くだけで充電できるようにするのが最終目標です。

シリコンを超える、次世代パワー半導体デバイスの研究

荒木さんの研究内容を教えてください。

荒木:次世代パワー半導体デバイスのSiC(シリコンカーバイド)およびGaN(窒素ガリウム)を用いた、モータードライブシステムについて研究しています。

半導体デバイスといえばSi(シリコン)をよく聞きますが、それよりも優れているのですか。

荒木:そうですね。これらの半導体デバイスは、従来のSiデバイスよりも高速なスイッチングが可能なため、高周波での動作が可能です。また、単純にSiから置き換えるだけでも回路の効率を向上させられるなど多くの利点があります。私は、この特長を生かしてモータードライブシステムの小形化を目指しています。

モータードライブシステムとは、具体的にどのような用途ですか。

荒木:主に工場で使われています。モーターの性能を落とさずに小型化することで、効率が上がり、省エネルギー化へつながるというわけです。

なぜ、SiCおよびGaNはまだ普及していないのですか。

荒木:いろいろな理由がありますが、コストが高いのと、技術や実績がまだ充分でないことでしょう。これまで使っていたSiは安いこともあり、いくら性能がよくともコストが高いようでは、すぐには変えられません。

どのように研究をされていますか。

荒木:PCによるシミュレーションが、多いですね。SiCやGaNは希少な上に高価なため、実験は少な目です。ですから、たまに実験を行うときはいつもヒヤヒヤします(笑)。企業と合同で研究を進めています。

最先端の“集光型太陽電池”の実現のために

高岡さんの研究内容を教えてください。

高岡:太陽電池の中でも、「集光型太陽電池(※2)」に着目し、そのシステムに導入する変換器を開発しています。

(※2)集光型太陽光発電とは、太陽光をレンズや鏡を使って小面積の太陽電池に集光することにより、高い変換効率を実現する太陽電池。小面積で済むことから、少ない材料で高効率に発電することができるメリットがある。現在、さらなる変換効率の向上とコスト低減に向けた技術開発が進められている。
NEDO:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 HPより

集光型太陽光発電は、レンズや鏡を使って太陽電池に集光するので、小面積で効率的に発電できますね。

高岡:そうですね。一般的な太陽光パネルより400倍以上の集光率があると言われています。ただ、まだまだ実現へ向けてレンズの角度や材料などに課題があります。その中で、私は太陽光パネルの単セル毎に導入が可能な、小型で高昇圧の変換器について研究しています。

今の変換器は、太陽光パネル一枚一枚には入っていないわけですか。

高岡:はい。もっと大型なもので、パネルに一枚一枚に入れようとすると、当然、小型化が必要になってきます。しかし、一枚で発電できる電力は少なく、それに対応した変換器はほとんどありません。また集光型なので、一般的な太陽光パネルより、パネル温度が上がってしまうため、耐熱化も考慮した変換器を研究しています。

なるほど。集光型は一般的な太陽光パネルより熱をもってしまうわけですね。どれくらい温度が違うものですか。

高岡:具体的な数値までは出せませんが、回路に使う素子などが耐えられない温度になってしまう場合があります。また熱が上がると、部品の寿命も短くなります。

どのように研究をされているのですか。

高岡:基本的には回路をつくって、PCでシミュレーションを行います。自分で一から設計して基板を削り、素子をはんだ付けして作った回路が作動したときは、とてもうれしかったですね。太陽光パネルは学校の設備としてありますが、まだ研究には使用していません。いずれは使ってみたいです。

研究室は、充実の研究設備と積極的な学会参加が特徴です

研究室の特徴を教えてください。

日下:測定器などの研究設備が充実していることですね。学生数が多いので、台数だけは他の研究室にもひけをとらないと思います(笑)。

それだけあると、実験が楽ですよね。

日下:はい。伊東研究室は、実験が必須の研究室なので必要です。パソコンも1人1台、あります。

学会への参加が多い研究室と伺いましたが、高岡さんは学部生ですが、参加されましたか。

高岡:伊東研究室は、学部生も研究のまとめとして、1回は参加するのが恒例になっています。また、長岡技術科学大学は10月半ばから企業へインターンシップに5ヶ月間行く実務訓練制度があります。その前に学会へ参加する予定です。

技術科学大学らしいインターンシップ制度ですね。修士の荒木さんはどのような学会に参加されましたか。

荒木:実は数日前にオーストラリアのメルボルンで開催された国際学会から帰ってきたばかりです(笑)。「ECCE ASIA DownUnder 2013(2013.6.3~.6.6開催)」という学会です。

学会に参加して思い出に残っていることを教えてください。

荒木:少し自慢ですが、今回の国際大会で論文のアワードをいただきました。

素晴らしいですね!英語で発表されましたか。

荒木:はい。ただ失敗談もついていまして、表彰の時に、英語が全然聞き取れなくて、ステージに呼ばれているのに全く気付きませんでした(笑)。

日下さんは、博士課程なので数多くの学会に参加されましたか。

日下:そうですね。覚えきれないほどです(笑)。国際会議だけに限ると、これまでに3回参加しており、今年の9月以降も、また2回行く予定です(笑)。学会の思い出はいろいろありますが、一番の楽しみは交流です。他大学の方などと飲みに行くのが楽しみですね。学生インタビューに掲載されている、島根大学・山本研究室や、千葉大学・佐藤研究室の皆さんとも交流しましたよ。

オシロスコープやパワーアナライザといった、実験に欠かせない測定設備が満載です。

パソコンは、複数のディスプレイを使用している人もいます。

約30名のマンモス研究室。最後列の一番右が、伊東淳一准教授です。

伊東研究室は、オンもオフもアクティブに行動します

教授や院生、研究室の仲間とどのようにコミュニケーションをとっていますか。

日下:研究の進捗については、週1回3グループに分けて報告します。ここで1週間の成果と問題点を共有して解決策を探ります。

荒木:毎日、研究室全員で朝礼と、グループ毎の昼礼もやっていますね。スケジュール確認が主な目的です。

高岡:進捗確認は、先生や先輩方からアドバイスを頂けるので、コミュニケーションの場や学会の発表練習にもなります。

日下:でも、伊東研究室のコミュニケーションと言えばやはり飲み会でしょう(笑)。日本酒の消費量が年間100升を超えますから(爆笑)。

荒木:毎月に1回、誕生日会と称して研究室員全員で飲み会を開いています(笑)。

研究を進める上で疑問点などがあった場合は、学年関係なく相談しながら研究を進めています。

すごいですね(笑)。高岡さん、お酒はいかがですか。

フットサル大会(第7回若竹杯争奪フットサル大会)で見事、優勝を果たしました。ちなみに「若竹」は「越の若竹」という先生、お気に入りの新潟の酒から来ています。

高岡:私は大学へ編入してから初めてお酒を飲んだのですが、どんどん飲む量が増えています(笑)。

日下:私たちのせいですね(笑)。

高岡:ただ、やっぱり研究だけですと先輩方と個人的な話はしないので、コミュニケーションがとれる場としてはいいですね。スポーツも盛んです。

荒木:フットサルやスキー・スノーボード、ソフトボールなど、季節ごとにイベントを企画しています。フットサルは、毎日、お昼に体育館で、伊東研究室だけなく、大石研究室、近藤研究室、宮崎研究室の長岡技術科学大学の“パワー研”をはじめ電気系全体でやっています。

日下:冬場には、スキーとスノーボードですね。普段は近場に行きますが、年に1回、スキー旅行へ行きます。今まで、福島、山形、長野などに行きました。

平均的な1日のスケジュールを教えてください。また、サークルやアルバイトなどはやっていますか。

高岡:私は学部生なので、朝礼後、授業に出席します。授業がないときは1日中研究をしているといった感じです。そして研究の合間に、吹奏楽部のサークルへ行きます。吹奏楽部は、今は部長も兼任していて、新潟県内の10校の大学の吹奏楽の方と合同で演奏会をしています。

荒木:朝はメールの返信など事務処理を行います。朝礼に出席後、午前中は回路の作成や実験をして、午後は再実験やシミュレーションの検討を行います。夕方に、1日の成果を日報に整理して8時ごろ帰宅します。

日下:朝礼までに研究室に来ます。博士課程の学生は、報告会に全て出ることになっていますので、週3回午前中は報告会に出ています。その他の時間で、自分の研究を進めながら、後輩からの相談を受けたり、雑務をこなしたりして夜になる感じですね。今、サークルはやっていませんが、アルバイトは、主に大学のTA(Teaching Assistant)や、RA(Research Assistant)をやっています。

日産自動車のリーフの急速充電器を共同開発しました

電気工学を学んで良かったことを教えてください。

日下:率直に言えば、就職先が多いことですね。とにかく幅広い業界から求人案件があります。

荒木:日常生活の中で活用できる機会が多いことです。例えば、家電でも、少しの故障ならば修理ができます。最近はスピーカーを直しました(笑)。また車の電装品も、配線図がなくても見れば、おおよそ仕組みが分かりますね。

高岡:電力や製品に関連する技術には、どんな利点や課題があるのか実感できるところが面白いです。また実際に社会に出る製品へ反映されることも、やりがいのある分野だと思います。

伊東研究室として、実用化された製品などはございますか。

日下:いくつもありますが、最近の大きな話題ですと、日産自動車(株)様のEV「リーフ」の急速充電器を共同開発したことですね。

すごいですね!最後にみなさんの将来の夢や目標を教えてください。

高岡:私は女性としてエンジニアを目指しているので、将来、結婚や出産しても働き続けたいと考えています。最近、企業で実際に働いている女性エンジニアの方とお会いして、その思いは深まりました。

日下:将来の夢は、自分の考えた技術、また回路が搭載された製品がユーザーの方に意識されることなく使われることです。博士課程修了後は、就職を考えています。特にワイヤレス給電の研究が活かせる、自動車メーカーを希望しています。

荒木:私は低炭素社会を実現する製品を開発することです。製品の高効率化はもちろんのこと、電気自動車のように電気エネルギーのさらなる応用も重要だと考えております。

荒木さんは修士2年ですが、就職は決まりましたか。

荒木:はい。大手の総合電機メーカーに内定をいただきました。パワエレに関連する部署に配属予定です。今、申し上げた夢が実現できる企業だと思うので頑張りたいです。

今日は、皆さんのものづくりにかける思いがすごく伝わりました。どうもありがとうございました。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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