超電導技術で、 未来の社会を支えたい

2014年7月29日掲載

今回は、東北大学の津田・宮城研究室に伺いました。津田・宮城研究室では、次世代の電力機器・システム、磁気浮上、医療などの幅広い分野への超電導技術の応用に取り組んでいます。インタビューに応えていただいた3名の学生も、それぞれの研究テーマに熱心に取り組み、さらに他のテーマに対してもとても密にコミュニケーションをとっている姿が印象的でした。

※2014年5月現在。本文中の敬称は略させていただきました。

実験のインパクトが大きかったオープンキャンパス

皆さんが電気工学を学ぼうと思われた動機についてお聞かせください。石田さん、いかがでしょう。

石田:私は高校時代に、東北大学の工学部のオープンキャンパスを見学に来たとき、大きな実験設備を扱っている先輩の姿に圧倒されたのがきっかけでした。それはプラズマを作る装置だったのですが、私も大学に入ったらこういう装置を使って実験に打ち込んでみたいと思いました。電気工学は、本当に面白そうな学問だったので、やりたいことをやろうと思って選びました。

津田先生の研究室に進まれたのはなぜですか。

石田:はい。3年生のときに研究室を選びますが、当時、再生可能エネルギーに関心を持っていたので、再生可能エネルギーと超電導を組み合わせた先進的な研究を行っているこの研究室を選びました。ちょうど東日本大震災の後というタイミングも影響したかもしれません。

北谷さんが電気工学の道を選ばれたのはどうしてですか。

北谷:中学生の頃にエネルギーについて興味を持ったことがきっかけですね。テレビで地球温暖化や化石燃料の枯渇というような話を聞いて、エネルギーに関する勉強がしたいと思うようにな りました。それで高校生の時に、私も東北大学のオープンキャンパスに参加しました。工学部系のどの研究室も、最先端の研究をしていたのにビックリしましたね。

では、津田先生の研究室を選ばれたのは?

北谷:大学に入った頃は、超電導と聞いても、冷やすと磁石の上で浮く技術というぐらいの知識しかありませんでした。詳しく聞いてみたら、超電導状態で電気抵抗がゼロになることを利用すると、将来はエネルギー問題の解決に貢献できるとても夢のある技術だと思いました。

目に見えるものがきっかけで、目に見えない電気が重要なことに気づいた

秋田さんはどのような理由で電気工学を志望しましたか。

秋田:高校時代は、実は機械の方に興味があり、機械工学科に進学しようかと考えていた時もありました。ただ、機械を制御しているのは電気工学の技術ですし、私たちの生活を根底から支えているのも電気です。そんなことから電気工学科の方が幅広くいろいろと学べるのではないかと考えるようになりました。

津田先生の研究室を選ばれたのはどうしてですか。

秋田:超電導に非常に興味がありました。そのきっかけは大学1年生の時に、津田・宮城研究室の研究室見学で超電導ジェットコースターを見たことです。

超電導ジェットコースター?

秋田:はい。超電導磁石が浮上してジェットコースターを滑っていくというもので、これは東北大学の情報知能システム総合学科(※)全体の中でも目玉の一つだと思います。これを目にした時、なんという面白い技術なんだろうと思いました。

※2015年度からは「電気情報物理工学科」へ名称変更

【超電導ジェットコースターを再現していただきました】

液体窒素で超電導バルク体を冷やして、超電導状態にします。
その超電導バルク体を磁石を敷き詰めたレールの上で離すと、宙に浮いたまま走り出します!
※本実験は撮影用に簡易的に行っていただきました。

電気抵抗ゼロの超電導ケーブルを実用化するために

秋田さんは、高温超電導線材を用いた三相同軸型超電導ケーブルの研究をなさっているそうですね。

秋田:はい。超電導ケーブルの実用化にはまだ検討すべき課題があります。例えば、高効率な冷却システムが必要なこともその一つです。超電導ケーブルは、もし実用化されれば世界のエネルギー事情が一変するほど素晴らしいものなのですが、実用化の為にはより効率よく冷却できる優れた冷却システムを実現しなければならないのです。このためには、冷却システムそのものの研究も必要ですが、私は超電導ケーブルの発熱を少なくするケーブルの構成方法について研究を行っています。

ケーブルの発熱を減らすことができれば、例えば3台使っていた冷却システムが2台で済むかもしれない、ということですね。

秋田:ええ、そういうことです。特に私が担当している三相同軸型ケーブルは、他の型のケーブルに比べ、発熱を大幅に減らすことが出来るため、冷却に要するエネルギーを少なくすることができ、長距離送電に向いています。また、ケーブルに使用する超電導導線の量も約半分程度で済むので、経済的です。このような、三相同軸型ケーブルの研究は、日本では津田・宮城研究室しか行っていないものです。

津田・宮城研究室が取り組んでいる三相同軸型超電導ケーブル。
現在、研究はシミュレーションが中心ですが、モデルケーブルなどを用いた実験も行っています。

それは凄いですね。研究をしていて、印象的だったエピソードを教えてください。

秋田:学会に参加したときのことです。他の型のケーブルの研究をしている方々から学会発表終了後、どのような条件で解析をしているのか、今後はどのように展開していくのか、と質問されたことが印象に残っています。自分の研究や津田・宮城研究室独自のケーブルに対して、他の研究者が興味を持ってくれたことで、大きなモチベーションにつながりましたね。

超電導を応用した、強力な浮上型の免震装置をつくる

北谷さんは、超電導を利用した免震装置(※1)についての研究をなさっているそうですね。

北谷:はい。具体的には、超電導の「完全反磁性(※2)」や「ピン止め効果(※2)」といった磁気的性質を利用して、超電導バルク体と永久磁石を用いて建物を浮上させることにより、地震動の建物への伝達を排除するという免震システムの研究に取り組んでいます。現在は、鉛直方向の振動伝達の低減方法や、振動後の浮上層の位置制御について研究しています。

従来の免震装置とどう違うのでしょう。

北谷:実用化されている免震装置では建物と地面が直に接触しているので、振動の伝達を抑制するには限界があります。これに対し、超電導免震装置では、超電導の固有の性質を利用して磁気結合のない状態で建物を地面から浮かせるため、横揺れを完全に除去できるというわけです。

なるほど。実験も大がかりでしょうね。

北谷:オープンキャンパスで、デモンストレーションを行った時は、多くの方に興味を持っていただくことができました。デモ機の地面側が大きく横揺れしているのに、模型の建物が空中に浮いたまま静止しいている様子は、東日本大震災の揺れを経験している地元の方には特にインパクトがあったようでした。

実験で大変なのはどんな点ですか。

北谷:超電導免震装置では、複数の超電導バルク体を磁石化させて用いますが、磁石化すると互いに斥力・引力が働きますから、超電導バルク体を適切な位置で固定して、同時に磁石化するのは大変です。いつも皆で手分けして行っています。また、実験では液体窒素を用いているので、超電導状態を長時間保って、浮上させておくには、液体窒素の量を維持する必要があります。けど、液体窒素は気化して減っていきますから、実験しながら維持するというのはとても大変なんです。

(※1)免震とは、地震の揺れを軽減して、大きな建物を守る方法のこと。通常は、地面と建物の間に「免震装置」を入れ、建物へ伝わる揺れを減らすようにしている。

(※2)完全反磁性(マイスナー効果)及びピン止め効果とは、超電導の磁気的性質のひとつ。詳しくは、以下の津田・宮城研究室の公式HPをご覧ください。
http://www.ecei.tohoku.ac.jp/hamajima/top.html

超電導電力貯蔵で、再生可能エネルギーの普及をはかる

石田さんはどのような研究をされていますか。

石田:地球温暖化やエネルギー問題の解決策につながる、再生可能エネルギーを有効活用するシステムの研究を行っています。再生可能エネルギーの発電出力はどうしても天候に左右されるため、変動の大きいことが課題です。家庭用の小容量の太陽光発電であれば、変動はバッテリーなどである程度吸収することでもできますが、再生可能エネルギーの大規模活用を考えると、即応性・大容量性・耐久性の面から一つのエネルギー貯蔵装置では対応することが難しくなります。そこで、超電導による電力貯蔵(超電導電力貯蔵/SMES※3)と燃料電池を利用して変動補償を行うシステムに取り組んでいます。

具体的に教えてください。

石田:SMESは大電力を瞬時に出し入れすることが可能なため、再生可能エネルギーで発電した電力の急峻な変動分を吸収させます。一方、燃料電池では、再生可能エネルギーで作った水素を燃料に発電することで、比較的緩やかな変動分を吸収させます。つまり、SMESと燃料電池で役割分担して、再生可能エネルギーの出力変動を補償する複合型エネルギー貯蔵システムを目指しています。

これはシミュレーションで研究しているのですか。

石田:いいえ、先輩方がシミュレーションでやってきたことを、2~3年前から実機、つまりミニチュア版の電力貯蔵システムを使って進めています。実機を動かすのはやはり大変で、それぞれの装置をどう制御するか、実際に手を動かして研究しています。

再生可能エネルギーの出力変動を補償する電力・水素複合エネルギー貯蔵システムの実験装置です(写真左)。研究室の屋上に設置されている太陽光発電や風力発電にもつながっています(写真右)。

その実機は、ご自分たちで作られたのですか。

石田:他大学やメーカーと共同で取り組んでいる研究なので、SMESなどは他の大学で作ったものを借りています。私は電力貯蔵システムの制御を担当しています。月に一度、違う大学の研究者同士が集まって会議をする機会もあって、研究の進捗を発表し合っています。こうした発表の経験を積めることも、この研究の魅力の一つですね。

研究に関して、どんなご苦労がありますか。

石田:電力貯蔵システム内の各装置の制御を行う電力変換装置(DC/DCコンバータ)は、実際に自分の手ではんだ付けして作るのですが、それがなかなか動かなくて苦労することがあります。ですから、しっかりと動いてくれたときは、すごく嬉しいです。プログラミングも同様で、自分で構築した回路を思い通りに動かすことができたときは、やりがいを感じます。

※3 超電導電力貯蔵(SMES)について詳しくは、身近な電気工学第11回を参照ください。

部活にバイト。メリハリある生活で研究と両立

皆さん、研究テーマがそれぞれ違いますが、他の方の研究の影響を受けたりしますか。

秋田:もちろんです。自分以外の研究もしっかり把握しようというのが津田先生の方針です。具体的には週に一度、ゼミで自分の研究についてと全員の前で発表し、聞く方はさも自分が担当しているかのように理解をしなくてはなりません。発表への質問も鋭いですよ。

石田:ゼミ以外の時間にも先生方とディスカッションすることが多いですね。

研究以外での皆さんのコミュニケーションはいかがでしょう。

秋田:研究室には憩いの場としての共有スペースがあり、就職の話やプライベートな話題で盛り上がっています。

北谷:みんなイベントが好きですよね。一緒に野球観戦に行ったり、花見や芋煮会を楽しんだりしています。スポーツも大好きで、週に一度、体育館を借りてみんなでフットサルをしたり、バスケをしたりしています。

石田:イベントを通じて、先輩・後輩関係なく、お互いの距離を縮めることができています。

ちなみに皆さん、部活やアルバイトとの両立についてはいかがでしょう。

秋田:私はアメリカンフットボール部に所属しているのですが、基本的には平日の早朝に部活を行い、終了次第、研究室に向かっています。部活にはそれなりに時間を割いているものの、メリハリのある生活が送れていると実感しています。

石田:学部時代は私もラクロス部の練習を終えてから研究室に通っていました。今は休日にレンタルビデオ店や試験官のアルバイトをしていますが、秋田さんがおっしゃるように私もメリハリのある生活ができていると自負しています。

北谷さんはどうですか。

北谷:私は学部時代から塾講師のアルバイトをしており、部活では軽音楽サークルに参加して定期演奏会や合宿にも参加しています。先輩方もみんな同じような感じで部活やアルバイトとうまく両立させていましたね。

津田・宮城研究室のメンバー。
前列の左から3番目が、津田 理教授です。宮城准教授は海外赴任中。

多様な分野で電気のスペシャリストが求められている

では、最後に皆さんの将来について、お聞かせください。

北谷:超電導ケーブルを用いて再生可能エネルギーを送電したり、もしくは超電導を用いた電力系統を構築したり、将来のエネルギー社会の変革に貢献したいですね。

秋田:私は鉄道業界に進むことが決まりましたので、電気のスペシャリストとして鉄道の安全輸送を支えていきたいと考えています。超電導リニアに代表されるように、鉄道業界の超電導の研究は大きく進んでいます。私はそれを日本国内で終わらせるのではなくて、鉄道に超電導を組み込んだシステムとして海外輸出したいと考えています。

石田さんはメーカー志望とのことですが。

石田:ええ。電気工学の知識を活かしてプラントのエンジニアリング業務を行いたいと思っています。特に鉄鋼プラントに携わり、日本の技術を活かすことで新興国などの発展に貢献できたら嬉しいですね。

皆さん、それぞれ進路が違うということで、電気工学の可能性の広さというものが感じられますね。

秋田:自動車も鉄道も電気で動きますし、電気は社会に必要不可欠ですからね。

石田:高校生の頃は電気というと電機メーカーしかないと思っていたのですが、化学工場だったり、鉄鋼だったり、本当に多様な分野で電気のスペシャリストが求められているということがわかりました。将来の選択肢の幅が広いことは、電気の大きな魅力だと思います。

本日は超電導の様々な可能性を知ることができました。皆さんのこれからのご活躍に期待いたします。ありがとうございます。

津田 理  教授(つだ まこと)

国公立/宮城県
東北大学 大学院工学研究科 電気エネルギーシステム専攻

津田 理教授(つだ まこと)
東北大学には伝統的に超電導関係の研究室が多く、工学研究科、理学研究科をはじめ、金属材料研究所、流体科学研究所等の附置研究所などで研究が活発に進められている。その様な状況の中、当研究室は2004年4月に発足した濱島教授の研究室を引き継ぎ、2012年4月にスタートした。現在、通算で11年目を迎えている。今年度(2014年度)は、スタッフ2名、大学院生(博士前期課程)10名、学部生5名、留学生1名の総勢16名で活動している。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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