電気の研究を通じて交流を広げ、 日本の未来に役立ちたい。

2015年2月5日掲載

今回は広島大学の電力・エネルギー工学研究室におじゃましてお話を伺いました。餘利野直人教授、造賀芳文准教授のもとで、幅広く電力システム工学に取り組んでいる研究室です。また学生同士のコミュニケーションが非常に盛んで、なんと駅伝大会4連覇という実績もお持ちとか。研究も、オフタイムも、とてもアクティブに過ごされている皆さんです。

※2014年12月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

子どもの頃の科学番組の記憶をきっかけに

なぜ電気工学を学ぼうと思われたのか、志望動機を教えていただけますか。清木場さんからどうぞ。

清木場:私はもともと手を動かしてモノをつくったりすることが好きでしたので、工学部に行きたいというのは決めていました。その中で、電気工学はかなり幅広い分野で応用できるということで選びました。

広島大学では、学部2年次に電気工学か情報工学のどちらに進むかを選ぶそうですね。

清木場:ええ。その後、4年次に研究室に配属されます。私の場合、4年次に進む際、電力関連の職業についている親戚から“自分のつくった電気で電車が動いているのを見るとやりがいを感じる”という話を聞いて共感し、現在の研究室を志望しました。

中村さんはいかがですか。

中村:私は小さい頃から科学的な実験を見るのが好きで、よくそういったテレビ番組を見たり、地元の大学の科学イベントに参加したりしていました。その中でも特に興味があったのが電気を使った実験でした。中学では面白い女性の先生がいて、電気のことをいろいろ教えてくれました。

素晴らしい原体験をお持ちですね。

中村:はい。そうしたことが記憶に残っていて、将来は電気に携わる研究がしたいと思うようになり、電気工学を志望しました。電力・エネルギー工学研究室を選んだのは、校舎の屋上に太陽パネルを取りつける工事をやっていて、地下の実験室にインバーターが取りつけられると聞いたんです。実際に自分もそれに触って実験ができないかと思って、志望しました。

続いて学部4年の梶本さん、お願いします。

梶本:高校時代は情報系に興味がありました。しかし、大学に入って研究室に配属される際、電力系統における発送電の安全性、中でも特に短絡事故や地絡事故時の系統の安定性の維持に関する研究について先輩からその面白さを教えていただき、こちらの研究室を選んだんです。その先輩というのが、ここにいる清木場さんなんですが(笑)。

そういうつながりがあったのですか。

梶本:ええ。電気工学は裾野が広いので将来きっと役に立つと聞いたのも決め手になりましたね。

再生可能エネルギー導入のための、インバーター強化

皆さん、現在はどのような研究に取り組まれていらっしゃいますか。

中村:私は系統安定化を目的としたインバーターの制御手法の研究を行っています。インバーターというのは直流から交流に変換する電力変換装置のことです。現在、太陽光発電のような再生可能エネルギーに注目が集まっていますが、そこで必要不可欠なDC-DCコンバーターやDC-ACインバーターから構成されるパワーコンディショナーは系統に事故が起きた際に停止してしまい、系統の安定度に悪影響を及ぼします。こうした事態を防ぎ、より安定化させる機能をインバーターに持たせようという研究をしています。

なるほど。具体的にはどのように安定させる仕組みをお考えなのですか。

中村:今のインバーターは系統事故が起きると、スイッチに大きな電流が流れるのを防ぐために、止まってしまうんです。そこで回転機が持つ同期化力(※1)をインバーターに実装し停止させずに運転することで、安定度を保とうという考えです。

電力変換を行うインバーターに、回転機の持つ力を入れるのは相当難しいと思いますが。

中村:そうですね。事故電流というのは予想もつかない過大な電流が流れる場合もあります。そのため、インバーターのスイッチに使う半導体デバイスなども耐圧の高いものにするといった、様々な対策を行う必要があります。こうした課題に対して、研究室の実験装置も使って、シミュレーションで検証していければと考えています。

これまで研究で印象的だったエピソードを教えてください。

「校舎の地下で実験を行っています。シミュレーションと実験では結果が変わってくるものが多く、大変ですが非常にやりがいがあります」中村さん。

中村:発電機の動揺(※2)を見るために、事故を起こして波形を観察するという実験を行っていたときのことです。シミュレーションでは簡単に動揺波形が得られたのですが、実験ではなかなか得られず、発電機の回転速度を調整するなど苦労しました。結局、発電機の入力電圧をわざと低くして安定度を下げることで、動揺を発生させることができました。考えてみれば簡単なことでしたが、なかなか思いつけなかったのです。

(※1)同期化力とは、発電機(同期機)が系統に連系している状態で、その同期状態を乱す系統事象(発電機故障や送電線故障等)があった場合などに、元の同期のとれた状態に戻すために発電機間で働く力。

(※2)発電機の動揺(電力動揺)とは、各発電機の運転の安定性が崩れた状態をいい、 放置すれば系統全体が崩壊に至る可能性がある。

日本で唯一の系統安定度の解析システムの開発

梶本さんはどのような研究をなさっていますか。

梶本:過渡安定度(※3)解析手法の1つである臨界トラジェクトリー法に関する研究に携わっています。

臨界トラジェクトリー法とは?

梶本:系統に故障事故が起きたとき、どの時間までに除去しなければいけないかを正確かつスピーディーに算出する方法が臨界トラジェクトリー法です。
より詳しく説明すると、ある種の系統モデルからどの母線に故障点があるかを指定して、その故障点で事故が起こったとき、発電機に対して故障除去しなければいけないギリギリの臨界点を「臨界故障除去時間」と呼ぶのですが、その時間を求めるものです。私はそのシステムの開発について研究を行っています。トラジェクトリーとは軌跡の意味です。

あまり聞いたことのない研究ですね。

梶本:そうだと思います。従来から過渡安定度に関しての研究はありましたが、この臨界トラジェクトリー法の研究を行っている研究室は、全国でここが唯一らしいのです。それを知ったときは驚きましたが、とても喜ばしく、誇りに思いました。

全国で唯一ですか!この研究はパソコンでシミュレーションをしているのですか。

「自分と同じ研究に携わっている先輩をはじめ、多くの先輩方から教えていただいています」梶本さん。

梶本:はい。シミュレーションソフトを用いて、システム開発を行っています。この研究は長年にわたって研究室と電力会社との共同研究で動いており、生半可な気持ちで取り組んではいけないという緊張感や責任感がありますね。

(※3)過渡安定度とは、系統事故等のような急激な擾乱(系統事故や負荷の変動等により電圧や潮流・周波数が乱れる現象)に際してもなお同期を保って送電できる度合いのことを言う。詳しくは電気工学用語集「系統安定度」を参照。

太陽光の発電量予測が外れたときの系統影響の研究

清木場さんの研究はいかがですか。

清木場:太陽光発電などが大量導入された際にも問題なく系統運用を行うためのシステム開発に取り組んでいます。私はその中で太陽光発電量予測を担当しており、翌日の発電量をより簡単にそしてより高精度に予測できるよう、研究を行っています。

太陽光の発電量の予測に誤差が生じると問題が発生するということでしょうか。

清木場:現状ではどの時間帯にどれだけ発電できるかがわかっておらず、予測した値から外れたときに系統に問題が発生してしまうのです。この研究では、誤差がシステムにどのように影響を与えるのかということを検証していく予定です。加えて、研究室に導入された模擬系統を用いてシステムが有効なものであるのかについても検証していきます。

発電量を予測するのではなく、予測が外れたときのことを研究するとはユニークですね。

清木場:現在、パソコンのシミュレーション上で、簡単な系統の前日計画から当日運用まで一通りの流れが熟考できるようなプログラムを作成しているところです。実際にそこで予測外れを試してみて、周波数であったり、電圧であったり、いろいろな電力系統のパラメーターを確認しながら、こういうところに影響が出るんだなというのをチェックしています。

「今後はこの太陽光パネルを実際に使って模擬系統をつくり、検証をしていくつもりです」清木場さん。

研究をされていて何か印象的なエピソードはありますか。

「YPCの表彰状です。ポスター発表ですから目の前にいる人に向けて発表しなくてはならず非常に緊張しましたが、多くの方に興味を持っていただけました」清木場さん。

清木場:電気学会でポスター発表を行った際、YPC(Young engineer Poster Competition)を受賞し、多くの方から質問やアドバイスをいただいたことが嬉しかったです。学会中、学生ブランチで交流会を持つことができ、他大学の方と電気工学についてディスカッションする機会がありました。これも自分にとってはかなり刺激的なことでした。

研究室対抗の駅伝大会で見事に優勝

研究室にはどんな特徴がありますか。

清木場:校舎が新しくなってからまだ2年ほどしかたっていません。また、校舎のリフォームと同時に様々な実験機器を導入してもらえました。それが先ほどお話しした、屋上の太陽光パネルであり、地下の実験室に設置されたインバーターやバッテリー、発電機といった設備です。

屋上に設置された太陽光パネルの電気は地下の実験室に送られてきます。実験室には、インバーターやバッテリー、発電機といった設備があり、実測とシミュレーションとの比較検討が行えます。

中村:それから学部生から院生までが同じ研究室に所属しており、学生同士の意見交換や相談などが活発です。バスケやサッカー、バレーなどのスポーツも盛んです。

清木場:スポーツは年に一度、研究室対抗の駅伝大会があるのですが、その際はOBも駆けつけてくれます。実は駅伝大会では4連覇中なのですよ。

4連覇!それはすごいですね。皆さんも走られるのですか。

2014年の駅伝大会での記念撮影です。大会終了後の懇親会も盛大で、OBも含めて盛り上がります。

梶本:もちろん、研究室のほぼ全員が走ります。駅伝大会で優勝したときは、研究室全体が一丸となって走り、とても感動しました。さらにOBも出場して、我々と競い合います。

中村:OBは速いですね。本当に速い(笑)。

先生とのコミュニケーションはいかがですか。

前例左から2番目が佐々木豊助教,3番目が餘利野直人教授,4番目が造賀芳文准教授です。

清木場:各先生方のもとで定期的なゼミが行われており、その際に研究の進捗を見ていただくわけですが、和やかな雰囲気の中、忌憚のない意見を交わしています。

梶本:先生方は飲み会にも参加してくれるので、そこでの話も楽しいですよ。また、他大学との合同ゼミ、企業との共同研究、国内外の学会に活発に参加していて外部団体との交流の機会が多く、つながりを広く持てることも魅力的ですね。

留学生と共に地域発展の道を探る活動も

普段の研究生活はどんな感じでしょうか。

清木場:朝9時に登校して12時まで研究、お昼を挟んで午後も研究やゼミの準備などで過ごし、18時頃に友人や後輩と食事して帰るという感じですね。だいたいみんな同じ感じだと思います。

中村:私も9時頃に大学に来て、授業や、リーディングプログラムの学生とのディスカッションなどを行っています。

リーディングプログラムとは?

中村:広島大学には、「たおやかリーディングプログラム」という修士課程・博士課程の5年一貫性のプログラムがあるんです。これは、発展途上国や過疎地などが抱えている問題を、技術系の学生だけでなく文化系、社会実装系の学生と話し合って解決の道を探っていこうというものです。留学生がほとんどですので、コミュニケーションには英語が不可欠ですね。サークルやアルバイトはしていませんが、リーディングプログラムで海外からの留学生と交流して、貴重な時間を過ごすことができていると思います。

お二人はサークルやアルバイトについてはいかがでしょう。

梶本:広島大学のアカペラサークルという、人数の多さでは上から数えて1番か2番ぐらいじゃないかというほど大きなサークルに所属しています。クリスマスシーズンにストリートでライブをやったり、先日は大阪の大きなホールで歌ってきました。あと、アルバイトはコンビニです。

清木場さんもアルバイトを続けられていますね。

清木場:飲食店のアルバイトを学部の1年生からずっと続けています。ただ、今は研究にウエイトを置くため、回数は控えめです。加えてTA(ティーチングアシスタント)の仕事がありますので、自分でしっかりスケジュール管理して、研究進捗に影響が出ないようにしています。

日本の電力の素晴らしさを再認識できた

電気工学を学んでよかったと思うのはどういうことですか。

梶本:私たちの住む日本の電力工学事情について知識を深めていくことで、この国がどれほど電力面で安定かつ信頼性が高いのかということを学ぶことができました。世界には停電も珍しくない国が多いのに、日本ではめったに起きませんよね。自分が生まれ育ってきた環境がいかに恵まれていたかを、改めて感じました。

中村:私は大学に入ってから電気工学を専門に学び始めたんですが、自分の知識がどんどん広がっていくことが実感でき、いろいろなところで活かせるのではないかという可能性の大きさを感じています。

清木場:世間ではエネルギー問題への関心が高まっていますが、専門的な知識を得た上で考えることができるのがよかったと思います。あと、現在の研究室に入ってよかったのは、パワーアカデミーの学生イベント「GPAN」の企画運営や学会への参加を通して多くの方と知り合えたことですね。

最後に、皆さんの将来の夢について教えてください。

中村:私の所属するリーディングプログラムが目標としている条件不利地域の持つ問題を解決することが大きな目標です。卒業後はその経験を活かしてグローバルに活躍できる研究者になることを目指します。

留学生に囲まれているわけですから、やはり目は世界に向くわけですね。

中村:そうですね。最近では英語が先に口から出てきて、日本語が出てこないこともあります(笑)。

梶本さん、清木場さんはいかがでしょう。

梶本:電力会社に就職し、日本を電力面から支えたいですね。そして自分が感じたように、日本という国の素晴らしさを他の誰かにも感じてもらえるよう、貢献したいと思います。

清木場:私は現在の研究と直接関係はありませんが、生活基盤を支えたいという思いから通信会社に入社することを決めました。インフラという点では現在の研究と通じる面がありますから、研究室での知識、経験を活かして頑張りたいと思います。

皆さんのご活躍を楽しみにしています。今日はありがとうございました。

餘利野 直人教授(よりの なおと)

国公立/広島
広島大学 工学部 第二類 電気電子工学課程

餘利野 直人教授(よりの なおと)
当研究室は1949年開設されました。広島大学工学部において、長年電力システム工学分野での研究と教育に携わってきた伝統ある研究室です。2014年度はスタッフ3名、客員研究員:3名、大学院生21名(博士課程:2名、修士課程:19名)、学部生10名の総勢37名が活動しており、博士課程1名と研究員3名は外国人留学生です。本学電気系の中で、最も規模の大きな研究室のうちのひとつです。大学院へ進んだ学生は、国内外の学会に活発に参加し、教員についても学会の委員会や政府の研究会などに頻繁に参加しており、研究はもちろんのこと、社会貢献にも積極的に取り組んでいます。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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