先進の技術と知識で、 これからの電力を支えたい。

2014年4月25日掲載

琉球大学の與那篤史先生の研究室は、電力エネルギーシステム制御研究室で電力系統、パワーエレクトロニクス、再生可能エネルギーなど幅広い分野において、先進の研究を行っています。留学生も多く研究室にいても海外留学しているような雰囲気の中、今回お話を伺った学生の皆さんは、まさに就職直前。就職を控えての現在の心境や研究生活の振返り、そして電気工学について熱く語っていただきました。

※2014年2月現在。本文中の敬称は略させていただきました。。

エネルギー問題をきっかけに電気の道へ

皆さんはなぜ電気工学を学ぼうと思われたのでしょうか。與座さん、教えてください。

與座:私は、小学生の頃に地球温暖化についてテレビや新聞で知り、子どもなりになんとか解決できないかと思ったことがそもそものきっかけです。そこから自然エネルギーを用いて発電する太陽光発電や風力発電に興味を持つようになり、発電原理や仕組みについて詳しく学ぼうと思いました。だから高校1年生の頃には工学部に入ろうと決めていましたね。

早いですね!泉さんはいかがですか。

:私の場合は、高校の頃に沖縄電力の金武火力発電所(きんかりょくはつでんしょ※1)の見学に行ったことがきっかけです。発電プラントのスケールに圧倒され、そこで電力エネルギーのインフラとしての重要さや再生可能エネルギーによる省エネルギーの大切さを知りました。もともと理系だったのに加えて、電力に関する興味がわいてきましたね。

なるほど。お二人ともエネルギーということがきっかけで興味をお持ちになったようですね。宮城さんはいかがですが。

宮城:私は少し違っていて、小さい頃から機械いじりが好きで、「動く仕組み」に興味を抱いていました。4~5歳の頃には当時のブラウン管テレビをドライバーでばらしていたらしいです。よく覚えてないのですが、今でも親戚にはよく言われます。中学の頃には伯父と一緒にパソコンを組み立てまして、その頃から目に見える「動く仕組み」から目に見えない「動く仕組み」に関心が移っていきました。それが電気を志望する第一歩となりました。

(※1)金武火力発電所(きんかりょくはつでんしょ)は、沖縄県北部に位置する沖縄電力(株)の石炭火力発電所。

電力自由化時代におけるスマートハウスの研究

與座さんはどのような研究に取り組まれていらっしゃいますか。

與座:私は「スマートハウスにおける可制御負荷の最適運用方法に関する研究」を行っています。

スマートハウスとは賢くエネルギーマネジメントを行う住まいのことですね(※2)。最近ではテレビのCMでもよく耳にします。

與座:ええ。現在でもオール電化住宅には蓄電池や太陽光発電、ヒートポンプ給湯器などが導入されています。今後はさらに電気自動車なども普及してくると、需要家側で運用が制御可能な機器が多く導入されることが予想されます。

それらが“可制御負荷”の機器というわけですね。

與座:そうですね。私が行っている研究は、これらの機器の1日のスケジューリングについてです。将来、1時間ごとに電気料金が変化するリアルタイム価格が選べるようになった場合に、住宅の光熱費を最小化する機器の最適運用方法を決定する手法について研究しています。

とても興味深い研究ですね。電気料金は今後、変わっていくのですか。

與座:先輩の研究を引き継いだ時は、電気料金は固定制だったのですが、東日本大震災をきっかけに自由化が一気に進みました。それで1時間ごとに電気料金が変動していくことを前提とした研究へと、大きく舵を切りました。経済学もまじっている研究だと思っていただけたら良いと思います。

(※2)家庭を対象としたエネルギーマネジメントシステム(EMS)については、身近な電気工学「バレーも電力もIT管理。」をご覧ください。またオール電化住宅については、「電気工学の最先端」をご覧ください。

沖縄周辺の離島へ再生可能エネルギーの導入を目指して

泉さんはどのような研究に取り組まれていますか。

:太陽光発電や風力発電は気象条件によって出力が変動します。そうした「不安定な再生可能エネルギーを小規模電力系統に導入した際の、周波数変動や電圧変動を抑制するための手法」を研究しています。

小規模電力系統というと?

:例えば離島ですね。沖縄にはたくさんの離島がありますので、太陽光発電や風力発電を導入しつつ、お天気任せの部分をできるだけ抑えようというわけです。そのために水の電気分解装置(水素エネルギー)や燃料電池を用いて、再生可能エネルギーの出力変動抑制を提案していきます。それによって将来は再生可能エネルギーのみで電力供給をできたらと考えています。

ご苦労されるのはどんなことですか。

:シミュレーション上で電力系統モデルを構築して解析した際、納得のいく結果が得られた時は楽しかったのですが、そのために論文を読みあさるのは骨の折れる作業でした。特に海外での研究はかなり進んでいるので、関連する文献を探してきてそれを上回る規模の電力系統モデルを構築するというのが大変でしたね。

太陽光発電を見える化するための新たな情報ネットワーク

宮城さんの現在の研究について教えてください。

宮城:太陽光発電によって得られる電力などの情報を効果的に活用するために、「センサー素子とマイコン、無線通信モジュールを利用した無線センサーネットワーク構築に関する研究」に取り組んでいます。

対象は太陽光発電ですか。

宮城:はい。ご存じのように、太陽光発電は天候によって発電量にばらつきが生じてしまいます。例えば今日は曇りで発電量が少ないとか。そういう情報を「見える化」することで、電力系統への効果的な対策が可能になるわけです。

従来からもそうしたシステムはありませんでしたか?

宮城:ええ。ただ基本的には有線でやっています。そのため、どうしてもセンサーの設置場所などが限定されてしまうといった問題が発生します。そこでセンサーを無線化することでこの問題を解決し、さらにWi-Fi通信と既存の無線LAN設備を利用して、安価でフレキシブルな計測システムを構築していきます。

インターネットにもカンタンにつながりますね。

宮城:そうですね。ネット上でリアルタイムに情報を得るようにすれば、蓄電池の状態推定や太陽光発電電力予測への応用も期待できます。今、注目のクラウドコンピューティングなども活用できればと考えています。ただし、セキュリティー面で大きな課題もあり、もし侵入されたら、電力系統が大変なことになります。これらの課題に取り組むには、インターネットのプロトコルから理解しなければならず大変でした。

まるで情報工学という感じですね。

宮城:ええ。実際に情報工学の方へ聞きにいったこともあります。私たちは普段何気なくメールやネットを使っていますが、それは数えきれないほど様々な経路を経て送信者から受信者のもとへ情報が送られてきているということが分かりました。そのあたりがとても難しく、かつ面白くもありました。

実際に研究に使用している、WiFi対応のアンテナです。

海外留学をしている気分になる研究室です(笑)

與那研究室は、どのような雰囲気の研究室ですか。

宮城:OBとのつながりが非常に強い研究室ですね。全然知らないOBの方から、食事の呼びかけがあったりします。研究室が同じというだけなのに、とても結びつきが強いです。

:もちろん研究室の仲間とも親密ですよ。毎日顔を合わせますし、一緒にご飯に行ったり、わからないことはお互い意見を言い合ったり、円滑で友好的な関係を築いています。

宮城:飲み会も年に数回あります。居酒屋でやったり、大学の中で場所を借りて自分たちで料理を手作りしてみたり。簡単な料理ということで刺身が多いですが。留学生も一緒に楽しんでくれます。

與座:外国人留学生には宗教上の理由で食べられないものもありますから、そのあたりは気を遣って料理します。

面白いですね。研究室には留学生の方が多いのですか。

まさしく国際色あふれる研究室!前列中央が、與那篤史助教です。

:ええ、3分の1から2分の1ぐらいが外国人留学生です。出身地も多彩ですね。留学生とは英語でコミュニケーションをとるため、研究室にいても海外留学をしているような気分になります(笑)。

宮城:アルジェリア、タンザニア、エジプト、中国、インド、ベトナム、バングラデシュ、アメリカ…多国籍ですね(笑)。

與座:日本語を話せない方が多いので、コミュニケーションの基本は英語ですので、そこは苦労しますね。私は外国人留学生チューターとして様々なサポートをしているのですが、1対1で話し合う機会も多く、英語力の大切さを痛感します。

:海外の学会発表に行く際には、発表練習に付き合ってくれるので様々な面でお世話になっていますね。

研究生活はみんなと協力してスキルアップを目指す

研究についてのコミュニケーションは、皆さん、どんな感じですか。

與座:週に1回、研究報告ゼミが行われます。また、各自が自分の研究に関係する英語論文を読み、内容を説明する論文ゼミがあります。その際は、各自の研究内容についてみんなで深く議論します。

:研究成果をみんなで共有し、さらに知識を深め合っていく感じですね。

與座:あと、電気新聞や日刊工業新聞を定期購読していますので、先生が勧める記事を回し読みして、自主的に意見を話し合っています。

研究室全体でいろいろなことに取り組まれていますね。

與座:ええ。それから「電気主任技術者サークル」というサークルに所属しています。これは電気主任技術者の資格を取るために、試験日の3ヵ月くらい前からみんなで勉強しようというサークルです。他に「電子情報通信学会学生ブランチ活動」も研究室メンバー主体で行っています。電気情報通信学会から予算をいただいて、講演会などを行う活動です。

宮城:どちらも研究室のメンバーは全員参加しています。まあ、私は皆さんに頼りきりで、講演を聞くだけですが(笑)。

研究かサークルか区別がつきにくいですね(笑)。普段はどのような学生生活を送っていますか。アルバイトなどもやられていますか。

宮城:もちろんです。朝10時頃から研究室に入って、日中はほとんど研究に没頭していますね。12時と18時にはしっかり食事をとっています(笑)。アルバイトは日曜日に趣味の音楽関係のことをやっています。

與座:私も同じような感じで、ほぼ毎日朝10時頃に研究室に来て、授業、課題、研究に取り組んでいます。アルバイトも、TA(ティーチングアシスタント)や外国人留学生チューターをやっています。

:次の日の研究や講義に支障が出ないように、帰りもあまり遅くならないように気をつけています。バイトも同じようにTAをやっています。

研究者として学んだことを、技術者として発揮していきたい

電気工学を学んでよかったと思うのはどういうことですか。

宮城:電気のことがわかるので、友だちから「パソコン壊れたから修理して」みたいな感じで頼りにされますね。アルバイト先のAV機器が動かなくなったときも、はんだ付けして修理してあげたり。

與座:私たちの生活は電気製品に囲まれていて、しかも相当に進化しています。電気工学の基礎や原理を学んだおかげでそれらの仕組みについて理解できるのが、電気工学を学んだ強みです。

:発電プラントや電力設備の見学に行った際に、より興味を持って見学できるようになりました。電気を学んでいたおかげで、より深く理解でき、感動も大きくなったと思います。私は電力会社に入社しますので、さらに電気の知識を深めていきたいですね。

では、就職されたらどんなことに取り組みたいですか。

:やはり電力の安定供給はこの先もずっと課題になると思いますので、より品質のよい電力を安定的に提供するという志は大切にしたいと思います。

宮城さんも就職が決まっているそうですね。

宮城:はい。卒業後は配電設備工事会社へ入社することが決まっています。当面は、第一種電気主任技術者の資格を取得することが目標です。

與座さんはいかがでしょう。

與座:私も電力会社に入社する予定です。大学院では机の上での勉強がメインでしたので、今後は電力技術者として実際の発電、変電、送電機器に触れることで、自分の知識に磨きをかけていきたいですね。そして、電気工学の知識を活かして地域の電力の安定供給に貢献したいと思います。

残り少ない学生生活を大事に。みなさんの社会へ出られてからのご活躍に期待しています。今日はありがとうございました。

與那 篤史  助教(よな あつし)

国公立/沖縄県
琉球大学 工学部 電気電子工学科

與那 篤史助教(よな あつし)
当研究室は、2008年開設。電力系統の既存設備や高価な蓄電池を有効に活用することを目的として、気象予測情報による自然エネルギー利用システムの最適運用方法や、予測誤差を用いた最適容量の決定方法を開発しています。2014年度は大学院生4名、学部生2名が活動しています。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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