世界に広がる活躍のステージ。 社会貢献への期待に応えたい。

2016年10月31日掲載

物理への興味をきっかけに電気工学を専攻するようになったという花井さん。電力インフラの研究をしたいと考えられ、大学院で博士後期課程に進んで配電系統の電圧管理に関する研究に従事した後、電力中央研究所に入所されました。沖縄県の宮古島での研究活動や国際学会での発表など、精力的に取り組んでおられ、今後は発電分野と送配電分野を協調させる具体的な方法論に挑戦したいと考えていらっしゃいます。

プロフィール

2006年3月
福井大学 工学部 電気電子工学科 卒業
2011年3月
福井大学大学院 工学研究科 システム設計工学専攻 博士後期課程 (松木・林研究室) 修了
2011年4月
電力中央研究所 入所
現在
システム技術研究所 電力システム領域 主任研究員

※2016年9月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

電力システムの社会貢献度の高さにひかれて

花井さんが電気工学を専攻されたきっかけは、もともと物理が好きだったためとか。

花井:子供の頃は、自然とか昆虫、恐竜など生物に関することが好きでした。物理に興味を持つようになったのは高校に入ってからです。物理の先生と話しているうちに、数式や理論によって物理現象が解き明かされていくのが面白くて、物理って楽しいなと思うようになりました。それで電気・電子について学びたいという思いから電気工学を専攻することに決めました。

福井大学に進学されたのはなぜですか。

花井:私は実家が名古屋なのですが、やはり都会ですので、一回、田舎暮らしをしたかったという思いがありました。福井県は名古屋から近いですし、また、特に興味のあった太陽光発電を研究されている先生がいらっしゃったので福井大学へ進学しました。今振り返っても、福井県というのは人も環境も伸び伸びしていて、ご飯もおいしいですし、勉強に取り組むという点ではとてもいい場所だったと思います。

福井大学では電気電子工学科を卒業された後、院に進んで電力システム研究室に入られましたね。当時は、松木純也先生が教授で、現・早稲田大学の林泰弘先生が助教授だったとか。

花井:ええ。大学3年生の頃に将来のことを考えるようになったとき、電力システムというものの社会貢献度の高さに気がついて、将来は電力インフラの仕事に就きたいと希望するようになり、それで電力システム研究室に進みました。

そして、そのまま博士後期課程へ進まれていますね。

花井:はい。前期課程で卒業して、就職することも考えましたが、もう少し研究者個人として評価されたいという思いが生まれました。結局、研究室には6年間在籍しました。

配電系統アナログシミュレータを構築して研究

研究内容について教えてください。

花井:主に配電系統の電圧管理に関する研究に従事していました。具体的には低電圧の6600ボルト以下の配電系統を対象に、電柱に設置されたセンサ内蔵の自動開閉器から得られる電圧データを基に変圧器タップ(SVR)や調相設備(SVC、STATCOM(※1)など)を制御することで、再生可能エネルギー電源の導入量をどの程度まで増加させることができるかを検討しました。

具体的にはどのように研究を行っていたのですか。

花井:配電系統を模擬したアナログシミュレータと計算機シミュレーションの双方を用いて、課題抽出からモデリング、問題解決まで取り組んでいました。実際の物理現象や計測機器の問題などを実感として理解できるのが非常に面白かったです。

配電系統を模擬するアナログシミュレータは、おつくりになられたのですか。

花井:ええ、林先生のグランドデザインのもと、いくつか仕様設計から携わることになりました。実際の配電設備の機能を実装するため、電力会社や計測機器メーカー等と意見交換しながら、将来の研究課題の可能性を考慮して、汎用性・拡張性のある設備を作ることができたと思います。

企業との共同研究の機会もありましたか。

花井:はい。電力会社、ガス会社、電機メーカーとの共同研究に携わることができました。現状の実務における技術課題の解決などに取り組ませて頂き、大変勉強になりました。このような経験のおかげで、ずいぶん自分の視野を広げることができたと感じています。

研究室には6年間在籍されたとのことですが、どんなことが特に思い出に残っていますか。

花井:今もお話しした企業との共同研究と、あとは学会発表を積極的に行っている研究室だったので成果を出すために日々忙しく過ごしていたことですね。そんな中、同期の仲間と励まし合ったり、休日には釣りに行ったり、冬は鍋を囲んだりといったことが思い出に残っています。学会にもずいぶん参加し、電気学会を中心に、電力分野の国際会議であるICEEやPSCCなどで発表させていただきました(※2)。学会は知見を広げることができるので大好きです。論文発表への質問をきっかけに新しい人間関係ができるなど、いろんな輪が広がっていきました。実は今の上司とも、当時の学会の場で会っています。

(※1)STATCOMについて詳しくは、学生インタビュー北海道大学をご覧ください。
(※2)ICEE(International Conference on Electrical Engineering)とは、日本、中国、韓国、香港の4つの電気学会が世界に向けて毎年共同開催している電力エネルギー分野の国際会議。PSCC(Power Systems Computation Conference)とは、電力系統計算国際会議。

電力系統の信頼性向上と、再生可能エネルギー導入下の最適な需給計画のために

2011年の春に電力中央研究所に入所されましたが、動機を教えてください。

花井:研究室に在籍していた当時から電力中央研究所の存在は知っていました。私自身、大学院での研究にはやりがいを感じていたので、その研究成果を中立的な立場で電力会社の業務に反映させることができると思い、志望することに決めました。やはりアカデミックな研究は続けていきたいという思いは強かったですね。また、電力会社や国際研究機関へ出向するチャンスがあると知ったのも、動機の一つです。

現在のお仕事内容について、お聞かせください。

花井:入所以来、主に電力系統の供給信頼度解析と需給運用計画策定に関する研究に携わっています。前者は、系統設備の故障で発生しうる供給支障を確率論的に評価するもので、系統設備の増強や保守・更新の評価への適用を検討しています。後者は、需給運用コストが最小となる発電設備の起動停止計画を策定するもので、再生可能エネルギー大量導入下での需給運用計画策定および市場価格分析への適用が期待されています。

系統設備の故障で発生しうる供給支障を確率論的に評価するというのは、どういうことでしょう。

花井:発電設備から送変電設備を通じて需要家に届けられる間、変電所などで故障が発生した場合、停電がどの程度発生しうるのかということを解析します。例えば、遠方に風力発電設備が増えたとして、そこで事故が起きたときに、現在の供給設備でどの程度対応できるのか、現在のネットワーク構成のどこを増強すると供給信頼度が上がるのか、といったことを研究しています。

後者の需給運用計画策定についてはいかがでしょう。

花井:電力会社は数多くの発電設備を持っており、それらをどう運転するか、膨大な組み合わせの中から「需給運用計画」というものを定めています。私は、それらの実用時間内に燃料コストが最小となるような発電機の運用計画を作成する研究を行っています。実際の例としては、数多くの再生可能エネルギーが使われている宮古島で、蓄電池とディーゼル発電、カスタービン発電の燃料コストが最小となる運用計画を作成し、沖縄電力さんと共同で需給運用の実証試験を行いました。

商用系統を使った、宮古島の実証試験が高い評価を得る

宮古島での実証試験は、いかがでしたか。

花井:宮古島での実証試験は、沖縄電力さんが所有する宮古島メガソーラー実証研究設備を使用して、沖縄電力さんと電力中央研究所が共同研究を行ったプロジェクトです。実証試験の際には宮古島の発電所に沖縄電力さんと一緒に詰めさせてもらって、運転員の皆さんが実際に系統運用する様を身近で見聞することができ、非常に印象的な体験ができました。実証試験は5年計画で行っていて、私は3年目からの途中参加となりました。宮古島には再生可能エネルギーが大量に導入されており、系統運用に大きな影響を与えています。その中で、試験の前日に翌日の需要予測や再生可能エネルギーの出力予測を立て、どんな組み合わせで発電機を運用したら燃料コストが最小になるかを計画します。その計画に基づいて沖縄電力さんが発電機を運転するわけですが、どうしても天候次第のところもあって、晴れの予報だったのが実際は曇りで計画どおり太陽光発電の出力が得られず、運用計画どおりにいかないといった苦労も多かったです。この実証試験は昨年度で終わりまして、研究成果は国内外の学会で発表しており、今年8月にはCIGRE(国際電力会議)のパリ大会で発表しました。

学会ではどんな反響がありましたか。

花井:やはり宮古島で実際の商用の系統を使って実証試験を行ったという点は、インパクトがあったようですね。電力分野というのは、普通はシミュレーションがメインですから、実系統における試験ということで評価いただいたと思います。我々も生の系統運用を間近で見ることができて、勉強になりました。

学生時代に身につけた知識や経験は、お仕事にどのように活かされているでしょう。

花井:学部生時代は、電気工学、情報通信工学、半導体の電気物性など、幅広く学びました。これらの知識は、電力系統という巨大な電気回路を研究する上で重要な基礎となっています。電力会社とやりとりする際も、電力系統の特性に対する十分な理解が必要となりますので、その点でも役に立っています。やはり学生時代の勉強は、社会に出て活躍する上で重要なベースになっていると感じています。

2016年8月に行われたCIGRE(国際電力会議)パリ大会での花井さん

花井さんが研究に取り組まれた、宮古島メガソーラー実証研究設備。(写真提供:沖縄電力)

電気工学を研究すると、未来社会の先端を行ける

今後はどのような仕事に取り組みたいとお考えですか。

花井:今後、発送電分離が進む中、発電分野と送配電分野をどう協調させていくかが課題になってくると思います。ヨーロッパを見ても、うまく協調できているとは思えません。ですから私は、そのあたりを解決する方法論について取り組みたいと考えています。具体的には、事業者が送配電系統の投資を行う際に指標となるリスク評価の方法や技術評価の方法などを提案できたらと思っています。

今後の社会にとって非常に価値あるテーマですね。

花井:ええ。その際には海外の事例や知見というものが重要になると思いますので、CIGREやIEEEなどの国際学会への貢献も増やしていくと同時に、海外のケースをうまく日本にフィードバックさせる役割を果たしたいと考えています。

今振り返って、電気工学を学んでよかったと思うのはどんな点ですか。

花井:今後も電化はさらに進んでいき、身の回りのほとんどのものが電気・電子回路で動くようになるでしょう。電気工学を研究していると、そうした未来社会の世界観を先んじて持つことができると思います。また、実際の社会や産業に深くコミットしていく学問なので、社会とのつながりを感じながら学べる点も魅力だと思います。

電気工学を学んでいる学生の皆さんにアドバイスをお願いします。

花井:電気工学を学んだ学生の皆さんには、色々な分野への就職の可能性が広がっています。企業の期待も大きいですし、実際の採用人数もかなりの数になります。あとは、できれば英語のスキルを磨くといいと思います。私も最初は英語が苦手でしたが、論文を読んだり国際学会に出席したりしているうちに自然と抵抗がなくなり、コミュニケーションできるようになりました。電気や物理現象というのは万国共通ですから、その知識プラス英語のコミュニケーション能力があれば、皆さんの可能性は世界に広がっていくでしょう。

今後のご活躍を楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました。

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