グローバルな視点を持ちながら、 日本の電力を発展させたい。

2017年1月31日掲載

今回は福井大学の田岡・高野研究室におじゃましました。留学生が多く所属する研究室ということで、日本語と英語の混じり合った会話が飛び交う国際色豊かな研究室です。チームワークを大切にしつつ、それぞれが自分のテーマに真剣に打ち込んでいらっしゃいます。

※2016年11月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

「これからは電気」というアドバイスに従って電気工学へ

皆さんはなぜ電気工学を志望されましたか。

三田村:高校1年の時の物理が面白くて、高校2年で文系・理系を選択する際に理系を選びました。その時、やっぱり電気の話が一番身近な存在であると感じて、大学では電気・電子工学科に進みました。大学に合格してすぐに東日本大震災が発生したのですが、電力不足や計画停電といった報道を聞き、私たちの生活は電気に支えられているということを改めて実感したものでした。

大学に合格してすぐに東日本大震災だったわけですか。それは感じるところが大きかったでしょうね。

三田村:はい。合格が決まって1週間後に大震災が発生しましたから。

大学院に進んで、田岡・高野研究室を選ばれたのはどうしてですか。

三田村:一番のきっかけは授業でした。田岡先生は授業で、電力システムとはどういうものなのか、発電機とはどういう構造になっているのかといったことを教えてくださって、これは面白そうだと感じ、田岡先生の研究室を選びました。あと、半導体など弱電分野の授業に対して少し抵抗があったことも、今の研究室を選んだ理由の一つかもしれません(笑)

堤さんはいかがでしょう。

:私はもともと理系教科が得意だったのですが、その中でも物理の電気分野はハードルが高くてやりがいがありました。高校時代は公式を覚えることが主だったので、本質はどうなっているのだろうと、もっと深く学びたいと思ったことが一番のきっかけです。

実際に大学に進まれていかがでしたか。

:面白かったです。電力を送電する際の難しさなどについて学びましたが、高校時代の公式を使って問題を解くというやり方とはまったく違う頭の使い方をしましたので、どんどん面白くなっていきました。

田岡・高野研究室を選んだ理由を教えてください。

:他の研究室に比べて学会発表の機会が多いと聞いたからです。私は人前で話すことが苦手だったので、学会発表をチャンスに人前で話すことが上手になりたいと思いました。もちろん自分の研究を、学会を通じて大勢の人に伝えたいという思いもありました。

では、菅原さん、電気工学を志望された理由は何でしたか。

菅原:私も理系が得意だったので、就職のことを考えて高等専門学校に進むことにしました。親が建築関係の仕事をしており、その時は自分も建築を専攻するつもりだったのです。ところが父に相談したら「これからはどんな分野でも電気の知識が必要になる。建築はやめとけ、電気や」と言われ、それで高専の電気情報工学科に進むことにしました。

高専ではどんなことを学ばれましたか。

菅原:誘導電動機の磁界解析をしていました。難しくて理解するのに苦労しましたが(笑)。

その後、福井大学に編入されたと?

菅原:いえ、高専卒業後、関西電力に就職し、変電設備保守の仕事に就きました。その後、会社の奨学生制度を活用して24歳の時に福井大学に編入したのが今に至る経緯です。大学へ編入しようと思った理由は、社会で働く中でもう一度電気のことをしっかり勉強し直したいと思ったからです。だから私は学生でありながら関西電力の社員でもあります。

太陽光発電導入後も、配電ネットワークを正常に事故復旧するために

皆さんの研究内容について教えていただけますでしょうか。菅原さん、いかがでしょう。

菅原:私は、配電ネットワーク事故復旧問題について、確率計画法を用いた枠組みの検討を行っています。配電ネットワーク事故復旧問題とは、配電設備に事故が発生した際に事故区間を切り離して他の健全区間を復旧するネットワーク構成を決定するという問題です。この時、一番重要なのは事故前にどれくらいの電気が使われていたかという情報になります。近年では太陽光発電システムが普及したことで、運用者が計測している電流は太陽光発電システムの出力分を差し引いた情報になります。これはとても不確実な情報ですので、いかにその情報を表現して、問題に取り入れるかが研究のポイントです。

事故が発生したときに実際にどれぐらいの電気が使われていたかが重要ということですね。

菅原:ええ。事故が起き停電が発生すると、太陽光発電は一旦停止しますので、事故復旧直後は太陽光発電でおぎなっていた分の電力も電力会社が送らなくてはなりません。さらには復旧した後に、また太陽光発電が運転を始めるので、そのような状況までを想定して、最適化問題(※1)の枠組み、およびその解法を検討します。それらを基に、問題を解くプログラムを作成し、最終的にシミュレーションで確認します。

研究で印象的なことはどんなことですか。

菅原:業務では経験的にできていることが、実際に数式やシミュレーションを使って深く突き詰めていくと、実はとても奥が深いことだと感じます。例えば配電系統の不確実性については、太陽光発電システムの変動や負荷の変動を数式で表現しようとすると、予想以上に難しいです。だからこそ、本質から外れることなく、わかりやすい表現ができたときは、達成感が得られます。

(※1)電気工学における最適化問題については、研究者コラム vol.19『最適とは何だろう?』をご覧ください。

電力系統への太陽光発電のさらなる導入拡大へ向けて

堤さん、研究内容を教えてください。

:私は、太陽光発電導入時における系統安定度解析および新型単独運転検出機能の動作評価に関する研究をしています。太陽光発電の電力系統への導入拡大に伴い、単独運転(停電や電力事故などで、電力会社からの電力供給が停止されても発電が継続すること)の発生や、系統安定度の悪化が懸念されています。そこで、シミュレーションによって単独運転検出機能の検出性能の評価や、系統安定度への影響の評価を行い、それらの改善と太陽光発電を系統連系する際のルール化が必要な点を明らかにすることを目指しています。

単独運転が発生すると、太陽光発電からの逆充電による感電事故や送電再開時の機器損傷など、様々な問題が発生するため、その検出機能について動作評価を行うということですね。

:ええ、単独運転を高速に検出するために、新型単独運転検出機能というものを太陽光発電システムに搭載するという想定で研究を行っています。最近では、その機能に加えて、系統安定度の向上に寄与する動的電圧維持機能を搭載し、両機能が相互干渉しない制御方法を構築することで、単独運転問題と系統安定度悪化問題を同時に解決することを目指しています。

印象的なエピソードについてはいかがでしょう。

:電力系統に新型単独運転検出機能の搭載された太陽光発電が導入されたときの影響を評価するために、条件を変えながらシミュレーション解析するのですが、1つの素子のパラメーターを変更し忘れてしまって、それまで出していた結果をすべてやり直すことになってしまったことがありました。そのときは得られた結果から考察まで行っていたので、やり直しには、まる一週間もかかってしまいました。学会での発表が迫っていてこうしたミスが起きてしまうと大変なので、以来、早めに取り組むように心がけています。

データセンターなどの大容量電気設備の発展のために

三田村さんは、どのような研究に取り組んでいらっしゃいますか。

三田村:データセンターなどの大量に電気を使う需要家の自家用電気設備を、数値シミュレーションで再現するために電気機器のモデリングを行っています。また、構築した電気設備モデルを用いることで、電気機器の動作を解析し、実際の設備で報告されている原因不明の現象が見られないか、検証しています。

その研究の目的は、どういうことでしょうか。

三田村:自家用電気設備というのは遮断器や変圧器、発電機、UPSなどが接続された需要家内の小さな電力システムのことですが、例えば新しく太陽光発電設備などをつくるときに、既存の設備に負荷がかかって事故につながることがないよう、モデルの中で先に確認できるようにします。実際に事故が起きたときに、模擬モデルで原因を確認する際にも役立ちます。

印象的だったエピソードについて教えてください。

三田村:モデリングした電気機器が仕様書通りに動作しない時、参考文献をもとにパラメーター変更や制御回路の見直しを行ったところ、うまく動作したことがありました。あの時は感動しました。あとは、学会で発表し、他の研究者にアドバイスをいただいたことはいい刺激になりました。

学会ではどんな思い出がありますか。

三田村:何度も参加していると、同じ研究をしている他大学の学生と仲よくなって、「そっちの先生はどんな感じ?」みたいなことを聞いたりできるんです。そうやって色々と情報交換ができるのはやはり楽しいですね。

:交流関係が増えるのは学会の楽しみの一つですよね。大変なのは、私はけっこう稀有な研究をしているので、どの辺まで説明すればいいのか、どの程度まで砕いて説明すればわかってもらえるか、といったところが難しいです。

データセンターなどに使用される無停電電源装置(UPS)のデータ計測をします。

計測したデータを、パソコンで解析します。

国際色豊かで、多様な価値観が集まる研究室

皆さんの研究室の特徴について教えてください。

菅原:学部生、院生、留学生、企業から来ている方など、多様な価値観をもつ様々な立場の人が集まって、みんな非常に熱心に研究に取り組んでいます。全員が集中するあまり、キーボードを叩く音しか聞こえないときもありますよ。英語と日本語を交えて会話することも多いですね。

:留学生が5人いますからね。

三田村:留学生が多いのは大きな特徴ですね。現在は、ミャンマー人2名、ナイジェリア人1名、中国人2名が在籍しています。電力分野は途上国から先進国まで様々な課題があり、また、教授が電力分野で特に有名であることもあって、研究室には毎年のように新しい留学生が来ています。学生はチューターとして彼らの生活支援などを行い、積極的に英語でコミュニケーションを取っています。

:私は留学生の携帯電話の手続きを手伝ってあげたりしました。

菅原:私は、関西電力では外国人と接することがまったくなかったので、驚きましたよ。私もよく話しかけられるんですが、英語が苦手なので調べながら何とか対応しています。

企業から来られている方は、菅原さんの他にもいらっしゃいますか。

菅原:ミャンマーの方は太陽光パネルの会社の方ですね。あとは、政策に関係する会社の方もいます。

三田村:我々にとっても留学生と英語で意思疎通をはかることは国際学会での発表の練習になりますね。国際的な視点が身に付く研究室だと思います。

取材当日に研究室にいた方全員に集まっていただきました。最後列左から4番目が田岡久雄教授。5番目が講師の高野浩貴先生です。

研究室内のコミュニケーションはどんな感じですか。

分野ごとにチームで研究する田岡・高野研究室では、日常の意見交換会も盛んです

菅原:毎週一回、先生と研究の進捗確認をしています。

三田村:ミーティングも盛んで、研究の進捗報告や先生方からのアドバイスをいただいています。うちの研究室では研究分野毎にいくつかグループに分かれているのですが、グループ内の意見交換も活発です。あと、研究室に入って半年たった頃に、みんなの前で先輩の印象を話すというのをやらされました。

:まあ、先輩の姿を暴露するような場でもありますね(笑)。

三田村:正直に話しているのに、「それ、ホンマに思ってるんか?」、って突っ込まれたり(笑)。

:研究室に新しい仲間が来たり、卒業したりするときは、必ず歓迎会、送別会があります。学会が終わった時なども、一区切りとして飲み会があります。

菅原:けっこう飲み会は多いですね。みんな楽しいお酒なので、盛り上がります。

朝来て夕方には帰る規則的な生活で、学生生活を満喫する

皆さんの平均的な一日について教えてください。

菅原:10時に研究室に来て12時まで研究し、昼は13時から再開して18時くらいまで研究して、帰宅することが多いです。

:私も9時半から18時の間は研究室にいるので、研究室の仲間と過ごす時間が一日の大半を占めていますね。

三田村:私は朝10時前に来て、ゆったりと参考文献を探したり読んだりして昼食の時間を待ち、お昼寝をしてから本格的に研究に取り組んでいきます。午後はモデリングやミーティングの資料づくりなどに取り組んで、お腹が空いてきた19時半ごろには帰宅します。

皆さん、規則正しいですね。朝来て、日が暮れたら帰ると。

:学会前の締切直前などは遅くなることもありますが。

研究以外ではどんなことに打ち込んでいますか。

菅原:私は大学編入で初めて北陸に来たので、休みを利用してよく観光に出かけています。福井は自然が多いですね。福井ではないのですが能登半島は自然が素晴らしく、北陸で一番好きな場所です。あとはランニングにも打ち込んでいて、毎年12月に兵庫県三田市で行われるハーフマラソンに出場しています。

:私はフットサルサークルに所属しているので、月に数回、フットサルで汗を流しています。冬は、スノーボードですね。

三田村:私は、スポーツは見る方です。特にプロ野球が好きで、今年は盛り上がってよかったです(笑)。

電気工学出身者の活躍できる幅広さを改めて実感

電気工学を学んでよかったと思うのはどういう点ですか。

三田村:電気の知識を多く学べたおかげで、震災による電力に関する課題を自分なりに理解できていると思います。また、電力に関するホットな話題を研究室で学べたので、就職活動では役に立ったと思います。

堤さんはいかがでしょう。

:電気工学の裾野は幅広いので、学生時代に学んだ知識や経験は必ず自分の将来に活かせるのではないかと考えています。電機メーカーや自動車メーカーなどでも基本となるのは電気工学だと思うので、その分野を学べていることにありがたく感じています。

菅原さんはいかがですか。

菅原:電気工学を学ぶ前は、「電気って目に見えないし、よくわからないから苦手」と思っていました。ところが、勉強してみたら目に見えないものが数学の知識などを使って説明できるようになったのです。 これには感動しました。とても奥の深い分野で、今も分からないことだらけですが、だからこそ一つ新しいことを知るたびに喜びがあります。今では電気が好きですし、電気工学を学んでいてよかったと思います。

菅原さんが就職活動をされた頃は、電気工学の求人案件は多かったですか。

菅原:やはり多かったですね。電気と直接関係のない求人もあって、きっと電気工学を学んだなら応用が利くと期待されていたのだと思います。

:私も、同じ研究室の先輩や学部で卒業した同期で、就職できなかったという人は聞いたことがありません。

三田村:電気工学の知識って、電力会社だけでなく、工場の省エネ化などどんな分野の会社にとっても非常に必要とされるものですからね。

では、皆さんの将来の夢について聞かせてください。

三田村:来年度から電力会社に勤めることになるので、安心して電気をお届けできるように精一杯業務に取り組み、お客様から信頼してもらえるように頑張ります。

:電力に関する仕事に就きたいと考えています。電力会社を考えていますが、メーカーや電力以外の会社にも目を向けて考えるつもりです。

菅原:私は関西電力に戻るのですが、まだまだ勉強が必要だと感じています。日本の電力システムは近年、エネルギーミックスのあり方や電力自由化を巡って、大きな転換期を迎えています。将来は、海外勤務も視野に入れながら、日本の電力システムをよりよいものにするために働きたいです。

今日は皆さんの電気にかける熱い思いが聞けて、大変刺激を受けました。本日はありがとうございました。

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