生活に身近な研究を通じて、社会のために貢献したい。

2016年5月31日掲載

今回は関西大学の情報電磁気学研究室におじゃましました。情報電磁気学研究室は、担当教員である米津大吾准教授のもと、2016年4月にスタートしたばかりの研究室です。お話を伺ったのはIH調理器という身近な電気製品の研究に取り組んでいらっしゃるメンバー。「飲み会の多さも自慢!」とのことで、チームワークのよさは抜群です。米津准教授のお人柄も含めて、雰囲気のよさが魅力の研究室でした。

※2016年3月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

電気がわかれば身の回りのすべてがわかると信じて

なぜ皆さんは電気工学を志望されたのでしょうか。動機を教えてください。

前田:小学生の頃、理科が大好きで、身の回りで起こる音・光・電気などの科学現象の不思議さに関心がありました。特に電気にひかれるようになったのは高校時代です。京都大学の教授が私の高校に出張講義に来た時に、半導体やソーラー発電の実験などを見せてくれて、電気は面白いと思い始めました。それで電気系への進学を決めたわけです。

田中さんも幼い頃から電気に興味をお持ちでしたか。

田中:はい。家電製品がどのような原理で動作しているのか、子どもの頃からとても興味があり、そこが出発点でした。そして高校時代に電気分野の勉強をして、もっと深く学びたいと思い、電気工学を専攻することにしました。

電気はとても身近な存在ですからね。

田中:生活の上で電気は必要ですし、たいていのものは電気で動いている。だから、電気のことがわかったら身の回りのすべてを理解できるのではないかと考えたのです。

情報電磁気学研究室(旧・電気エネルギー工学研究室)を選ばれたのは?

田中:これはもう米津先生の人柄に尽きますね。この点は全員共通だと思います。

東岡:そうですね。私も米津先生が好きで学部の時からこの研究室で学びました。

前田:先生や先輩たちの人柄のおかげで、研究室の雰囲気は素晴らしいです。

なるほど。では東岡さんが電気の道に進もうと思ったのはどういうきっかけでしたか。

東岡:私は高校時代の先生の影響で物理が好きになりました。専攻については、電気か数学か物理かという選択肢があって、電気が一番身近な存在だと感じて、電気を専攻することにしました。

東岡さんは、大学院に進む前に一度就職されていますよね。

東岡:はい。学部を卒業して、電気設備の施工管理職を1年経験しました。しかし、もうちょっと研究を続けたいという思いが強くなり、試験を受けて大学院に入りました。その決断の際も研究室の先生にはずいぶんと相談に乗ってもらいました。

ソフトウェアをゼロからつくり、グループでIH調理器の進化に挑む

現在の研究内容について伺いたいのですが、皆さん同じ研究に取り組んでいらっしゃるそうですね。

東岡:はい。IH調理器における有限要素解析(※1)を行っています。

少しわかりやすく教えていただけますでしょうか。

東岡:IH調理器を使って加熱を行う場合にどのような材料の鍋・設計の調理器が最適であるかを調べるため、プログラミングによるシミュレーションを行っています。

前田:具体的には有限要素法という解析法を用いた電磁界解析と熱伝導解析のプログラムをC言語(※2)より作成し、実際に加熱実験を行わなくてもシミュレーションによって加熱時間と温度の関係が計算できることに挑戦しています。現段階では鍋の形状ごとの発熱量とコイル銅損は精度よく計算できています。

IH調理器がどれだけ加熱できるかについてシミュレーションするため、ご自分でプログラムを開発されているのですか。

前田:はい、シミュレーションのプログラムをゼロから開発しました。プログラミングの作業が研究時間の7割ぐらいを占めています。プログラミングしながら電磁気などの細かな知識、挙動を学べるので、とても面白いです。

田中:シミュレーションの解析値と実測値がほぼ同等の値を示したときは嬉しかったです。

東岡:今のプログラムで、磁束密度、渦電流密度、発熱量の解析値がほぼ妥当であることを確認できました。現在はさまざまな鍋の材料で解析ができるよう、プログラムの改良を進めているところです。

なるほど、鍋の材料によって加熱性が変わってくるということですね。

東岡:はい。私と田中が対象としているのはカーボンです。カーボンは材料としてとても優れていて、熱伝導率が高く温度が無駄なく伝わりやすい特性があります。また、カーボンの中にもさまざまな材料があり、どれが特性として優れているか検証しています。

前田:私はSUSというステンレス鋼材を対象としていました。

研究は企業との合同研究ですか。

東岡:私たちが手掛けているカーボンは合同研究です。カーボンメーカーの方から依頼を受けて行っています。カーボンの鍋は、あまり使われていないので協力させてもらっています。

それにしてもプログラミング作業が中心というのは、電気工学系の研究室としてはやや異色という印象です。

東岡:その通りです。実験を主に行うのかと思っていたら、研究を進めれば進めるほどシミュレーション解析のためにパソコンの前でプログラミングする時間が増えて、初めた頃は面食らいました。情報系の研究室のような側面もあります。

田中:プログラムがうまく作動しないといった問題もありましたが、トラブルを解決して完成させたときには達成感があります。作動しない原因は、わかるとどうということもない問題だったりするわけですが、それがなかなか見つけられないわけです。

学会での発表の経験などはありますか。

前田:私はこれまで2回出席しましたが、最初の静止器/回転機合同研究会(※3)での発表は沖縄でした。参加されているのが大学教授や企業の方が多くて、せっかくの沖縄を楽しむどころか、緊張の連続でした。質問やアドバイスもとても専門的で、自分が今まで見てきた世界とはまるで違うことを痛感しました。

(※1)数値解析手法のひとつ。
(※2)プログラミング言語のひとつ。汎用的に使用されている。
(※3)電気学会B部門・D部門 研究会

月に一度は全員参加の飲み会を開催!大人数で抜群のチームワーク

皆さんの研究室の特徴について教えてください。

田中:一人一台パソコンが支給されていますので、プログラミングを行う上では大変に恵まれていると思います。また、IH調理器を使った研究ということで、ホットケーキを焼いて、その焼き色で熱の分布を確かめるという実験を行うこともあり、楽しいです。

前田:2016年4月から体制が変わりますが、それまでは電気エネルギー工学研究室という学生が27人もいる巨大研究室でした。非接触給電、IH調理器、電磁ノイズ、核融合など幅広い分野の研究を行っていることも特徴でしたので、いろいろな研究の話が聞けて刺激的でした。

電気エネルギー工学研究室は、山本靖教授と米津先生が共同で運営されていたそうですね。4月以降、米津先生が担当となる情報電磁気学研究室になるとどうなるのでしょう。

東岡:研究分野は我々がやっているIH調理器、非接触給電、電磁ノイズが主となります。人数は15人位となりますが、雰囲気は変わらないと思いますよ。

研究室でのコミュニケーションについてはいかがでしょう。

東岡:研究室にいつも米津先生がいらっしゃるので、連絡が非常に取りやすいです。

前田:先生が同じ部屋にいらっしゃるので、いつでも相談に乗ってもらえるんですよ。

田中:研究の成果は先生や学生の前で発表し、先生から直接注意点などを指示していただいています。

ということは、飲みに行ったり、オフタイムのコミュニケーションも盛んですか。

前田:飲み会は月に一度くらいです。

東岡:月イチは必ずありますね。多いときは二週間に一度のペースでしょう(笑)。ゴルフや野球など、研究室でスポーツをすることも多く、その後も必ず飲みに行きますよ。おかげで非常にコミュニケーションは密で、先生や仲間とは仲良く運営ができています。

前田:就職のこと、阪神タイガースのこと、飲みながらいろんな話で盛り上がっています。

月に一度の飲み会というのはすごいですね。出席率は高いのですか?

前田:一時は、基本的に全員が出席できるように日程を設定していました。そのため、出席率は100%でした(笑)。

学部4年の田中さんが驚いていますね(笑)。

田中:出席率100%というのは、すごいですね(笑)。

情報電磁気学研究室のみなさんに集まっていただきました。写真2列目中央が米津大吾准教授です。

マイペースに、徹底的に、自分らしく研究に打ち込む

皆さんの学生生活について教えてください。田中さんはいつも何時頃から研究を始めていらっしゃいますか。

田中:研究室にコアタイムはないので、自由にやらせてもらっています。10時から研究を始めて、午後は13時から15時まで実験、おやつタイムをはさんで16時から研究で、19時頃に帰宅というパターンですね。

東岡:あれ、朝はいつもいないでしょう(笑)?

田中:実はこれはピーク時のパターンです。もうちょっと気を引き締めて研究に打ち込まなければと思っています。

なるほど。その点、東岡さんはかなりハードな研究生活と伺っていますが。

東岡:毎日9時には研究室に行き、22時頃に帰っています。実は通学時間が1時間半ほど必要なので、朝は7時半に出て、家に帰り着くのは24時というような生活です。食事は弁当を持参して、なるべく食費などは抑えるようにしています。

まさに研究一筋という生活ですね。

情報電磁気学研究室の研究風景です。新しい部屋になって、机が広くなったそうです。

東岡:私は一度就職してから研究室に戻りましたから、この2年間は研究に打ち込もうと決めているのです。本当はもうちょっと気を抜いても良いかと思っています。

前田:私は13時頃に研究室に出てきて、20時頃に帰宅するパターンです。研究室では標準的な生活ではないかと思います。学会の発表直前などは徹夜することもありますが、研究で泊まることはないです。プログラムによる計算が始まったらもう他にすることがないから、帰って次の日の昼に結果を確認するという感じですね。

学部4年の田中さんはアルバイトもやっていらっしゃいますね。

田中:休みの日は、居酒屋とコンビニでアルバイトしています。あとは体を動かすのが好きなので、自転車に乗ったり、週に一度はジムで汗を流しています。

自転車ですか。遠出されるのですか?

田中:家の近くに琵琶湖があるので、一周したりしています。足がパンパンになりますが、気持ちいいですよ。

電気工学の魅力は、将来の選択肢の広さや研究の奥深さ

電気工学を学んできて、改めてよかったなと思うのはどんなことですか。

田中:身近なものの動く仕組みがわかっていく実感が嬉しいです。今はIHを使った研究をしていて、IHの仕組みがわかったことも面白いです。

前田:私も同じです。身近に起きる物理現象が理解できたり、まだ誰も解明できていないことを勉強できたりというのが魅力ですね。あと、電気に携わっている人って、けっこう情に厚いように感じました。研究で先生や仲間と深く関わっていくので、自然とそうなっていくのかもしれませんね。

東岡:電気工学を学んでいて思うのは、選択肢が広いということです。私は一度就職していますから、特にそれを実感しました。研究という点では、どこまでも深く学んでいけるという点がいいと思います。

田中:機械を動かすにも電気が必要ですから、電気工学の専門家はあらゆるところで必要とされるのではないでしょうか。

東岡:確かに機械系の出身者が主役と思われる企業でも、電気系のエンジニアは求められていますからね。

前田:他にも、例えば化学業界などからの求人も多くあるようです。

田中:2020年の東京オリンピック・パラリンピックが控えていますから、ゼネコンなど建設関係でも電気工学出身者が求められていると感じています。

確かにそうした選択肢の広さは、電気工学を学んだ人にとって大きなポイントでしょうね。では皆さん、今後の夢や目標について教えていただけますか。前田さんはもうすぐ就職ですが。

前田:そうですね。今は、就職先の会社でがむしゃらに働きたいというのが抱負ですね。個人的な夢としては、いずれ自分の家を買うことができたらと思っています。実はクルマを買うことも夢だったのですが、それは最近かなえることができました。もちろんローンですが(笑)。

東岡:私は研究を終えたら再び社会に出て行くわけですが、就職先はメーカーがいいと考えています。自分の研究をアピールできたらいいですね。

田中:私は将来、自動車や二輪関係の仕事に就きたいと考えています。自動車、二輪は思い出をたくさん作ってくれる乗り物だと思いますので、そのような幸せな思い出を多くの人に与えられるモノづくりに携わりたいです。

今後の皆さんのご活躍を応援しています。特に前田さんは2016年4月1日より社会人ということでがんばってください。今日はどうもありがとうございました。

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