電力を学んで安定供給を支えたい。

2013年6月28日掲載

熊本大学の「宮内研究室」は、電力系統の供給信頼度に関わる研究を専門に行っており、学内では「電力研究室」と呼ばれます。また、電力システムと経済学の学際領域も研究対象の一つとして、経済学を専門とする名古屋市立大学の三澤哲也先生との共同研究も実施しているユニークな研究室です。

※2013年4月現在。本文中の敬称は略させていただきました。

電力を学んで、安定供給を支えたいという思いがきっかけです

電気工学を志望された理由を教えてください。

岩見:高校から大学へ進むときに技術者になりたくて、工学部への志望は決めていました。ただ、どこの学科かというと漠然としていましたね。その中で電気はどこにでも絶対に使われるものなので、間違いがないと思って進んだ感じです。

高倉:私は、知り合いが電力会社へ勤めていて、その影響で、高校時代から電力会社に入りたいという希望がありました。電力の道へ進むにあたり、電気工学は重要な学問だと思って志望しました。

阪口:電気回路が高校のとき得意であり、大学に入っても電気を勉強したかったので、電気工学を志望しました。

宮内研究室に入られた理由を教えてください。

岩見:私は、電気分野へは漠然と進んだのですが、3年生頃から本格的に電力を勉強したいと思うようになり、「電力研究室」と呼ばれる宮内研究室へ進みました。だんだん電力の安定供給を支えたいという思いが出てきました。

高倉:私の場合、今申し上げたように、電力会社に入りたかったので、宮内研究室へ進むことに迷いはなかったですね。

阪口:研究室を選ぶにあたって、電力を専門とする宮内研究室と、パルスパワー(エネルギー蓄積方式のひとつ)を専門とする研究室で迷ったのですが、結局電力を学びたくて宮内研究室へ進みました。

開発途上国の未電化村落における、自然エネルギーの導入を検討

岩見さんの研究内容をお教えください。

岩見:「小水力発電及び分散電源を有する小規模系統の信頼度評価」と題した研究を行っています。特に、未電化村落に新たに設置される独立した系統において、出力が変動する太陽光発電や風力発電といった分散電源が、小水力発電(10,000kW以下の水力発電)とどのような役割分担をして電力供給を行うか検討しています。

未電化村落とはどのような地域を想定していますか。

岩見:今、世界的に電力の需要が増加していますが、その要因がアジアやアフリカなどの人口増加によるものと言われています。こうした開発途上国には未電化村落が非常に多いのです。基本的に電力負荷は電灯と冷蔵庫程度の村落を想定しており、発電は火力発電を使用せずに、自然エネルギーを中心にシミュレーションをしています。

なるほど。小水力発電にスポットを当てたのは、なぜですか。

岩見:太陽光や風力発電を系統に導入すると、当然ながら発電出力の変動という問題が生じます。その問題の解決のために、通常はバッテリーなどの電力貯蔵装置で変動分をカバーするわけですが、特に開発途上国ではバッテリーの使用がコスト面や制御などの問題で難しいのです。そこで、比較的簡単な小水力発電の出力調整で平準化させようということでスポットを当てています。

どのように小水力発電で出力変動をカバーするのですか。

岩見:バッテリーの代わりとして、小水力発電に貯水池を付けて、その貯水池による出力の調整で平準化を行います。メインは小水力発電ですが、さらに太陽光発電や風力発電を利用して、安定した電力供給を目指しています。

研究の中で、印象に残ったことを教えてください。

岩見:研究をはじめる前のシミュレーションはただ漠然と数値を変えていただけですが、はじめてからは自分の仮定と研究結果が一致するようになり、研究が楽しくなりました。未電化村落においては、風力発電の方が太陽光発電よりも優位性が高い、太陽光発電のみを導入しても信頼度的には改善されないことなどが分かってきました。

太陽光発電を導入しても信頼度が改善されないのはなぜですか。

岩見:未電化村落における需要のピークとなるのは夜間電灯を付ける時です。しかし太陽光発電は日中の出力が大きいため、導入量を上げても信頼度が改善されないのです。言葉にすれば当り前のことかもしれませんが、それをシミュレーションで検証することが面白いと感じましたね。

離島地域における自然エネルギー導入をシミュレーション

高倉さんの研究内容をお教えください。

高倉:まず研究目的の前提をお伝えします。日本列島には様々な離島がありますが、それらの地域において工学的な信頼度を確保した電力システムを整備することです。モデルとして考えている離島の規模は、長崎の五島列島位の大きさです。

離島にしっかりとした電力システムを整備することが研究の前提だと。

高倉:はい。その離島地域において、自然エネルギー(太陽光発電、風力発電)を源とする分散電源の導入時に併せて電力貯蔵装置(バッテリー)も設置し、内燃力発電機の燃料制約の影響を考慮に入れた上で、電力系統の信頼度を検討することを研究しています。

内燃力発電機の燃料制約の影響を考慮に入れるということは、どういうことですか。

高倉:主に燃料調達期間の影響を考慮するということです。離島なので、火力発電の燃料を離島に運ぶことが必要です。1か月、場合によっては3か月かかることもありますが、その期間を考慮した上で、系統の信頼度を検討するということです。

研究されている、離島の系統の信頼度はどんな感じですか。

高倉:厳しいですね。出力変動面が大きな問題です。停電時間や電力不足確率がどれくらいあるのかというデータを基に、信頼度のシミュレーションをしています。

普通に考えると小さい場所では出力が変動しても、バッテリーがあれば何とかなると思うのですが。

高倉:小規模な場所の方が、需要が少ない分、少しの変動で大きく影響します。私も、離島地域における火力発電の燃料調達のコストが高いので、自然エネルギーは本土に導入するより離島の方が可能性は高いと思って研究をはじめたのですが、結局、信頼度的には難しい状況でした。

現実になるべく近い設定で、新設の火力発電事業を成功させる研究

阪口さんの研究内容をお教えください。

阪口:電力の安定供給のために最適な設備形成を最終目標とする中で、事業者のリスクを考慮した適切な事業価値の評価手法の確立を目指しています。ここでいう事業者とは、電力会社、重電メーカーなどの電力設備に関わる企業・団体のことです。適切な事業価値とは、しっかりと投資を回収できるか、経済性があるのかといったことですね。

事業者の方たちが経済的にも適正価格で利益を得て、なおかつ最適な設備を形成できていることを目指しているわけですね。

阪口:そうですね。そのための基礎的研究として、天然ガスを燃料とした新設火力発電施設を例に、“順序プロビットモデル”という回帰式を用いて正しく事業価値評価を行うことができるか検証しています。現在の研究課題は、より現実的な火力発電事業を想定して、火力発電施設のモデルを詳細化しています。

具体的にどのように、事業価値評価をされているのですか。

阪口:様々な火力発電所のモデルを考えるときに、今までは電力価格と燃料価格の2つだけが不確実な事柄ととらえてシミュレーションをしていました。しかし、もっと現実的に、火力発電所の運転時間や、電力価格の変動、運転コスト、維持費などもっと現実的に近い発電所のモデルを今、考えているところです。気が遠くなりますが(苦笑)。

大変なシミュレーションですね(笑)。この研究は共同研究ですか。

阪口:そうですね。名古屋市立大学大学院経済学研究科の三澤哲也先生とともに研究しています。三澤先生は、経済学の先生といっても電力方面にも詳しく、とても刺激になります。

自由な研究室でのびのびと和気あいあいと過ごしています

研究室の特徴を教えてください。

岩見:宮内研究室はさきほどから話が出ていますが、シミュレーションの研究室なのでパソコンを一人一台所有できます。席も近いため和気あいあいとしていると思いますよ。

高倉:研究室対抗のソフトボール大会やサッカー大会はみんな参加しています。ですから、その時期は一緒に練習して、終了後には飲み会などでコミュニケーションをとっています。

ソフトボールやサッカーは、いつ頃やっているのですか。

高倉:ソフトが5月、6月で、サッカーが11月、12月ぐらいですね。

やっぱりストレス発散になりますか。

高倉:いや、むしろストレスがたまります(笑)。ソフトもサッカーも万年2位です(笑)。

岩見:情報、電気、電子系の研究室対抗なので、電気系としては1位をとりたいですね。でもすごく強い研究室があって難しいです(苦笑)。

阪口:それから、毎週行われる研究ゼミの担当を決めるために、研究室の仲間と研究の進捗状況を確認したりしています。

「学生生活最後の年となる今年こそ、サッカー・ソフトボール両方とも勝ちます!」

メンバー全員ひとつの部屋で研究しています。主にMATLABというシミュレーションソフトウェアを使用しています。

本当に和気あいあいとしていますね。学会に参加されたことはありますか。

岩見:自分は、修士1年のときに北海道大学で開催された電気学会B部門大会にはじめて参加しました。その時は他大学の方と交流ができたので、刺激になりましたね。

平均的な1日のスケジュールや、サークル、アルバイトのことを教えてください。

宮内研究室は毎年15名前後の学生が在籍しています。前列・一番右が、宮内肇准教授です。

岩見:午前中に研究室へ入り、午後帰宅するまで、パソコンでシミュレーションをしています。サークルやアルバイトの両立はできていて、単位を落としたことはありません。サークルは軟式野球、アルバイトは、書店で週2~3日やっていました。

高倉:うちの研究室はコアタイムがないので、基本的に各個人に任されています。私の場合、昼頃に来て研究とゼミに参加します。サークルは、フットサルとサッカーを、アルバイトは、熊大の授業のTA(Teaching Assistant)をやっています。

阪口:おおよそですが、正午まで勉強をしていて、アルバイトがある日は夕方まで、ない日は午後7時まで研究室で作業をしています。週に4日ほどファミリーレストランでアルバイトをしているのですが、講義やレポート提出に支障をきたしたことはありません。

みなさん自分の時間をつくって学生生活を送っていますね。コアタイムがないのはうれしいですね。

高倉:そうですね。でも自由な分、しっかりやらないと、逆に苦しくなるのは自分たちですから。そこは考えて学生生活を過ごすようにしています。

エネルギー変革期にある今だからこそ、電力の仕事に携わりたい

電気工学を学んで良かったと思うことを教えてください。

岩見:電気工学を通して、人々の生活を根幹から支えるような仕事に就けることだと思います。私の場合は、電力というインフラの根幹となるものを学べたのは良かったですね。

高倉:電気工学を学んだことで、普段の生活の中で何気なく使用している電気や電化製品により一層興味を持つことができました。また電気を学べて強くなれば、必要とされる人間になれるのではないでしょうか。私はまだまだですが(笑)。

阪口:震災後、電気の重要性は高まっていると思います。その中で私は、電気に関する知識を持って様々なエネルギー問題を考えられたことが良かったです。電気は学びがいのある学問ですよ。

最後に将来の夢や目標をお教えください。皆さん修士2年なので就職ですか。

岩見:はい。インフラ事業に携わり、人々の生活を支えたいです。今就職活動中ですが、第一志望としているのが、重電機器などを設計するメーカーです。インフラを支える技術者になりたいですね。

高倉:私は電力会社を志望しました。先ほども言ったように、高校時代から電力会社に入りたかったのが理由です。

震災以降、電力会社は厳しい環境にありますが就職活動はいかがでしたか。

高倉:やはり、震災以降は志望を取り下げる方もいました。ただ個人的には、逆にこういうときこそ役に立ちたいという気持ちもありました。また自分の研究内容を役立たせて、今後、どのような電源構成が日本に最適なのかを考えていきたいと思っています。

阪口:私も高倉君と同じで電力会社を目指して就職活動中です。お客様に身近な配電分野で活躍し、社会や地球環境に貢献したいという思いがあります。エネルギー変革期にある今だからこそ、電力の仕事を通して人々の生活や地域社会に貢献したいと強く思っています。

電気工学で学んだことを生かして、ぜひ電力の現場でも頑張ってください。就職活動の成功も祈念しています。今日はありがとうございました。

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