電力・エネルギーの専門家として、社会に広く情報発信したい。

2015年3月31日掲載

電気工学に携わるには、大学・企業・公的機関と様々な立場があります。今回お話を伺ったのは、そのすべてを経験され、現在は一般財団法人というニュートラルな立場で、電力・エネルギーの研究を続けられている益田泰輔さんです。益田さんが勤務されている、一般財団法人エネルギー総合工学研究所は、シンクタンク的な立場で産学官の連携のもと技術的な側面から総合的な調査研究・研究開発を行っています。益田さんの電力・エネルギー研究にかける熱い想いを伺いました。

プロフィール

2001年4月
東京大学理科一類入学
2007年3月
東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻修士課程修了(横山研究室
2007年4月
東京電力株式会社入社
2009年4月
東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻博士課程入学(横山研究室)
2012年3月
同上修了(博士(工学))
2012年4月
独立行政法人産業技術総合研究所入所
2014年1月
一般財団法人エネルギー総合工学研究所入所 現在に至る

※2015年1月現在。文章中の敬称は略させていただきました。

電気工学は学んだことを社会に活かすことができる

電気工学の道に進んだきっかけを教えてください。

益田:テレビやビデオ・オーディオなどが子供の頃から好きで、ものづくりに興味があったことが、元々の理由のような気がします。具体的に進路を決めたのは高校の時です。文系も理系の勉強も好きでしたが、理転よりは文転のほうが可能性があるかなと考えて理系を選びました。理系の中では工学系の勉強をしたいと思って、東京大学の理科一類へ進みました。

東京大学では入学後に、学科を選択するそうですが。

益田:はい。機械か電気かで迷いましたが、当時、成績上位者は大学院入試免除制度があったことと、学科の説明会の印象がよかったことで電気工学科を選びました。特に「電気工学は学んだことを社会に活かすことができ、自分のやっていることが社会とつながっていると実感できる」という説明が印象に残っています。

研究室は電力系統を専門に研究されている横山研究室へ行かれたそうですね。

益田:そうです。電力やエネルギーなど社会全体に関わってくる大規模なシステムみたいなのがおもしろそうだなと思いました。また、横山先生の授業が非常に分かりやすくて興味を持ったというのも大きな理由です。

一度社会に出て働き、再びエネルギー研究の場へ

大学ではどのような研究に取り組まれましたか。

益田:学部~修士課程にかけては、FACTS機器(パワーエレクトロニクス技術応用機器)を用いて電力系統の送電能力および信頼度を向上させる手法を総合的に開発・評価しました。

具体的には、どのような開発・評価をされていたのですか。

益田:当時はFACTSを用いたさまざまな研究が行われていました。落雷などで電力系統が事故遮断されたり閉路したりする際、FACTSを制御することで安定度・信頼度を向上させるといった研究を行いました。

修士課程を終えられた後、益田さんは一度就職されましたね。

益田:ええ。東京電力で2年ほど働きました。ここでは変電部門の現場で変圧器・開閉器や保護装置の保守業務などに携わり、実際の現場では機器がどのように機能しているかを体験させていただきました。

なぜ大学へ戻られたのですか。

益田:一度研究から離れて電力の現場を見たことで、学生のときの自分の研究には足りない部分が多くあったと感じました。また、現場の感覚を得た上で、何か新しいアプローチで研究に取り組むことができるのではないかと考え、博士課程(横山研究室)に進むことにしました。

社会に出たことでさらに新たな学びへの欲求が生まれてきたわけですね。
博士課程では、どのような研究に取り組まれましたか。

益田:変電部門では需要家に近い側で仕事をさせてもらいました。その延長で、ヒートポンプ給湯機や電気自動車など需要家側にある機器を制御することで電力系統の需給バランスを維持するという研究に取り組むことを決め、複数の需要家機器を用いた負荷周波数制御手法と経済負荷配分制御手法を開発・評価しました。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの導入も考慮していました。

これはいわゆるスマートグリッドに関する研究ですね。

益田:まさにそうです。ただ、当時はスマートグリッドという言葉が初めて出てきた頃で、どのような電力系統を「スマートグリッド」と呼ぶのかについても議論されているところでした。私は、日本型スマートグリッドの概念設計の一環として、この研究に取り組んでいました。

研究室時代で思い出に残っているのはどんなことですか。

益田:修士1年の時のことなんですが、徹夜で論文を書き上げて次の日の朝一番の飛行機でヨーロッパ旅行に出発したことが印象に残っています(笑)。今でこそネット環境が整っていますから世界のどこにいても論文を修正・投稿できますが、当時は旅行から帰ってからでは期限に間に合わないという状況でしたので、徹夜で頑張って仕上げて、ヨーロッパへ遊びに行きました。私は徹夜をしないタイプだったので、これは思い出に残っていますね。

産学官連携の要として、スマートグリッドを研究

博士課程を終えられてから、独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)に入所されましたね。

益田:博士課程で研究を続けていく中で考えたのが、将来もこのまま研究を続けたいということでした。大学、メーカー等の研究所、国の研究機関などいくつかの選択肢がありましたが、その一つとして選んだのが産総研でした。

その後、2年近くたって現在のエネルギー総合工学研究所に入所されました。

益田:これまで産学官それぞれの立場で電力に関わる経験をしてきて、今後は産学官の連携の要にある立場でエネルギー・電力の研究に関わっていきたいと考え、エネルギー総合工学研究所に入所することに決めました。

エネルギー総合工学研究所というのは、シンクタンク的な立場で産学官の連携のもと技術的な側面から総合的な調査研究・研究開発を行う機関ですね。その中で益田さんはどういうお仕事に取り組んでいらっしゃいますか。

益田:現在は、太陽光発電が大量導入された場合の電力系統の需給運用に関する研究と、将来の配電系統の制御システムに関する研究に取り組んでいます。いずれも将来の電力系統をどのように高度化していくかに関する研究で、スマートグリッド構築に向けた研究です。

太陽光発電の研究について、少し具体的に教えていただけますか。

益田:電力は需要と供給のバランスを維持する必要がありますが、現在は火力発電が需給調整を行うメインの電源として働いています。今後、太陽光発電が大量導入された時に備え、太陽光発電予測を利用した火力発電の需給制御・運用手法を開発することが目的の研究です。

もう一つの将来の配電系統の制御システムに関する研究はどんなものですか。

益田:太陽光発電が増えて電圧が上がるなど、配電に関する様々な問題について、どうやって電圧を制御していくかを研究しています。先ほどの太陽光大量導入時の需給運用が系統全体レベルでの検討であるのに対し、こちらはもっと局所的なレベルでの検討になります。

非常に長期的な視点が求められる研究になりそうですね。

益田:そうです。どちらも、2030年、2050年といった将来の電力系統のあり方を明らかにすることを目指しています。

研究開発以外ではどのような業務をされていますか。

益田:エネルギー総合工学研究所では、国などから事業を委託して調査研究・研究開発を行っています。国の事業は単独で行わず、複数の大学や企業・研究機関が共同で実施することが多いので、研究を牽引するための複数機関の調整やとりまとめなども私たちの仕事となります。

現在のお仕事で特に印象に残っているのはどのようなことでしょうか。

益田:研究開発事業の検討委員会で、大学時代にお世話になった横山先生に委員長をやっていただいていることです。立場はもちろん違いますが、電力・エネルギー業界で同じ仕事に携わっていることに、感慨深いものがあります。

では、学生時代に学んだ電気工学の知識や経験は、仕事の上でどのように活きていますか。

益田:研究開発業務が主ですので、学生時代の知識や経験はそのまま仕事に活かされています。ほかにも、研究室ミーティングや学会発表などの経験は、仕事におけるプレゼンの資料作成・発表にも役立っています。私が電気工学の道を選んだのは自身の興味があったからですが、東日本大震災以降、この分野は社会的にも高い関心が集まっています。それはこの業界にいる人間としてはうれしいことですし、同時に専門家としての考えを多くの人々に伝えていかなくてはならない、情報を発信していかなくてはならないという責任も感じます。

電力・エネルギー政策の策定に貢献したい

今振り返って、電気工学を学んでよかったと思うのは、どのようなことですか。

益田:電気工学では、微分・積分、ベクトル、複素数、線形代数といった、高校から大学の教養課程で学ぶような基礎的な数学の知識を活用します。よく、「高校の数学が将来何の役に立つのか」という話を聞きますが、この分野では基礎的な数学の知識は本当に役に立ちます。特に複素数や線形代数は、電気工学ではよく使いますね。こうした知識がバックグラウンドとして自分の中に根づいていることは、とてもありがたいと感じています。

今後、益田さんはどのような仕事に取り組みたいとお考えですか。

益田:これからは国の電力・エネルギー政策の策定に貢献できる仕事に取り組みたいと考えています。現在は大学でもなく、国の機関でもないので、ニュートラルな立場で世の中に対して広く発信していくということを一番大事にしたいと思います。アナウンスの方法もいろいろと工夫したいですね。あとは、若手研究者同士のつながりも大切にしていきたいと思います。

研究者同士のつながりというと

益田:若手で電力の研究をしている人は限られてくるので、誰が何に詳しいか、誰がどんな研究をしているのかといったことは、しっかり把握していきたいと思います。そのために、学会発表や学会の懇親会の場なども利用して積極的に情報交換したいですね。

最後に、電気工学を学んでいる学生、または進学や就職を控えた学生にアドバイスをお願いします。

益田:コミュニケーション、語学力、課題解決力など、社会で活躍していくためにはさまざまな能力が必要だと言われますが、すべて自身の専門性があってのことです。まずは電気工学を一生懸命勉強し、自分自身の幹を見いだして欲しいと思います。学生時代にしかできないことですので、自分の専門性を高めていくということを一番大事にしてもらいたいです。

電力・エネルギーの専門家として今後の活躍を祈念しております。本日はどうもありがとうございました。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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