電気工学は一生の財産。どこへ行っても使える学問です。

2008年9月4日掲載

東京電力(株)の森川さんは、新技術の調査・評価を行い、新しい事業につなげる仕事をされています。横浜国立大学・大山研究室で電気工学を学んだ先輩として、社会に出てから電気工学はどのように役に立ったのかを熱く語って頂きました。

プロフィール

2001年
横浜国立大学工学部電子情報工学科 卒業
2003年
同大学工学府物理情報工学専攻電気電子ネットワークコース修了
2009年
東京電力(株)入社。入社後すぐ「変電と配電の一体化を進める革新プロジェクト」の一期生として加わる。2年目より、中央区・千代田区内の変電所の保守・管理・運用に携わる。

2007年より現職

※2008年7月現在。文中の敬称は略させて頂きました。

■電気は機械より応用が広いと気がついた。

学生時代、なぜ電気工学を専攻されたのですか?

森川弘基さん

森川弘基(以下、森川):まず工学部に入ったのは単純にモノをつくる仕事がしたかったからです。人の役に立てるモノをつくりたい。その知識を身につけたくて、受験の時に工学部を選びました。しかし大学院で、電気系の学科を専攻したときは、少し考えが変わっていました。「機械を動かすのは、実際は電気・電子。しかも電気は、機械だけでなくもっと大きな日本のエネルギーを支えている」というふうに。電気の方が機械よりも、幅広く知識が身につき応用できる、そう考えて電気工学を専攻しました。

学生時代、研究されていたことを教えてください。

森川:工学部では、「水素吸蔵合金を用いて、水素同位体を分離する研究」をしていました。簡単に言うと、核融合に必要なトリチウムという物質を取り出すための研究です。核融合発電の実用化のために必要となる研究です。最近では燃料電池自動車なんかにも応用されています。

エネルギー関係ですね。

森川弘基さん

森川:そうですね。受験の時はあまり意識していなかったのですが、結果としてエネルギー関係に関わるようになっていました。それで、大学院に進むときに、電気系を志望したわけです。大学院では「エネルギーネットワークに分散電源が導入された場合の経済評価」という研究をしていました。分散電源とは、いわゆる新エネルギーのことです。私達の時代ではマイクロガスタービンでしたが、今は太陽光発電や風力発電が主流になっています。簡単に言えば、「新エネルギーでの電力供給が増えると、エネルギーコストは安くなるのか?」ということを研究する学問になります。経済学にも通じる学問ですから、本当に電気工学は奥が深いと思います。

■仕事には困らない学問

森川弘基さん

なぜ東京電力の入社を希望されたのですか。

森川:人の役に立つ仕事をしたい、それはモノよりエネルギーだと、大学院に進むときに考えたわけです。そして就職のときに、ぜひエネルギー関係の仕事をしたいと思いました。そこで色々検討した結果、人々が安心して電気を使うのに役立つ仕事がしたいと考えて、東京電力の入社を希望しました。

研究室にいた方全員、森川さんと同じように電力会社へ進んだのですか。

森川:いいえ。私の同期は、たまたま電力会社が多かったのですが、先輩達の中には、電気機器メーカーや公的研究機関など、電力以外の分野で活躍している方もいます。就職できなかった、という人は聞いたことがありませんね。仕事には困らない学問だと思います(笑)。でも、就職のときの企業訪問時にも、電気工学は幅広い応用ができる学問だと実感しました。なにかしら電気に関わっている会社は無数にありましたから。

■学生時代の研究と、今の仕事がつながっている

現在のお仕事をお教え下さい。

森川弘基さん

森川:現在のミッションは技術調査で、新技術を調査・評価し、どのように事業に活かすかを研究しています。たとえば次世代のエネルギーとして注目されている太陽光発電について、将来の技術開発を見通しながら、どのようにエネルギー・環境・コストの問題を解決していくのかを日々、調査・研究しています。たとえ、実現可能な技術だとしてもコストが高ければ経営は成り立ちませんし、お客さまにとっても利益となりません。常にコスト意識を持ちつつ、どのように新しい技術を取り入れて社会に貢献するのかを研究しています。

偶然かもしれませんが、学生時代の研究と似ていますね。

森川:そうですね。私自身も驚きました(笑)。調査にあたっては、論文や学会の発表を調べ、深掘りして評価するという手法が共通しています。最終目的は経営への貢献ですから違ってきますが、手法は学生時代の論文発表と似ているところがあります。寝る以外は、ほとんど論文漬けであったつらい日々が今生きています(笑)。物事の本質を知るために深掘りするという過程は他の仕事をしていても同じだと思います。私が電力会社にいるからでなく、どこにいても電気工学は非常に実践的な学問といえます。

■世界中に電気の仲間がいる

仕事以外に電気工学を学んでよかったことってありますか。

森川:色々な人と会えること、話せることですね。初めてあった人と、共通の話題が見つからないときでも、電気に関係する話で盛り上がることがあります。電気というのは身近な話題から世界レベルの話まで非常に幅が広いので、たとえば「携帯電話のこと」「リニアモーターカーのこと」「地球の環境問題のこと」、なんでも話ができます。電気工学を学んでいると、話題には困りませんね(笑)。

森川弘基さん

そういう話ってなぜか熱くなりますよね(笑)。

森川:電気工学に携わっている人とならなおさらです。そして、それは海外の人であっても同じです。電気関係の国際会議は非常に多くあり、世界中からエンジニアや研究者の方が集まります。また、電気技術について意見交換するために、海外の大学や企業の方が来社されることもあります。こうした方々は、電気工学をやっていたからこそ出会えた人々なのだと思います。私が電力会社にいるからというわけではなくて、電気に関わっている人には必ず共通の話題があるから、スムーズにコミュニケーションがとれるのです。そういう人達が世界中にいる。これは電気工学を学んで本当に良かったなぁと思うことです。

■電気工学は、本当に幅広い学問です

最後に今電気工学を学ぼうとしている方々へメッセージをお願いします。

森川弘基さん

森川:繰り返しになりますが、本当に電気工学というのは幅広い学問だと思います。応用分野が多く、色々なところに広がっていくので、活躍の場はどこにでもあるし、人生が豊かになるといっても過言ではないかもしれません。日本だけでなく、世界中どこへ行っても電気工学の知識は活かせます。私自身、将来は電気工学の知識を使って、世界中の人々の役に立つ仕事をしたいという夢を、入社時から持っています。ぜひ、楽しく電気工学を学んで、一生の財産にしてください。

ありがとうございました。新技術の事業化を成功させて、私達の生活を豊かにしていただくことを期待しています。

大山 力  教授(おおやま つとむ)

国立/神奈川県
横浜国立大学 工学部 電子情報工学科

大山 力 教授(おおやま つとむ)
当研究室は1983年に開設され、以降25年間にわたり、電力システムを取りまく様々な問題に取り組んできています。2007年度より辻助教が加わり、現在は教員2名+技術職員1名+学生30名の体制です。

※インタビューへのご質問、お問い合せにつきましては、「こちら」にお願いします。

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