第2回 パワーエレクトロニクスとボランチ
サッカーと電力の舵を取れ!
電力を変換し、制御する技術"パワーエレクトロニクス"
電気工学の世界でも、いわばボランチのように、電力の舵取り的な役割を担う重要な技術があります。それが"パワーエレクトロニクス"です。
パワーエレクトロニクスとは、サイリスタ(スイッチング機能をもつ半導体素子)などを利用した、電力の変換・制御を行う技術のことを指します。
「電力を変換し、制御する技術」とは、少し分かりにくいと思うので噛み砕いて説明しましょう。皆さんがご存知のとおり、電気には「直流」と「交流」という2つの形態(カタチ)があります。電流の向きが一方向なのが直流で、電流の向きが交互に変わるのが交流です。
私たちの家庭では100V、50Hz(東日本)または60Hz(西日本)の「交流」の電気が使用されています。「交流」を使用する最も大きな理由は、直流よりも交流の方が簡単に変圧(電圧を変えること)できるからです。送電線に電流が流れると、送電線自体の抵抗により送電損失、電圧降下等が生じるため高い電圧で送電していますが、家庭等で使用するには低い電圧にする(変圧する)必要があるからです。ところが、電子機器の回路のほとんどは直流で動作しています。例えば、皆さんが使用しているノートPCの駆動には「直流」が使われています。
そのため、家庭のコンセントからノートPCに電力を供給するには、AC/DCアダプタによって電気を「交流」から「直流」に変換する必要があります。そして、ノートPC内部でも、さまざまな直流電圧に変換、制御(目的の状態にするために適当な操作・調整をすること)して回路を動作させます。
このように、電気機器等を使用するには、電気の形態を変える必要があるため、変換・制御技術は欠かせません。また、電力の省エネ化、高効率化などへ適用することができ、経済性や利便性の向上につながる重要な役目を担っています。