第40回 省エネと直流
「直流」でエネルギーロスを減らそう!
2024年11月掲載
電気の流れには直流と交流があります。私たちが普段、家庭で使う電力は交流ですが、直流は交流にない様々なメリットがあり、省エネルギーや再生可能エネルギーの普及に貢献する技術として現在、大きな注目を集めています。
コンセントから直流を流して省エネと再エネ活用を実現する
電気の流れには直流と交流があり、電力会社から私たちに送られる電気はほとんどが交流です。一方で、一般家庭で使用する機器(スマートフォン、パソコン、テレビ、インバーターエアコンなど)は直流で動くものが多く、それらは交流から直流へ電力変換しなければ使えません。ところが電力変換する際に、電力損失(エネルギーロス)が発生してしまうという特性があるのです。例えば、パソコンのACアダプターを長時間にわたって使用すると熱を帯びる場合がありますが、これは電力損失により、電気が熱として放出されているためです。日本における電力変換に伴う電力損失量は、年間の発電電力量の1割弱を占めています。
そこで現在、住宅や商業施設、オフィスビル、工場などで、電気製品への電源用電力の供給を直流によって行なう「直流給電/配電」の研究開発が進められています。その背景として、変換による電力損失の削減に加えて、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーと、蓄電池が直流で発電・蓄電されていることが挙げられます。「直流」は省エネと再エネ活用を一挙に可能にする、カーボンニュートラル実現へ向けて重要な技術の一つと言えるでしょう。
これからはAIの普及も送電も直流がキーテクノロジー
現在、直流給電の活用が特に進められているのがデータセンターです。社会全体のデジタル化の進展や生成AIの登場によってデータ処理量が爆発的に増加しており、データセンターの消費電力が大変高まっています。そこで省エネのための取り組みとして、「高電圧直流給電」の導入がデータセンターで開始されています。これによって電力変換を最小限に抑え、電力損失を削減しており、AI普及にも「直流」が貢献しています。
最後に、「直流送電」についても触れておきます。直流は交流に比べて送電時の効率性が高く、送電ロス(エネルギーロス)が少なく遠くまで送電できるメリットがあります。日本の送電ネットワークにおいては、海底ケーブル送電などで使用されている程度ですが、海外では盛んに活用されており、今後の技術発展が望まれます。
これまでご紹介してきた「直流」への取り組みは、どれもまだまだ発展途上の段階でさらなる技術革新が求められます。そのためのキーテクノロジーは、まさしく電気工学です。