電気工学を学んだひとは、ズバリ「就職に強い」です。

電気工学を学んだ人たちは、本当に就職に強いのか?どのような業界に求められているのか?転職はできるのか?こうした疑問を人材採用・人材育成の専門家である、就職情報サイト「マイナビ」三上隆次編集長に伺いました。電気工学に関する、株式会社マイナビによる調査データと共にご紹介します。

※本インタビューは、2013年2月に行いました。

プロフィール

1986年株式会社毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)入社。
1989年に就職情報事業本部の大阪営業部に配属、採用コンサルタントとして新卒採用に携わる。
1993年大阪支社広報課(現キャリアサポート課)に配属。
以後、学生向け支援を精力的にこなす。2012年より現職。

40年にわたって、電気工学はずっと売り手市場です

株式会社マイナビは前身の毎日コミュニケーションズから40年にわたって、新卒の採用活動をサポートさせていただいています。その長い歴史の中で電気工学系の学科は、基本的にずっと売り手市場(就職活動で学生有利な状況)です。例えば、当社は3年に1度「工学部学科系統で企業がどの学科を採用したいか」というデータを調査しいますが、前回2010年度、2008年度の結果でも電気系と機械系がトップでした(図1、図2)。

また、大学の学校推薦の求人数も、電気系の学科は在籍者の約10倍の求人数があります。具体的には国立大学を例にとると、現状、多くの大学では1学科40~50人ほど学生が在籍していますが、約500社の求人があります。ズバリ、就職に強い学科であると言ってよいと思います。

図1:マイナビ調査データ2010 今後理工系人材としてニーズの高い「学科系統」
【出典】マイナビ調査データ「企業対象アンケート(採用スケジュール・人材育成・理工系人材)」
今後理工系人材としてニーズの高い「学科系統」を上位5つ選択(1を5ポイント、2を4ポイント、3を3ポイント、4を2ポイント、5を1ポイントで計算し、その数値を合算して集計)

図2:マイナビ調査データ2008 今後理系人材としてニーズの高い「学科系統」
【出典】マイナビ調査データ「新卒採用における人材ニーズ(理工系 ・バイリンガル人材)に関するアンケート結果」
今後理系人材としてニーズの高い「学科系統」 上位5つ選択(1を5ポイント、2を4ポイント、3を3ポイント、4を2ポイント、5を1ポイントで計算し、その数値を合算して集計)

インフラ、製造業・非製造業問わず、全ての業界が求めている

電気系の学生を求める企業は、電力会社、電機メーカーが多いですが、それ以外の製造業すべてにニーズがあります。例えば自動車メーカー。今のクルマはご承知のように電気がないと動きません。また食品メーカーや化学メーカーも、工場の稼動や材料の作成に電気が欠かせません。当社でも、電気系の学生向けに素材メーカーや化学メーカーを集めた就職説明会を開催しています。また変わったところですと、テレビ局も放送設備に電気技術者が必要なため、電気系の求人を行っています。テレビ局は人気業界ですが、技術者を求めていることはあまり知られていないため、技術職専門の説明会やDM(ダイレクトメール)などの採用活動も行っています。

これまで申し上げたのは技術系の企業になりますが、いわゆる営業系の企業からも非常にニーズが高いです。1990年ごろから総合商社やメガバングも、理工系の学生の採用に力を入れはじめました。これは、幅広い取引先を相手にしていくうえで、担当者には製品技術の理解や論理的な嗜好、数学の素養などが求められるためです。従いまして、電気系はインフラや製造業から金融まで、非常に多くの業界・職種から必要とされています。

転職でキャリアアップを実現している、電気系技術者は多い

一方、転職者の求人ですが、ここ数年、企業が新卒採用を絞っている影響もあり、現在、転職の求人案件は、過去最高と思われる位に多いです。その中でも、電気系の技術者は非常にニーズが高いです。一般公募で募集している企業はもちろん、人材紹介会社に登録して転職活動をしている人も増えています。

業界や職種も新卒と同様に幅広く求められていますが、転職先には、経験を生かせる職種を探す傾向があるため、やや狭まるかもしれません(企業も同様に経験値を求めています)。ただし、新卒のときには行けなかった大手企業へ転職するといった人たちも多く見受けられます。いわゆるキャリアアップ転職の成功です。また一般的に、ある程度の年齢・キャリアを積まれた方は、地元へのUターン転職を行う場合があります。その場合、地方でも電気系の技術者は転職がしやすいです。県で予算をとって、電気系技術者の求人活動を行う自治体まであります。中途採用も新卒採用と同様に“転職に強い”と言ってよいと思われます。

視野を広げて就職活動をすれば、進路はきっと見つかる

今後も電気工学出身者への高い人材ニーズは、変わらないと思います。マイナビは日本全国あらゆる業種約1万社の取引先がありますが、企業の担当者様とどの学科の学生が欲しいのかという話では、電気が一二を争って必ず出てきます。また、企業からはマイナビに、どの学科が電気系なのか分類して欲しいという要望もいただきます。最近の風潮として、電気という名前が付いていない学科が出てきているためです。さらに企業のグローバル化にあわせて、外国人の電気の技術者が欲しいというニーズも増えています。それだけ電気系は企業から求められているのです。

従って、電気工学科は求人案件が数多く来ています。しかしそれだけ多くの案件があるのにも関わらず、希望の企業に行けない人も多いです。そこで、私がお伝えしたいのは、もっと進路先の視野を広げて欲しいということです。いわゆる大手企業や華やかな業界でなくとも、電気の技術や知識が生かせてキャリアを積める企業はたくさんあります。また先ほども申し上げたように、電気系の技術者は転職してキャリアアップも望めます。また、2002年にノーベル化学賞を受賞した島津製作所の田中耕一さんは電気工学出身者です。自分の希望通りの企業へ入れなかったとしても社会へ出れば、確実にチャンスはあります。広い視野を持って社会へ出れば、電気工学出身者は充実した人生を送れると思います。


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