第10回 震災と電気工学その1 周波数変換の謎、徹底解剖。

2011年11月掲載

2011年3月11日の東日本大震災では、発電所などが大きな被害を受けました。このため、関東地方、東北地方は、大変な電力不足に陥り、社会に大きな影響を与えました。このような災害時の電力不足の対策として注目を集めているのが、周波数の異なる地域からの「電力融通(でんりょくゆうずう)」です。今回の震災でもこの電力融通の応援が行われましたが、これを行うには、周波数が異なるため、周波数を変換する必要があります。また、応援できる電力にも機器の制約から上限があります。

今回の身近な電気工学は、この『周波数変換』にまつわる疑問を集めてみました。

Q1 そもそも周波数って何ですか?

家庭に送られてくる電気は、向きと大きさが1秒間に何十回も変化する波の形になっていて、「交流」といいます。また、この1つの波が、1秒間に繰り返される回数を、周波数(Hz:ヘルツ)といいます。日本の電気は静岡県の富士川から新潟県の糸魚川(いといがわ)あたりを境にして、東側は50Hz、西側は60Hzの2つの周波数に分かれています。

周波数とは

周波数とは

Q2 なぜ東日本と西日本では周波数が違うの?

電気をつくる発電機は、明治時代に輸入されました。関東には東京電燈という会社があり、ドイツ製の50Hzの発電機を輸入し、また、関西では大阪電燈という会社が、アメリカ製の60Hzの発電機を輸入し、これにより、それぞれの周波数で東日本、西日本に広まり、今日に至っています。

Q3 周波数を統一することはできないの?

結論から言えば、現状では困難です。一方の電力会社の設備や工場、家庭の機器など、全てどちらかの周波数(50Hz or 60Hz)にすると、何十兆円という莫大な費用や長い時間がかかるためです。

Q4 周波数変換所はどれくらい電力を変換できるの?

東と西の周波数変換は、長野県の新信濃変電所と静岡県の佐久間周波数変換所、東清水周波数変換所の3箇所で行っていて、変換能力は、計約100万キロワット(※)です。震災直後も西日本から東日本へ電力融通の応援をしていましたが、上限があるため電力不足を解消することはできませんでした。現在、経済産業省と電力会社は周波数変換所の増設に向けた検討を行っていますが、増設するまでには数年が必要と言われています。

周波数変換装置所(F.C.)

※原子炉一基分の発電電力に相当する。

Q5 周波数変換の仕組みはどうなっているの?

周波数変換は、以前は水銀整流装置を使っており、大型の装置でしたが、最近は電力用半導体素子のサイリスタ素子を複数個組み合わせたサイリスタバルブと呼ばれる装置を使用して行っています。一方の周波数をサイリスタバルブによって、一度直流に変換し、この直流をさらに他方の周波数に変換します。変換装置は以前より小型化、大容量化しており、これは、電気工学のパワーエレクトロニクス技術の進歩によるものです。

西日本(60Hz)の周波数を東日本(50Hz)の周波数に変換する仕組み

佐久間周波数変換所とサイリスタバルブ

佐久間周波数変換所とサイリスタバルブ

Q6 周波数変換の課題を解決するには、今後どうすれば良いの?

周波数変換所の増設には、多額の費用と時間がかかります。また、接続される送電線の増強が必要な場合、さらに費用と時間がかかります。これらの課題を解決するためには、変換能力をさらに向上させることが不可欠で、より一層のパワーエレクトロニクス技術の発展が望まれます。

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