ゲオルク・ジーモン・オーム(1789-1854)ドイツの物理学者。熱電対を用いた実験により、「オームの法則」を発見した(1826年)。

電圧(V)=電流(I)×抵抗(R)。中学校の理科で学習する有名な“オームの法則”。電流は電圧に比例し、抵抗に反比例するというシンプルな法則ですが、19世紀に電気の研究が進んでもなお、たやすくは発見できませんでした。オームは巧妙な実験装置の考案により、この法則をみごとに導き出しました。

電流回路にひそむ未知の法則を求めて

電流を水の流れのようなものとみなせば、その流れる量を測定することで、未知の法則が発見できるのではないか?
これがオームの研究の出発点でした。乾電池と電流計、抵抗器(豆電球やニクロム線など)で、今日、オームの法則は誰でも簡単に確かめられます。しかし、オームの時代に使われていたのは“ボルタ電池”。発生する水素の泡が電極を取り囲むため、電圧はみるみる低下してしまいます。これでは正確な測定ができず、オームの実験はすぐに行き詰まってしまいました。

ボルタ電池

実験成功をもたらした熱電対。

熱電対

オームはボルタ電池のかわりに熱電対(ねつでんつい)を利用することを思いつきました。熱電対というのは、2種の金属を接続したもので、2か所の接続部に温度差をつくると電流が流れます。これは発見者の名をとってゼーベック効果といいます。

沸騰水と氷水の温度差を利用して一定電圧を保つ。

熱電対を利用してオームは巧妙な実験装置を組み立てました。一定の電圧を得るために、熱電対の温度差は常に一定になるような工夫が必要です。そこで、オームは2つの熱電対の片方を沸騰水の100℃に、もう片方を氷水の0℃に保つことで、一定の電圧が得られるようにしたのです。電流の測定にも工夫が凝らされました。当時はまだ感度のよい電流計などなかった時代です。オームは糸で吊るした磁石の針を電流計として利用しました。電流の強さに応じて、磁石の針が傾くので、その角度を読み取ったのです。

オームの実験装置

オームの法則の単位記号に名を残す3人の学者たち

こうして発見されたオームの法則は、電気理論の基本法則として、その重要性が認められていきました。ボルタの名にちなむV(ボルト:電圧の単位、エピソードはこちら)、アンペールの名にちなむA(アンペア:電流の単位、エピソードはこちら)、そしてオームの名にちなむΩ(オーム:抵抗の単位)。電気工学のその後の発展をもたらした3人の学者の名前は、電圧(V)=電流(I)×抵抗(R)という関係式の中に並んでいます。オームは音響学の分野でも重要な業績を残しています。オームは、一般的な音は、基音(特定の周波数の純粋な正弦波)と、そのいくつもの倍音(基音の整数倍の周波数の正弦波)で構成されていることを発見しました。これを「オームの音響法則」と呼びます。 音響分析機器などない当時において、オームは音感にすぐれた友人の助けを借りて解明しました。

基本的な物理法則が支える、電気工学

「オームの法則」や「ファラデーの法則」などの基本的な物理法則が、「電気自動車」や「超電導」といった電気工学の最先端技術を支えます。電気工学の最先端技術をもっと知りたい方は、下記をご覧下さい。

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