低炭素社会の実現に向けて自然エネルギーの利用が注目されています。太陽光発電と並んで、近年、各地に発電用大型風車が建設されています。風車のブレード(翼)には、軽くて丈夫なFRP(繊維強化プラスチック)などの新素材が活用され、風車の大型化に貢献しています。

航空機技術が応用された風力発電の風車

風力発電の風車のタイプ

風車は英語でウィンドミル(windmill)といいます。ミルとは“ひき臼”という意味。古くから中央アジアや欧州では風車によって石臼を回し、小麦の製粉に利用していたからです。風車にはさまざまな種類がありますが、主流は3枚のブレード(翼)をもつプロペラ型です。航空機のプロペラの設計技術が応用されて、風のもつエネルギーの約40%を電力に変換することができます。

風車のブレードに使われる新素材

2008年10月に運転を開始した鹿児島県出水郡長島町・東町にある長島風力発電所〔長島ウインドヒル(株)〕には、三菱重工業製の出力2,400kWのプロペラ型の大型風車21基が設置されています。 この風車は、タワーの高さは70m、ブレードの長さは45mにも及びます。ブレードは、強風によって折れたりしないように軽さと強靭さを兼ね備える必要があります。そのため、金属ではなくFRP(繊維強化プラスチック)という複合材料が使われます。

大型風車の内部構造

軽くて丈夫な新素材が自然エネルギー活用には不可欠

FRP製ブレードの製造方法

FRPはガラス繊維や炭素繊維などをプラスチックで固めた複合材料です。薄い繊維のシートを繊維方向が異なるように積み重ねた後に、プラスチックを浸み込ませて成型します。金属材料より軽く丈夫で錆の心配もなく、しかも自由な形状に成型できるため、航空機の翼、ボート、鉄道車両などのほか、身近には、ゴルフクラブ、釣り竿にも利用されています。無尽蔵で、燃料不要ですが、エネルギー密度は低い自然エネルギー。これを最大限活用するには、FRPのような軽量かつ強靭な素材が非常に重要な役割を果たしています。

海洋国日本に期待される洋上風力発電

国土が狭く、また起伏の激しい山国の日本列島は、風車の立地に恵まれているとはいえません。しかし、日本は四方を海で囲まれた海洋国。そこで、注目を集めているのが洋上風力発電です。例えば欧州では、浅い海底に基礎を置いた着底式の洋上風車が実用化されています。日本には深い海域が多いので、巨大なイカダ状の建造物を浮かべて、その上に多数の大型風車を載せて発電する、浮体式洋上風車が構想されています。ブレードの回転にともなう騒音問題も解消され、風に合わせて洋上を移動することも可能です。

フロート式洋上風力発電所構想の例

「化学」は「電気工学」の発展を支える

身の回りを化学の視点でとらえると、新鮮な発見があります。環境問題、エネルギー問題の解決など、化学が果たすべき役割はますます重要になっています。電気工学の発展をサポートするのも化学です。

※太陽光、風力発電の基礎と研究室が分かる!

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