第2回 パワーエレクトロニクスとボランチ
サッカーと電力の舵を取れ!
身近なパワーエレクトロニクス(続き)
エアコン、洗濯機、照明器具、そして新幹線 ~インバータ~
インバータは、交流電動機が使用されている製品などに用いられています。電動機とは、一般に「モータ」や「電気モータ」と呼ばれ、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電力機器です。インバータは、直流から任意の周波数をつくり出すことで、交流電動機の回転速度を自由に制御することができるのです。例えば、以下のような使われ方をされています。
エアコン
ルームエアコンは、温度コントロールをコンプレッサ(空気圧縮機)の回転数の制御で行っています。そこで、固定された周波数(50/60Hz)の交流を一度直流に変換した後、インバータを使って任意の周波数の交流をつくり出すことで、コンプレッサの回転数を自在に変えることが出来ます。これが優れた温度調節を可能にするインバータエアコンです。
洗濯機
洗濯機も洗濯槽(脱水槽)の制御にインバータを使い、洗浄時や脱水時はパワー全開で回したり、洗濯物の量が少ないときはパワーを絞って省エネにしたり、状況に応じた最適な制御を行います。衣類の種類や汚れなど、きめこまやかな制御も可能です。
照明器具
蛍光ランプは放電現象を利用した光源ですが、ランプを点灯させたり、点灯を持続させるためには安定器が必要です。インバータ方式は、従来の安定器のかわりに電子部品によるインバータ回路を用いて、電源の周波数を数十kHzの高周波に変換して蛍光ランプを点灯させます。これにより、発光効率を改善し、損失を少なくすることができ、省エネルギーに貢献します。
新幹線
日本国内の電車には直流電動機で駆動する直流電車と、交流電動機で駆動する交流電車があります。新幹線などは交流電車であり、その速度制御には、交流電動機に加わる周波数を変化させるインバータ方式が使用されています。
電車の制御 ~直流チョッパ方式~
直流電車は、路面電車、地下鉄、近郊電車などが挙げられます。直流電車の速度制御には、直流電動機に加わる直流電力を変化させる直流チョッパ方式という技術が使用されています。
その他(電子機器、自動車)
私達の身の回りには、コードレスの電子機器が溢れています。コードレス電話、携帯電話、ノートPC、ポータブル機器など、数えればキリがありません。これらの製品の共通点は、電源にバッテリーを使用していることです。バッテリーからは直流が供給されますが、バッテリーの電圧が下がると回路の誤動作が起きたりするので、それを防ぐ回路が設けてあります。
コンセントにつないで交流を利用する電子機器でも、交流を直流に変換した後、安定した電圧の直流を得るための安定化回路が組み込まれています(リニア方式とスイッチング方式があります)。
また、自動車にもエンジン系、駆動系、ボディ系、電装系などに、たくさんの電力用半導体素子が使用されており、パワーエレクトロニクスの技術が活かされています。