2020年12月掲載
世界には日本にないユニークな発電方法がいろいろあります。月などの引力の影響で起きる“潮の満ち引き”を利用した「潮力発電」もそのひとつです。
潮の満ち引きは、月などの引力で起きる
リンゴの落ちる姿を見て、アイザック・ニュートン(1643-1727) が「万有引力の法則」を発見した有名な話はご存知でしょう。
万有引力の法則とは、すべてのもの(万有)が互いに引き合う力(引力)を持っているという法則です。
私たちが地面に立つことができるのは、この引力があるからです。ちなみに、地球が私たちを引きつける引力のことを重力と呼んでいます(※1)。
引力は地球だけでなく、月や太陽にもあって地球に影響を与えています。
その代表的な現象として挙げられるのが"潮の満ち引き(潮汐)"で、地球との距離が近い月の引力が大きな影響を及ぼしています(※2)。
潮の満ち引きとは、月の引力の影響で、海面が12時間または24時間の周期で上下に動く現象です。
海水面が最も高くなる時を満潮(満ち潮)、海水面が最も低くなる時を干潮(引き潮)と言います。
●潮の満ち引き
月のある側では月の引力でいつも満潮です。その反対側は月の引力が弱く海水が取り残され、地球の自転による遠心力が加わり、こちらも満潮になります。月と直角な方向では海水が低くなり、干潮になります。
潮汐力発電のメリットとデメリット
この潮の満ち引きを利用した発電は潮力発電と呼ばれており、そのうち、潮の干満時の潮位差(位置エネルギー)を利用して、干潮時や満潮時に発電を行うのが潮汐力発電で、発電の原理自体は水力発電と同じです。
潮汐力発電自体の歴史は古く、1966年に完成したフランスのランス潮汐発電所からはじまりました。
しかし、発電場所が満潮と干潮の潮位に一定の差がある場所に限定される、塩水の影響でメンテナンス費用が膨大になる、海洋環境に影響をもたらす、などといったデメリットがあります。
そのため、日本ではまだ研究段階で、世界を見ても導入している国は数カ国にとどまっています。
とはいえ潮汐力発電は、再生可能エネルギーであるにも関わらず、風力発電や太陽光発電とは異なり、天候など気象の影響を受けにくいという特徴があります。さらに潮位差は地球や月の動きで計算できるため、一日の発電量の予測が容易です。さらなる普及・実用化が期待される発電方法で、電気工学をはじめとする関連技術の進化が望まれています。
●潮汐力発電の仕組み
①満ち潮のときに海水をため、②ためた海水を引き潮の時に海に流して発電用タービンをまわす。
(※1) 厳密には重力は、地球が持つ引力と地球の自転による遠心力を合わせた力のことを指すが、重力のほとんどは引力だと考えられている。
(※2) 太陽が潮の満ち引きに与える影響は月の半分と言われている。
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