第12回 震災と電気工学その2 電気工学的、節電とは?

2012年5月掲載

昨年の東日本大震災以降、企業や家庭において節電への取り組みが盛んに行われています。節電は、緊急時だけでなく、普段の生活においても意識する必要があります。今回は、改めて節電における重要なポイントと、電気工学における節電(エネルギーの高効率化)についてご紹介します。

1.まず、電気の使用量が多いものをチェック!

電気の使用量は機器によってかなり違います。各機器の取扱説明書などで電気の使用量(消費電力)をチェック。また、機器を使っている時に、クランプメーターなどで、使用する電流や電力が計測できます。

一般に、電気使用量が多い機器はエアコン(冷房・暖房)、照明、冷蔵庫、テレビなどです。1000Wを上回る電気製品としては、温水洗浄便座、電気ポット、食器洗い乾燥機、オーブントースター、掃除機、ドライヤー、洗濯乾燥機、ジャー炊飯器、電子レンジ、アイロン、IHクッキングヒーターなどがあります。

家庭で使用する電力の用途別使用量(2003年度)

出所:資源エネルギー庁「平成16年度電力需給の概要(平成15年度推定実績)

※資源エネルギー庁「家庭の節電対策メニュー」より抜粋。
(注)割合は四捨五入しているため、合計が100%とは合いません。

2.電気使用量が多い機器は使うのを控え、また省エネ機器に取り替える。

電気使用量が多い機器の使用を控えるのは、節電に大きな効果があります。例えばエアコン(冷房)の設定温度を2度上げると全体(※1)の10%節電、昼間に照明を消すと5%節電、冷蔵庫の設定を「強」から「中」にして食品の詰め込みを減らすと2%節電になります。

また、その他の電気機器も使用を控えたり、省エネ機器に取り替えたりして節電に挑戦してみましょう。照明なら、LEDや有機EL、空調ならヒートポンプや高効率吸収式冷温水器。また、エネルギーマネージメントの制御技術としてHEMS(※2)やBEMS(※3) などもあります。

でもエアコンを全く使わないなど、無理をして体をこわさないように注意しましょう。

(※1)全体の消費電力を1200W(夏の14時頃)として計算。
(※2)HEMSとは Home Energy Management Systemの略。家庭内のエネルギー消費する機器をネットワークで接続し、稼動状況やエネルギー消費状況を監視し、省エネ・効率化を図るシステムのこと。導入する家庭が少しづつ増えている。
(※3)BEMSとは Building Energy Management Systemの略。ビル内のエネルギー消費する機器をネットワークで接続し、稼動状況やエネルギー消費状況を監視し、省エネ・効率化を図るシステムのこと。導入する企業(ビル)は多い。

3.わずかな節電でも大きい「待機電力」の削減

震災発生以降、「夏場は温度を1℃上げる(冬場は1℃下げる)」、「不要な照明は消す」といった節電対策が経済産業省から発表されています。なかでも、ポイントは“待機電力”の削減です。震災まで耳慣れなかった言葉ですが、待機電力とは、スイッチを入れてなくても、コンセントにつないでおくだけで消費する電力のことをいいます。「使わないときは主電源をオフにする」、「長時間使わないときはプラグをコンセントから抜く」など、使い方に気をつけるだけで、1年間で約2,570円の電気料金を節約できるといわれています。

待機時消費電力量の占める割合

4.毎月の電気の使用量をチェックしましょう!

ところで、節電を行うことは、資源を大切にすることにつながり、社会に貢献することになります。ですから普段から続けて行うことが重要です。自分の家庭や会社が、どのくらい節電にがんばったのか、その数値を見てみると、もっと節電しようという気持ちになって、続けられるのではないでしょうか。そこで、毎月、「電気使用量のお知らせ」などの紙がポストに入っています。これで毎月の節電の実績をチェックしましょう。できればこのお知らせを保存して、前月や前年と比べてみるとより良いでしょう。(このお知らせの詳しい説明は、各電力会社のホームページに載っています。)

さらに、新しい電力計が一部の家庭や工場に設置され始め、これにより現在または毎日の電気使用量が一目でわかるようになります。

5.電気工学を発展させて、省エネルギー社会にしよう!

現在の電気工学は、電気エネルギーの高効率化が研究の主流となっています。一見、地味に思えますが、実は社会全体では大きな省エネルギーにつながる研究で、地球環境保全に大きな役割を果たします。そこで将来、大きな役割を果たしそうな研究を、パワーアカデミーのインタビューコーナーから一部、ご紹介しましょう。

~超電導ケーブルの研究~

超電導ケーブルは、大容量送電が可能な上に電力ロスがほとんどありません。ですから、電気の経済性はもっと良くなると思います。それから環境面ですね。電力ロスがないことで、CO2の排出量が少なくなるという特徴があります。」

社会人インタビューvol.5 住友電気工業株式会社 西村崇さん(一部略/改)

住友電気工業株式会社 西村崇さん

高温超電導ケーブルの断面図(サンプル)

高温超電導ケーブルの断面図(サンプル)

~モーターの高効率化研究~

「私はモーターの高効率化の研究をしています。モーターは、電車、工場、家電製品などで数多く使用されています。ですからモーターの高効率化ができれば、社会全体でかなりの省エネルギーになるのです。例えば、『回転機全体の効率を1%改善すると、約70万kWの発電機1基分の省エネになる』ともいわれています。」

学生インタビューvol.9 岡山大学 高橋研究室 三木浩平さん(一部略/改)

岡山大学 高橋研究室 三木浩平さん

様々な工作機械で実験を行って、モーターの研究を行います。

様々な工作機械で実験を行って、モーターの
研究を行います。

~パワーエレクトロニクスの研究~

「パワーエレクトロニクスは、省エネルギーや地球温暖化を防止するCO2削減などに密接に関係しています。例えば、電動機の駆動電力は日本国内の消費電力の約半分を占めていると言われています。ですから、電動機の制御をもっと効率よく行えば、大きな省エネルギーにつながり、地球環境に貢献できます。」

社会人インタビューvol.14 富士電機株式会社 能登泰之さん(一部略/改)

富士電機株式会社 能登泰之さん

※パワーエレクトロニクスの詳細は、身近な電気工学第2回をご覧ください。

こうした電力機器・システムに関する高効率化の実現や、電力を無駄なく効率的に使うパワーエレクトロニクス技術は、震災後の日本社会においてますます重要になっています。また、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入にも大きく貢献しています。電気工学の発展は、省エネルギー社会の実現へ迫る道と言えるでしょう。

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