2021年11月掲載
虫めがねで太陽の光を熱に変えて紙などを燃やす実験。理科の授業などで皆さんもやったことがあるのではないでしょうか?この太陽の"熱"は、実は私たちの身の回りの電気機器で色々と使用されており、発電にも利用されています。
私たちの身近で活躍する太陽熱利用
太陽の熱を利用する取り組みは、寒さから人類を守るため、古来より行われていました。例えば、より多くの熱を取りいれるため、地域によって家の構造が違うのもそのひとつです。
現在、私たちの身近な太陽熱の利用としては、給湯や暖房、冷房などが挙げられます。一般的に給湯では、家の屋根などに設置した太陽熱の集熱器で、水を温めてお湯(50~60℃)をつくります。さらに、そのお湯を循環させることによって、床暖房などにも利用します。一方で冷房では、太陽熱集熱器からの温水(~90℃)を、冷凍機の熱駆動に利用して冷房を行います。
太陽熱発電の集光方法は、虫めがね実験と同じ原理
さらに、太陽熱は発電にも利用されています。それが太陽熱発電です。基本的な仕組みは、太陽の光をレンズや反射鏡(ヘリオスタット)を用いた太陽炉で集めて、その熱により水や油、溶融塩などを温めて蒸気を発生させ、その蒸気によって火力発電のようにタービンを回して発電するというものです。太陽の光をレンズや反射鏡を用いて熱を集める原理は、虫めがね実験と同じです。
太陽熱発電は再生可能エネルギーの一つで環境にやさしく、太陽光発電に比べて一般的にコストが低く、蓄熱により夜間の発電が可能などといったメリットがあります。一方でデメリットは、発電所建設のためには、日射の豊富な地域の選択と大規模な土地が必要とされることです。外国の一部では導入が進んでいますが、日本では商用の太陽熱発電は稼働しておらず、電気工学をはじめとする今後の技術開発が期待されます。
太陽熱発電の仕組み
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