2010 年、宇宙の旅のおともに「燃料電池」

2010年4月掲載

ついに今年2010年、『国際宇宙ステーション』が稼働します。これまでアニメや映画の中の世界だった、有人宇宙施設がいよいよ誕生します!
さて、実際に人間が生活する上でもっとも重要なのは言うまでもなく、水です。その水、宇宙ではどのように得られているのか知っていますか。もちろん、地球上から運ぶものもありますが、多くは燃料電池から発生させてつくられているのです。

燃料電池というのは、反応物質を与え続ければ、いつまでも電気と熱を作り出すことのできる次世代の発電装置です。みなさんが中学生のころ、理科の授業で水に直流電流を流すと、水素と(H2)酸素O2に分解される電気分解の実験をしたと思います。その逆で、水素H2と酸素O2を反応させて、電気と水をつくるというのが燃料電池の仕組みです。

燃料電池の仕組み

このように燃料電池は、電気を発生させると同時に、飲み水が得られることから、特に、有人宇宙船の電源として研究が進み、1965年、純粋な水素と酸素を使った燃料電池が、アポロ宇宙船に積み込まれて実用化に成功しました。その後、燃料電池は引き続き宇宙船の動力源・飲み水の供給源として活用されるとともに、効率が良いことから発電用として技術開発が進められています。

知って得するトリビアコーナー/燃料電池はなぜ電池?

電池と言うとゲーム機やテレビのリモコンに入れる小さな電池を思い浮かべますが、燃料電池はこれまで説明してきたように、電気を貯めるものではなく発電機です。絶えず水素と酸素を供給しなければ電気が発生しません。一体なぜ、この「燃料電池」は電池と呼ばれるのでしょうか?電池を辞書で調べると「化学的な反応によって起電力を発生させる装置」(『広辞苑』第四版)とあります。燃料電池は、水素と酸素の化学反応により電気エネルギーを取り出す装置ですから、実は定義どおりの電池なのです。ちなみに、燃料電池は英語の「Fuel Cell」(フューエル・セル)の訳語です。Fuelは燃料、Cellは小部屋や電池、細胞などの意味があります。

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