アンドレ=マリ・アンペール(1775-1836)フランスの物理学者。物質の磁性を電気的に説明し、それを「アンペールの法則」として数式化した。

1789年のフランス革命は、社会制度ばかりでなく、科学技術の面でも大きな変革をもたらしました。特に重要なのが、1794年の「エコール・ポリテクニーク」の創設です。エコール・ポリテクニークは、フランス革命後の工兵将校不足に対処するために創設された理工科学校で、偉大な科学者を続々と輩出しています。電流の単位でお馴染みのアンペールは、1809年よりエコール・ポリテクニークで数学教師を勤め、1820年「右ねじの法則」を発見しました。

電気と磁気の始まりはエルステッドの実験から

科学的な発見というのは、しばしば偶然からもたらされるものです。1820年、デンマークのエルステッドは、ボルタ電池で金属線に電流を流す実験をしているとき、近くにあった方位磁石の針が、かすかに振れるのに気づきました。「電流の磁気作用」の発見です。
長らく無関係と思われていた電気と磁気の隠れたつながりが、この発見をきっかけに、しだいに明らかにされていきました。

エルステッドの実験

「右ネジの法則」のルーツは?

エルステッドの実験の知らせは、たちまちヨーロッパ各国をかけめぐり、多くの科学者の追試によって確認されました。フランスのアンペールは、この実験を発展させ、電流が流れる2本の導線に力が作用することを発見し、電気力学という分野の開拓者となりました。物理の教科書でおなじみの「右ネジの法則」は、電流と磁界方向を知るための簡単な暗記法です。

地磁気についても考察したアンペール

アンペールは自ら発見した法則を数式としても記述し、電気工学の理論的発展に大きく貢献しました。また、電流が流れるコイルは磁石と同じ性質を示すことから、アンペールは地球の地磁気も、同じように説明できるのではないかと考えました。地球を巨大な磁石とみなすと、北磁極は磁石のS極、南磁極は磁石のN極となっています。したがって、右ネジの法則から、地球には自転方向と逆(西回り)の電流が流れていると考えたのです。アンペールはこの電流を、地球の昼側が受ける太陽熱によって説明しようとしました。これは間違いでしたが、ここから熱と電流の関係の研究が始まり、ゼーベック効果(温度差のある2種の金属の回路に電流が流れる現象)という物理現象も発見されました。

電池力学の基礎を築いたアンペールの実験 右ネジの法則

基本的な物理法則が支える、電気工学

「オームの法則」や「ファラデーの法則」などの基本的な物理法則が、「電気自動車」や「超電導」といった電気工学の最先端技術を支えます。電気工学の最先端技術をもっと知りたい方は、下記をご覧下さい。

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