第15回 野球と電気エネルギー
万能選手!電気は多才なエネルギー。
2013年3月掲載
北海道日本ハムファイターズにドラフト一位で入団した、スーパールーキー・大谷翔平(おおたに しょうへい)選手が、投手と打者の二刀流の挑戦で大きな話題を集めています。ペナントレースでは前人未踏の“二刀流”で、是非活躍して欲しいところです。
打つ、守る、投げる、真のオールラウンドプレイヤー
大谷翔平選手(岩手・花巻東高校出身)は、最速160キロの剛腕に加え、高校通算56本塁打という打力を誇る、注目のスーパールーキーです。プロ野球でも二刀流をめざし、投手と打者、ショートのポジションの練習に取り組んでいます。
このプロ野球界で二刀流を実現した選手は、職業野球と呼ばれた戦前の野球創世記までさかのぼらなければなりません。初代・ミスタータイガースと呼ばれた藤村富美男さんは、投手でありながら、本塁打王のタイトルを獲得しました。また戦後では、伝説の400勝投手・金田正一さんは、打者としても有名で、投手の中で最多の本塁打38本を誇ります。
なぜ、この二刀流が注目されるのでしょうか。それは、投手と打者、さらに野手では、 使う筋肉や動きが全く異なり、求められる役割も違うことです。これができるのは、 とても多才な万能選手でなくてはなりません。そのため近代のプロ野球では、専門化が進み、複数のポジションを兼ねる野手すら、ほとんど見られなくなり、投手の分業制(先発・中継ぎ・抑え)の確立や、パシフィックリーグではDH制(投手の代りに指名される、守備にはつかない打撃専門の選手)まで実施されています。そういった意味でも、大谷選手の投手と打者(および野手)の二刀流の挑戦は、プロ野球に新たな夢をもたらすものといってよいでしょう。
電気エネルギーは何にでも使える万能エネルギー
投手と打者(および野手)の二刀流を目指している大谷翔平選手のように、エネルギーの世界でも、複数の異なった役割を担っているものがあります。それは電気エネルギーです。 電気エネルギーが他のエネルギーと大きく違う点は、様々なエネルギーへと柔軟に変換できることです。その結果、動力、照明、通信、冷暖房、調理など幅広い用途に利用できるというわけです。
また逆に、他のエネルギーから電気エネルギーへと変換することもできます。発電所は、色々なエネルギーを電気エネルギーに換えるための装置で、水力発電所は、高い所にある水の"位置エネルギー"、火力発電所は、石炭や天然ガス・石油などを燃やして発生する"熱エネルギー"、太陽光発電は"光エネルギー"をそれぞれ電気エネルギーに変換します。(下記図を参照)
そして、電気エネルギーは、扱いが簡単という点でも優れています。例えば、熱として使用した場合でも有害なガスや匂いが発生しません。その上、使用量の調節(エネルギーの制御)も容易です。さらに、電線やケーブルさえあれば輸送(送電)は容易であり、送電は光の速さとほとんど変わらないため、時間のロスは限りなくゼロになります。
まとめ
様々なエネルギーに変換できて、幅広い用途に使用できる電気はまさにオールラウンドな万能エネルギーと言ってよいでしょう。また、取り扱いの容易さや輸送の方法、速度など、他に類を見ない利便性まで兼ね備えています。この多才な"電気エネルギー"をどのように扱うのか、どのような物に利用するのかを専門的に扱うのが電気工学です。あらゆる産業分野に多大な影響をもたらす研究が日々行われています。