時速270kmの新幹線は、発電しながら止まる!

2015年12月掲載

電気で走る新幹線は、消費電力を抑えるための様々な工夫がされています。そのなかで大きな役割を果たしているのが“回生ブレーキ”。電気工学の主要な研究テーマでもある、モータードライブ技術の進化で生まれました。

モーターを発電機として使用することで生まれる「回生ブレーキ」

私たちの身の回りの様々な電気機器に使用されているモーター。電力を流すことで機器の動力源となることはご存じだと思います(※1)。

実はモーターは、これ以外にもいくつものすぐれた性質があります。そのひとつが発電作用です。モーターの回転軸を外部から回すと電圧が発生する現象のことで、いわばモーターが発電機となるわけです。これを利用したのが電車の「回生ブレーキ(※2)」です。

◆模型用の小型直流モーターで、上記の実験ができます。

◆模型用の小型直流モーターで、上記の実験ができます。

(※1)モーターとは、電気エネルギーを回転などの機械的エネルギーに変える機器(電動機)。高校理科で習うファラデーの電磁誘導の法則を応用したもの。
(※2)回生制動、電力回生ブレーキとも言われる。ただし発電作用は、一般的に永久磁石を使用したモーターに限られる。磁石については、高校理科と電気工学/化学⑤を参照。

「回生ブレーキ」は、現代社会に不可欠な省エネルギー技術

電車の回生ブレーキは、モーターを発電機として作動させることで減速させ、その際に発電した電気を架線に戻して、他の電車が利用するという非常にエコなシステムです。これは古くから電車で使用されている技術ですが、時速270kmを誇る最新型新幹線N700系では、必要なブレーキ力を回生ブレーキでまかなえるほど進化を遂げています。

回生ブレーキ

さらに回生ブレーキは、電車以外にも、電気自動車やハイブリッドカー、エレベーターなどに利用されており、各分野の省エネルギー化に大きく貢献しています。例えば、電気自動車における回生ブレーキも、電車と同じくモーターを発電機として作動させることで、エンジンブレーキと同様の働きをさせるものです。その時に発電された電力はバッテリーに戻されて、駆動力に再利用されています(※3)。

このように回生ブレーキは現代社会に不可欠な省エネルギー技術と言えます。その進化を支えているのが電気工学です。特にパワーエレクトロニクスの主要な研究分野となっており、ますますの発展が望まれます。

(※3)基本的な仕組みはハイブリッドカーも同様。電気自動車の回生ブレーキなどについての詳細は、電気工学と応用化学を参照

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