一般にプラスチックは絶縁体ですが、近年、電気を通すプラスチックである導電性高分子が次々と開発されました。金属とプラスチックの両方の特徴を備えた新材料として、タッチパネルほか、さまざまな分野で応用が進んでいます。

電線に電気を通さない物質が使用されている

発電所で発生した電気を効率よく送電するため、高圧送電線(鉄塔に使用されている電線)にはアルミニウムなどの電気を通しやすい金属(導電性物質)が使用されています。ところで、私たちが住んでいる周辺で目にする配電線(電柱に使用されている電線)には感電などを防ぐため、金属が絶縁体で被覆されているのを知っていますか。この絶縁体の材料にはビニルやポリエチレンなどのプラスチックが使われていますが、プラスチックが電気を流しにくいのはなぜでしょう?

高圧送電線の側面 配電線の側面図

導電性高分子は電気を通すプラスチック

電流とは電子の流れのことです。金属がよく電気を通すのは、特定の原子に束縛されずに自由に動きまわる電子が存在するからです。これを自由電子といいます。炭素や水素などの高分子化合物であるプラスチックには、この自由電子が存在しないため、一般に電気を通しにくい絶縁体としての性質を示します。しかし、この常識を破るようなプラスチックも存在します。導電性高分子とか導電性ポリマーと呼ばれる材料です。その代表的な物質である導電性ポリアセチレンの発見と開発により、白川英樹博士は2000年のノーベル化学賞を受賞しました。

金属の自由電子

ポイントは共役二重結合の電子

有機高分子の共役二重結合

高校化学で学習するように、炭素原子は4本の“腕(原子価)”をもち、炭素どうしの間で単結合したり、二重結合したりして、さまざまな有機化合物をつくります。単結合と二重結合と交互に連なった結合は共役二重結合といいます。ポリアセチレンも共役二重結合をもつ高分子化合物で、通常は絶縁体ですが、微量物質を添加すると、二重結合の電子が動き回れるようになり、導電性高分子となるのです。

有機化学は電気工学と無縁ではない

導電性高分子は、銀行のATM、自動販売機、携帯電話などのタッチパネルほか、パソコンやテレビなどの有機ELディスレイにも使われています。有機ELディスプレイは、省エネかつ面発光タイプなので、次世代の照明としても期待されています。また、導電性高分子は電気を通すので、通常のプラスチックのように摩擦による静電気が生じないため、事故やトラブルを未然に防ぐ帯電防止材としても使われています。導電性高分子を電気工学分野に適用することにより、フロンティアを切り開く材料として発展させることができるのです。

導電性高分子の身近な応用製品

「化学」は「電気工学」の発展を支える

身の回りを化学の視点でとらえると、新鮮な発見があります。環境問題、エネルギー問題の解決など、化学が果たすべき役割はますます重要になっています。電気工学の発展をサポートするのも化学です。

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