電力も駅伝も、最適配置で勝負。

2010年12月掲載

駅伝は区間配置がポイント

日本の正月の風物詩として、近年、完全に定着したのが"駅伝"です。元旦の「ニューイヤー駅伝」、そして2日、3日の「箱根駅伝」。共に新年最初のスポーツビッグイベントとして、正月の茶の間に大きな興奮をもたらしてきました。

駅伝は、数人がリレー形式で長距離を走り、そのタイムを競うスポーツです。チームスポーツであり、選手の適性や組合せ、そして配置によって勝敗がガラリと変わります。例えば、ニューイヤー駅伝では、様々な難所があります。そこに適した選手を配置し、場合によっては相手の裏を欠いた選手起用など様々な戦略が必要とされます。駅伝の区間配置は、監督やコーチの経験や分析により決定される高等戦略と言えます。

駅伝区間解説図

ニューイヤー駅伝の高低差解説図

電力系統は機器配置が重要

さて、私たちに電気を届けてくれる、電力系統においても、電力機器の配置が重要なポイントです。原子力、火力、水力の各発電所で作られた電気は、発電所等の変圧器で電圧が上げられ、送電線へ送られます。そして、送られた電気は、一次変電所、二次変電所、配電用変電所の変圧器で段階的に電圧を下げ、配電線に送られ、各家庭へ届けられます。

この発電、送電、変電、配電、そして需要家(家庭)を含めた全体が電力系統です。電力系統は、毎年増加する電力需要に対応するため、発電所や送変電設備などの大容量化や昇圧(高電圧化)、系統構成の見直しなどを行う必要があります。個々の機器能力を高めることはもちろん、ネットワークのあり方を常に検討・監視することが非常に大切です。

さらに近年は、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの大量導入に向けて、既存の電力系統と再生可能エネルギーを調和させるために、新たな電力系統の研究(スマートグリッド、マイクログリッド等)が進められています。将来の電力系統では、どのような電力機器を、どのように配置、構成するのか。駅伝の区間配置のように電力系統にも機器配置の高等戦略が求められているのです。

発電所から家庭までの電力系統イメージ図

知って得するトリビアコーナー/駅伝における選手の区間配置とは?

SPECIAL INTERVIEW 佐藤 敦之選手 Satoh Atsushi 駅伝における選手の区間配置の重要性を、中国電力陸上競技部・佐藤敦之選手に伺いました。佐藤選手は、2008年の北京オリンピック男子マラソン代表選手で、2010年のニューイヤー駅伝では区間賞を受賞。日本を代表する長距離走者です。「ニューイヤー駅伝2011は、チームとして前回(4位)を上回る成績を、個人としてはロンドンオリンピックを目指していきたい」との抱負を頂きました。

Q. 駅伝における選手の区間配置と役割は?

ニューイヤー駅伝が開催される群馬では名物「赤城颪(あかぎおろし)」の影響により、前半区間は追い風、後半区間は向かい風となります。そのため、前半区間は追い風にのって軽快に走れる選手、逆に後半区間は向かい風をものともせず力強くスタミナで走破できる選手が向いているようです。また、区間毎に距離が異なるので、必然的に能力の高い選手が距離の長い区間となります。

私が、2010年のニューイヤー駅伝で走った「4区」は、先頭との差を縮めることが求められました。2009年から2区(8.3k)がインターナショナル区間(外国人選手可の区間)に設定されたため、4区は先頭から約1分30秒~2分程の差でタスキを受ける事になったからです。先頭が見える範囲まで差を縮めることで、後半区間の選手が「勝負できる」気持ちになってくれます。 また、選手だけでなくチーム個人に役割があり、一つの目標に向かってチームが一体となれるのが駅伝の魅力だと思います。

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