電気の施設訪問レポート vol.32
「北九州次世代エネルギーパーク」を訪問しました
2024年9月30日掲載
2024年6月、パワーアカデミー事務局は、福岡県北九州市の「北九州次世代エネルギーパーク」を訪問しました。北九州次世代エネルギーパークは、多様なエネルギー供給が見学できる複合施設です。本レポートでは、「北九州次世代エネルギーパーク」で紹介されている、最先端の環境エネルギー技術を紹介します。
再生可能エネルギーを体験できる!「次世代エネルギーパーク」
次世代エネルギーパークをご存じですか?次世代エネルギーパークとは、次世代のエネルギーに関する国民理解の増進を図ることを目的とした「見学・体験型」の普及啓発施設です。経済産業省・資源エネルギー庁は、現在(2024年9月時点)までに北は北海道地方から、南は沖縄地方まで66拠点を認定しています。あなたのお住まいの地域にもきっとあるはずです。ぜひ以下の「次世代エネルギーパーク ガイドブック」をご確認ください。再生可能エネルギーなど最先端のエネルギーを体験できます。
次世代エネルギーパーク第1号「北九州次世代エネルギーパーク」とは?
パワーアカデミー事務局が訪問した「北九州次世代エネルギーパーク」は、2007年に次世代エネルギーパークの第1号認定を受けた施設です。認定を受けた大きな理由は、北九州次世代エネルギーパークが、様々なエネルギー施設が集まっている日本でも有数のエネルギー集積地であることです。次世代を担う自然エネルギー、バイオマスエネルギー、エネルギー供給基地、エネルギーの企業間連携や革新技術の研究の様子など、様々な取り組みが見学できます。
この多様なエネルギー施設が生まれた背景として、北九州市がモノづくりの街であり、産業都市であることが挙げられます。1901年(明治34年)に日本で初めての近代製鉄所である官営八幡製鉄所が操業を開始して以来、繊維、化学、ガラス、機械など多くの産業が生まれ、日本の近代化と高度成長を牽引しました。同時に、大規模なエネルギーが必要となり、常に時代に合わせた多様なエネルギーの確保に取り組んでいるのです。
「北九州次世代エネルギーパーク」は北九州市若松区北東部に位置し、2,000ヘクタールの広さを持つ埋立地に位置しています。平地で強風が常に吹き、周辺に山や森林、高い建造物などもないため、大規模な太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーに最適な場所です。周辺には広大な産業用地を活かし、リサイクル産業が集結する「北九州エコタウン」なども立地しており、最先端の環境エネルギー技術が集結しています。
それでは、「北九州次世代エネルギーパーク」の次世代を担うエネルギー施設を紹介します。
陸上風力発電
陸上風力発電機は、現在7基が稼働しており、様々な企業が参画しています。写真は、「響灘ウインドエナジーリサーチパーク合同会社」のもので、商用としては国内で最大規模の発電能力(3,300kW×2基)を誇ります。
洋上風力発電(浮体式)※実証機(2024年3月実証研究終了)
浮体式の洋上風力発電方式として、「NEDO浮体式実証機」が設置されています。本実証機の特長として、浮体式洋上風力の低コスト化を視野に、バージ型と呼ばれる浅い水深で設置可能な浮体とコンパクトな2枚羽風車を組み合わせ、施工の簡易化を実現しています。
「北九州次世代エネルギーパーク」は、洋上風力発電の「発電拠点」だけでなく、風車の組立から、完成品や部品などを積み出し、国内・アジアに輸出入できる「産業拠点」の役割も担っています。さらに2025年度には、9,600kWの大型風車を25基設置し、最大出力22万kWを誇る国内最大の洋上風力発電所となる「北九州響灘洋上ウインドファーム」が完成予定です。ますますの発展が望まれ、雇用の創出や地域産業への貢献も期待されています。
太陽光発電(追尾型)
「北九州次世代エネルギーパーク」で一番多いエネルギー施設が太陽光発電です。1,000kWから4万kW以上まで、20箇所以上の太陽光発電システムが稼働しています。「北九州市」が運営している市民太陽光発電所もあり、売電利益の一部は市民に還元され、緑化活動や市民イベントに活用されています。写真は「北九州TEK&FP合同会社」の追尾型の太陽光発電システム。トラッキングシステムとも呼ばれ、季節・時間ごとに太陽光パネルが自動で太陽を追尾して向きを変えます。通常の固定型より約1.4~1.5倍発電でき、高効率な太陽光発電システムです。
バイオマスを利用した再生可能エネルギー
バイオマスとは動植物などから生まれた生物資源のことで、バイオマス資源を燃料とした発電方式はCO2の排出削減に寄与するものとされます。写真の「響灘火力発電所」は木質バイオマスと石炭を混ぜて発電します。石炭専焼のプラントと比較して、最大で年間30%程度のCO2が削減されます。「響灘火力発電所」はバイオマス燃料を100%利用したバイオマス専焼発電所へ転換し、2026年4月の運転開始を目指しています。
「北九州次世代エネルギーパーク」をご案内いただきました
当日はあいにくの雨だったため、「北九州次世代エネルギーパーク」や「北九州エコタウン」事業の取り組みを紹介している、「北九州市エコタウンセンター」内の展示を中心にご案内いただきました。
北九州市エコタウンセンター本館
北九州市のエコタウン事業を総合的に支援する中核的施設として2001年6月に開設しました。エコタウン事業を生きた教材として活用する環境学習の拠点で展示ルームやセミナールームを備え、修学旅行、社会科見学、環境学習などを開催しています。展示ルームでは、北九州エコタウンに立地している企業や研究施設の環境・リサイクル技術、製品の展示・紹介をしています。
展示:太陽光発電パネルリサイクル事業
展示の中で最先端の環境エネルギー技術としてご紹介いただいたのが「太陽光パネルリサイクル事業」です。太陽光パネルの耐用年数は20~30年とされ、2030年代後半より年間数十万トンの廃棄が予想されています。本事業では、日本で初めて廃棄パネルの熱分解によるアルミニウム・銅・シリコンセル(銀)・ガラスの資源回収を行い、2023年には熱回収まで含め99%以上のリサイクルを実現しました。「北九州市エコタウンセンター」の北隣に立地する、株式会社リサイクルテックが操業しています。
施設:響灘ウインドエナジーリサーチパーク
響灘ウインドエナジーリサーチパークは、風力発電所と太陽光発電所を単一の連系変電設備に設置したハイブリッド型発電所を運営しています。また、洋上風力発電用の1基3.3MWの大型風車を海に面した地域で運営することにより、その運営・管理のノウハウを取得し、将来の洋上風力発電所の運営にも役立てようと考えているとのことです。今回は、こちらの風力発電設備を見学させていただくことができました。
別館:北九州次世代エネルギーパーク
エネルギーに関する基礎知識から、北九州市の先進的な取り組みまで、体験しながら総合的に学ぶことができる展示施設です。また、北九州市内で環境関連の事業を行っている企業や「北九州エコプレミアム」の展示コーナーなどを設けています。
編集後記
「北九州次世代エネルギーパーク」は、本記事でご紹介してきた施設以外にも数多くのエネルギー施設があり、実証実験も盛んに行われています。エネルギーパークの名の通り、その多くが見学できるので、電気工学に携わるすべての方にご覧いただきたいと思いました。ご案内いただいたのは、北九州エコタウンセンターの三根康子次長です。三根次長より「これからの地球環境を担う多くのエネルギーを体験できるので、ぜひご覧ください」とメッセージをいただきました。現在、北九州市エコタウンセンター内は自由に見学可能です。リサイクル工場やエネルギー施設の見学は予約が必要ですので、WEBサイトよりご確認いただき、お問い合わせください。
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