肥料の主要原料「アンモニア」は脱炭素エネルギー!

2024年7月掲載

2050年のカーボンニュートラル実現を目指して、二酸化炭素(CO2)を排出しないエネルギーの開発が進められています。燃焼してもCO2を排出しないゼロエミッション燃料であるアンモニアもその一つで、脱炭素社会の実現に大きく貢献する可能性を秘めています。

アンモニアは私たちの暮らしを支える化学物質

アンモニア(NH3)は、窒素(N)と、水素(H)からできている化学物質で、特有の刺激臭を持ちます。アンモニアと言えば、多くの皆さんがイメージするのは異臭かもしれません。しかし実は、農業分野などで大活躍している化学物質でもあるのです。しっかりと管理すれば、異臭の発生も防げます。
アンモニアの歴史は古く、1906年に空気中の窒素と水を電気分解して製造した水素からアンモニアを製造する方法(ハーバーボッシュ法)が開発され、以後、様々な分野で活用されています。私たちの身近な例ですと、園芸用肥料の中にアンモニアが使用されています。アンモニアは尿素という窒素肥料をつくるのに使われており、植物の成長を促進する役割を果たす、農業用肥料に不可欠な存在です。また、様々な医薬品の製造や、発電所の排煙中の窒素酸化物を取り除く装置、冷凍機の熱を高効率に運ぶ冷媒などにも、アンモニアは使用されています。

カーボンニュートラルの実現に重要な役割を果たす

アンモニアは燃焼してもCO2を排出しないカーボンフリーの物質です。そのため、近年では、カーボンニュートラルの実現に有効な化学物質としても注目を集めています。具体的には、主として石炭を燃料としている火力発電所において、アンモニアを混ぜて使用したり(混焼)、将来的にはアンモニアだけを燃料とする火力発電所(専焼)を目指して開発が進められています。その他にも船を動かす燃料としても、注目を集めています。
また、脱炭素社会へ向けて燃料電池など水素のエネルギー利用も進められていますが、アンモニアは水素利用に関しても重要な役割を果たします。水素は、マイナス253℃という極低温まで冷却して液体にしなければ運べないため、長距離大量輸送が難しい物質です。そこで、水素をより運びやすい物質や状態に変えて運ぶことが必要になり、マイナス3℃で液化できるアンモニアは大変有望な変換先と考えられています。尚、アンモニア自体を水素の代替材料として使うことも検討されています。

アンモニアの燃料としての主な用途

アンモニアの燃料としての主な用途

アンモニアの活用はまだまだ発展段階で、例えば発電ならば、アンモニアの安定確保や高コスト、生産過程のCO2 発生などといった様々な課題があります。一部の企業ではすでに実証試験がはじまっていますが、さらなる技術進化が求められます。そのため、電気工学をはじめとする関連学問のますますの発展が期待されています。

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