電気ウナギは、なぜ電気を出せるのか?

2016年7月掲載

電気ウナギは、文字通り電気を発生できるウナギですが、果たして何ボルトの電気を出すのでしょうか?そして、そのメカニズムは?今回は知っているようで知らない、電気ウナギについて調べてみました。

最大800ボルトもの高電圧を出す、電気ウナギ

夏といえば、やはりウナギ(鰻)がおいしい季節ですね。この"夏といえばウナギ"という風習は、江戸時代の平賀源内が考案した"土用の丑の日(※1)"という宣伝文句によって定着したと言われています。そのため、平賀源内は、日本初のコピーライターとも呼ばれています。

さて、そんな夏に欠かせない食べ物であるウナギですが、電気を発するウナギがいることをご存じでしょうか(※2)。アマゾン川流域に住む「電気ウナギ」は、300~800ボルトもの電気を数秒間発生させ、相手をしびれさせて捕えます。1個の乾電池が1.5ボルト。テレビを見たりする家庭用の電源が100ボルトなので、いかに強力かお分かりになるでしょうか?

電気ウナギ以外にも電気ナマズ(約400ボルト)、シビレエイ(約80ボルト)など電気を起こす魚は、世界で数百種も存在します。これらをまとめて「電気魚(でんきうお※発電魚とも言う)」と呼んでいます。

(※1)土用とは、中国の五行に由来する暦の雑節。四立(立夏・立秋・立冬・立春)の直前約18日間を指す。その期間の中で十二支が丑にあたる日を「土用の丑の日」と言う。
(※2)シビレウナギ科の淡水魚。生物学的には、ナマズに近い。体長は約2mで、発電魚の中では最大級の発電力があると言われる。

筋肉でできた発電器のなかで、発電板を直列につなげて発生させる

では電気ウナギをはじめとする電気魚は、どのように電気を出しているのでしょうか。人間もふくめて、すべての生き物は、筋肉を動かすとき微弱な電気が起きます。一般的に電気魚は、これを利用して、特別な筋肉でできた発電器(筋肉細胞が変化したもの)で電気を生み出します。発電器の中は、ちいさな発電板がたくさん集まっており、これらが直列につながって電気を発生させています。これは小学生のときに習った乾電池の直列つなぎと、原理は同じです(※3)。

ちなみに電気ウナギには、絶縁体の役割をする脂肪がたっぷりとあるため、800ボルトもの高電圧を出しても感電しません。また、電気ウナギは暴れると発電しますので、もしアマゾンで遭遇したときは刺激しないよう気をつけてくださいね。

(※3)乾電池は直列につないだ方が、並列につなぐより明るくなる。ただし、直列つなぎの方が、並列つなぎより電池が早くなくなってしまう。

600ボルトの電圧を発生させる電気ウナギの場合

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