萌芽研究
シリコーンゴムの劣化診断技術の開発と汎用性拡大に関する研究
2025年6月掲載
研究者 | 宮崎大学 大学院農学工学総合研究科 May Thin Khaing (博士課程枠) |
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※上記肩書きは、採択時のものです
また本HPでの当該情報の公開についてご了承をいただいている題目のみ掲載しています
電力設備・機器の外被材として30年以上の使用が期待されるシリコーンゴムについて、経年劣化の評価手法の高度化と診断装置の実用化を目指しています。
学生も研究助成の対象に
Q.「パワーアカデミー研究助成」に応募したきっかけをお教え下さい。
博士課程1年次、指導教員(迫田達也教授)より、パワーアカデミーの研究助成金について紹介を受けました。その後、自分自身でパワーアカデミーのウェブサイトで当該助成金について調べました。これにより、「パワーアカデミーが産学協同の体制のもと、電気工学分野の多様な側面における発展を支援することを目的としている」ことを知りました。また、「パワーアカデミーが電力分野における若手研究者がその活動を通じて貢献できる場として機能しており、教員のみならず学生も研究助成の対象となる制度である」ことを理解しました。
以上のような背景から、パワーアカデミーの助成金に応募することは、研究者として成長するための第一歩であり、大変貴重な機会であると考えました。
屋外での経年劣化を診断
Q.研究内容をお教え下さい。
撥水性、耐汚損性、耐熱性に優れたシリコーンゴム(SiR)は電力設備・機器の外被材として30年以上の使用が期待されていますが、有機材料であるために紫外線等による経年劣化が懸念されています。
図1のように、SiRは一時的に表面撥水性が消失しても低分子成分の表面への分散により自動的に撥水性は回復します。しかし、屋外使用では、日々の表面汚損によりSiRの低分子成分と汚損物が混ざった表面汚損層が形成されていきます。
撥水性回復時間を指標としたSiR表面の劣化診断手法を確立し、現場で迅速かつ定量的な評価が可能な診断システムの実用化を目指しています。
図1 撥水性の回復過程の様子
図2 経年SiR上で発生させた表面放電(SD)
評価手法のさらなる高度化へ
Q.現在までの研究成果と今後の展開についてお教え下さい。
経年劣化SiR試料上で表面放電 (SD)を~25s間生成しました。その後、表面に水滴を滴下し、SiR表面の水滴接触角度を測定しました。図3のように, 経年劣化SiR試料のSD処理後の撥水性回復時間(水滴接触角度がSD生成前の値に戻るまでの時間)は未使用品より長く、経年品程長いことが分かりました。すなわち、SD処理によってSiRの撥水性を一時的に低下させ、その後の撥水性回復時間を評価することでSiR表面の経年劣化を評価できることを明らかにしました。
今後、撥水性回復時間を指標としたSiR表面の劣化評価手法の高度化(より短時間で劣化の程度を評価する)、及び同診断装置の実用化を目指します。
図3 経年劣化SiR試料のSD表面処理後の撥水性回復時間
学生の背中を押してほしい
Q.最後にひとことお願いします。
パワーアカデミーの研究助成を受けることができ、大変感謝しております。助成期間中は、国内外での学会発表、論文投稿など多くの貴重な経験を積むことができました。また、産学連携の仕組みにより、企業が求める研究内容やニーズを直接知る機会を得てとても有意義でした。これらの経験は、私が現在勤務する大学でも活かされています。
日本は先進国でありながら、博士課程への進学者が年々減少している現状があります。そのような中で、パワーアカデミーが今後も博士課程の学生に対して研究助成を継続して下さることを心より願っております。
後輩の皆さんには、ぜひ博士課程に進学し、パワーアカデミーの支援を受けながら、自分のやりたい研究に挑戦してほしいと思います。この助成は、将来のキャリア形成にも大きく役立つ貴重な機会となります!