高速スイッチングにおける問題を突き止めて、次世代半導体デバイスを確立する。/島根大学 梅上 大勝さん(博士課程枠)

2016年5月掲載

現代社会において、特に日本国においては、地震災害は避けられない問題であり、地震災害の減災技術や、迅速な復旧を行うことは重要な社会問題と位置づけられています。首都大学東京の香取勇太さんは、従来の“大地の揺れ”によって地震を検知する方法ではなく、別の視点で“地磁気信号”から地震を検知する試みを行いました。

※肩書きは採択時のものです。

電気工学は、情報通信システム学域にも重要な役割を果たしている

Q.「パワーアカデミー研究助成」に応募したきっかけをお教え下さい。

首都大学東京 香取 勇太さん(博士課程枠)

正直なところ、自分からパワーアカデミーの研究助成を見つけて応募させていただくことになったわけではなく、指導教員の勧めで応募させてもらいました。私の所属の名称(システムデザイン学部・システムデザイン研究科)では、一見電気工学に関連していないように思えるかもしれませんが、同大学の学部における授業では、電気電子系に始まり情報系までを網羅するような基礎的な科目を学ぶようなカリキュラムになっています。そのため、情報通信システム学域という専攻そのものに関しても電気工学に関係している分野だと考えています。

また、私自身の研究テーマは地震災害から電気インフラに関わる機器を保護することや迅速な復旧につながるものであるという側面において、基礎検討に当たる分野であるとも考え、応募させていただく決心をしました。

地磁気信号を自動的に検知できれば、地震の発生が事前に分かる

Q.研究内容をお教え下さい。

首都大学東京 香取 勇太さん(博士課程枠)

私たちの研究グループでは、地震断層運動に伴うように地震発生時刻から地震の揺れが観測点に到達するまでの間に、「地磁気信号が少しずつ一方向に向かって変化していく」という現象を捉えることに成功しています。地磁気信号の伝搬速度は光速と同等の速度で伝搬するのに対し、地震波の伝達速度は一般に10km/s以下の速度で伝搬しますので、地震波に比べて地磁気信号は一瞬で伝わります。よって、この現象を自動的に検知することができれば、より早い段階で地震の発生を知ることができる技術になるものと考えています。この技術によって、地震災害から電気インフラをはじめとする様々な機器の保護につながるものだと考えています。

超電導HTS-SQUID磁力計で、地震検知へ向けた信号処理が進化

Q.現在までの研究成果と今後の展開についてお教えください。

福島県のいわき市に設置されている、HTS-SQUID磁力計を含む観測システム (写真真中よりやや左下にある箱のようなもの)。

私たちの研究は、地磁気信号の連続観測そのものとそれに関する信号処理を行っています。現在も、東北大地震の誘発地震発生域である福島県のいわき市において、高感度な地磁気観測システムを連続稼働させています。2014年10月に高感度な超電導素子を用いたHTS-SQUID磁力計(※1)を設置し、以前から稼働しているHTS-SQUID磁力計との性能比較を行ったところ、高感度な超電導素子を用いたHTS-SQUID磁力計がより良い磁場方向分解能を有している結果を示しました。また、地磁気観測に関するディープラーニング技術(※2)の応用した地震検知へ向けた信号処理を検討しています。

(※1)HTSは、高温超電導体のこと。SQUID磁力計(Super Quantum Interference Device)とは、脳や心臓の磁気を高精度で計測する磁力計のこと。超電導体の量子化現象を利用している。
(※2)ディープラーニング。夢の技術として期待されている、機械学習の手法。

博士課程の学生を援助する制度を、ぜひ維持してほしい

Q.最後にひとことお願いします。

日本国内においては他国と比較すると、政府主導の博士課程の学生を援助する仕組みが不十分であると考えています。また、民間の、パワーアカデミー様のような博士課程を援助する制度のある団体は多いとは言えないと思います。日本の科学技術発展のためにも、今後もパワーアカデミー様には、博士課程の学生を援助する制度を維持していただけたらと考えています。

私自身は、電気工学に関する勉学に初めて携わったと感じたのは、高校生(工業系の高校だったので専門の授業が取り入れられていた)の頃の話で、少しだけ、早い段階から勉学に励んでいたと感じています。今の立場があるのも、少しでも早い段階から興味を持って行動に移せたことにあると思っていますので、みなさんもぜひ、少しでも興味があったら勉強してみるのもいいのではないかと思います。

首都大学東京 香取 勇太さん(博士課程枠)

2016年3月16日に開催された研究助成・成果報告会の様子。


電気工学の未来