系統運用の最適なコントロールのために
/名城大学 益田 泰輔 教授

2022年7月掲載

研究者名城大学 益田 泰輔 教授

※上記肩書きは、インタビュー時のものです
また本HPでの当該情報の公開についてご了承をいただいている題目のみ掲載しています。

複数の発電事業者による需給計画作成手法と、系統運用者による需給計画のセキュリティチェック手法および修正手法について研究されました。

実運用を目指した研究

Q.「パワーアカデミー研究助成」に応募したきっかけをお教え下さい。

2016年に応募資格を得て個人型萌芽研究に応募し、採択いただきました。今回は、以前から共同で応募しようと話し合っていた東京工業大学の河辺先生とチーム型萌芽的研究での応募となりました。
2016年採択時の成果報告会においては電力会社やメーカーの方々から多数のご質問や貴重なコメントをいただき、実運用を目指した研究であれば産業界から積極的なコメントや有意義なフィードバックが期待できると知りました。これもパワーアカデミー研究助成への応募につながりました。

現実の市場や運用を考慮

Q.研究内容をお教え下さい。

市場で電源が入札されることで需給計画が決定される現在、どうやって系統運用をコントロールしていくかが重要な課題となっています。これまでは一つの電力会社が発電機の起動停止の計画を立て、コスト面を含めて系統全体での最適化を検討した結果、ある送電線の熱容量制約に違反する場合は自動的に制約をかけることができました。ところが現在では発電事業者が系統制約を考慮して入札するわけではないため、各々の事業者が燃料費最小になるよう発電すると、制約違反が生じる可能性が高まります。セキュリティをチェックする系統運用者が、いつどのように電源の運用に制限をかけて制約違反が発生しないようにするかが課題となります。
具体的にどの発電機をとめるか、出力をどうするのか、などを指示するためには、市場と運用の両方を理解した上で最適化問題を解く必要があります。複雑な数理最適化問題をどう解くかではなく、現実の市場や運用を考慮した最適化問題としてどう取り扱うかに注目している点が本研究の特徴であり、一番面白い部分と考えています。
採択された研究では前日の計画で当日の運用を検討する「日間需給計画」を扱いましたが、今後は「長期電源開発計画」についても、教科書的な負荷を積み上げた持続曲線に従って最適なベストミックスを探るアプローチだけでなく、再エネの大量導入や発電事業者間競争も踏まえた市場の制約を考慮した検討が必要となってくると想定しています。

実際運用のあり方を検討

Q.現在までの研究成果と今後の展開についてお教え下さい。

現在までの研究成果として、市場制度を考慮した系統運用手法の一案を示させていただきました。現時点での実際運用においては、需給バランス以外の制約は問題となっていない状況ですが、今後、再エネ大量導入によりN-1電制の緩和がなされると需給バランス以外の制約違反が顕在化する可能性もあり、どの時点でどこに制限をかけるべきかという議論が活発になると予想しています。
各種制約違反を発生させないための制度設計が必要となる中、本研究の成果を踏まえて、系統運用者や制度設計者と協調して実際運用のあり方を検討していきたいと考えています。

勉強は必ず自分の力になる

Q.最後にひとことお願いします。

成果報告会で高い評価をいただいたことは自信となり、この調子で研究に邁進し、機会があれば特別推進研究にも応募してみたいと考えています。産業界とのコミュニケーションシートはとてもよい制度で、研究終了時のご回答は今後の研究を進めていく上で大変参考になりました。
電気工学を志す後輩たちには、とにかく目の前の勉強を頑張ってほしいと思います。電気工学に関連する学問は特に数学の微積分、複素関数、線形代数など難しいものが多いですが、勉強したことがソフト面でもハード面でも間違いなく役に立ちます。勉強は大変でも最終的に必ず活きてくることを信じて頑張ってほしいと思います。電力・エネルギーは今とても注目を集めており、社会に出てすぐにでも活躍できると思うので、ぜひ電力・エネルギーを専門分野として選んでいただきたいです。


電気工学の未来