萌芽研究
電気自動車の電源「蓄電池」の劣化防止と 新たなエネルギーシステムを開発する。
2015年5月掲載
電気自動車の普及の課題としてよく言われているのが、電源となる蓄電池に関する諸問題です。琉球大学の浦崎直光准教授は、蓄電池の課題のひとつ「長寿命化」を実現するために、電気二重層キャパシタとの併用をご提案いただきました。
※所属および肩書きはインタビュー時(2015年3月)のものです。
萌芽研究は研究の立ち上げに適切な助成制度
Q.「パワーアカデミー研究助成」に応募したきっかけをお教え下さい。
現在、パワーアカデミーの大学検討委員会下部に設置されている、パワーアカデミー若手教員/研究者支援活動(YPAN)の沖縄エリアの委員を務めていることから、本研究助成の制度を知りました。特に萌芽研究は、研究の立ち上げには適切な助成制度であると位置づけており、応募しました。余談になりますが、YPANの委員は就任したばかりですが、他大学の研究室視察などを今後、やっていきたいと考えております。
「蓄電池」と「電気二重層キャパシタ」の併用による、新EV電源
Q研究内容をお教え下さい。
電気自動車(EV)の主電源である蓄電池は、充放電の繰り返しにより性能が劣化することがよく知られています。蓄電池は比較的高価であり、今後のEVが普及していくためには蓄電池の長寿命は重要な課題です。本研究では、充放電による劣化のない電気二重層キャパシタを併用した電源システムを提案しています。
ただし、電気二重層キャパシタは蓄電池と比較して蓄えられるエネルギーが極端に少ないために、そのエネルギー管理が重要となります。そこで、加速時に消費されるエネルギーと減速時に回生されるエネルギーに基づいて、蓄電池の劣化防止と電気二重層キャパシタのエネルギー管理を同時に実現するための両者の充放電制御法を開発しています。
エネルギー劣化の原因となる“充放電”の制御を行う解析と実験
Q. 現在までの研究成果と今後の展開についてお教えください。
JC08モード(※1)における速度データに基づいて算出されるエネルギー収支を基に、電気二重層キャパシタのエネルギーを確保しつつ、蓄電池の劣化が抑制される充放電制御をシミュレーションによる数値解析ならびに小容量の電動機による模擬実験によって検証しました。
現在は、エネルギー収支が正確に予測できているという想定のもとで、充放電制御を行っています。従って、エネルギー収支を予測するための手法を検討しています。
(※1)JC08モードとは、国土交通省が認定した自動車の燃費算出で利用されている算出方法。
JC08モードの走行データ(所要電力)
小中学生をターゲットとしたイベントも助成してほしい
Q. 最後にひとことお願いします。
パワーアカデミーでの取り組みは、研究者に対する研究助成だけではなく、今後のエネルギー問題を見据えて、多くの方に電気工学をより身近なものとして理解していただくことだと認識しております。
子どもの理科離れが言われて久しくなっており、この対策が重要であると考えています。パワーアカデミーのサイトは非常に充実した内容となっておりますが、子供たちの前で実験をみせること、モノづくりを体験させることが必要と考えています。各大学においても小中高生をターゲットとしたイベント等が実施されていると思いますが、これらのイベントを助成する制度があれば、より充実した内容になるのではないかと期待しています。